フュージョン
1960年代末〜70年代に成立した、Jazzとロック・ファンク・電子楽器を融合させたスタイル。
どんな音か
ジャズの即興とロックの編成・電子楽器を融合したスタイルである。BPMは100〜200と幅広い。編成の核は、歪ませたエレキギター、奏法の多彩なエレキベース、電気ピアノ(フェンダー・ローズ)、シンセサイザー(Moog、Oberheim)。これにロック寄りの力強いドラムが加わる。ベースはスラップやフレットレス(指板の仕切りがなく、音程を滑らかにつなげるベース)を駆使する。即興ソロは長尺で、変拍子(4拍子・3拍子以外の、数えにくい拍子。7/8、5/4、11/8など)も多用される。1970年代のアナログ録音ならではの、丸く温かみのある音は、後の世代が「フュージョンらしい音」そのものと見なすようになった。
生まれた背景
起点となったのは、マイルス・デイビスの『In a Silent Way』(1969年)と『Bitches Brew』(1970年)である。この2枚を支えたメンバーが一斉に巣立ち、それぞれ看板バンドを率いた——ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターはウェザー・リポート、チック・コリアはリターン・トゥ・フォーエヴァー、ジョン・マクラフリンはマハヴィシュヌ・オーケストラ、トニー・ウィリアムスはライフタイム。いずれも1970年代前半に生まれた主要バンドだ。なかでもマハヴィシュヌ・オーケストラの高速ユニゾンは、当時のフュージョンの過激さを象徴する音だった。ハービー・ハンコックは《Head Hunters》(1973年)でファンクを前面に持ち込んだ。日本でもカシオペア(1976年結成)やT-SQUAREが、超絶技巧と、ポップスのように短く聴きやすい曲づくりを軸にした独自のフュージョンを育てた。1970年代を通じてフュージョンはジャズの最前線に立ち、やがて1980年代にはスムース・ジャズ系(リー・リトナー、デヴィッド・サンボーン)と、プログレ寄りの濃密な一派(アラン・ホールズワース、ブランドX)へと枝分かれしていく。
聴きどころ
音楽的特徴
楽器エレキギター、エレキピアノ、シンセ、ベース、ドラム、サックス
代表アーティスト
- George Benson
- Herbie Hancock
- Weather Report
- Mahavishnu Orchestra
- Return to Forever
代表曲
- Bitches Brew — Miles Davis (1970)
- Meeting of the Spirits — Mahavishnu Orchestra (1971)
- Spain — Return to Forever (1972)
- Chameleon — Herbie Hancock (1973)
- Birdland — Weather Report (1977)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
ウェザー・リポートのジャコ・パストリアスは、フェンダー・ジャズ・ベースのフレットを自ら抜いたフレットレス・モデルで、歌うようなベース音を生み出し、エレキベースを花形楽器に押し上げた人物である。双極性障害を抱え、晩年はほぼ路上生活を送り、1987年にフロリダのナイトクラブの外で暴行を受け、35歳で世を去った。彼が改造した愛器「Bass of Doom」は盗難ののち行方知れずとなったが、2006年にニューヨークの楽器店で再発見された。その後の法廷闘争を経て、2010年前後にメタリカのロバート・トルヒーヨが買い取り、ベースはいまも遺族のもとに置かれている。彼の演奏は今も基準であり続け、『Heavy Weather』の「Teen Town」や「Birdland」のベースラインは、いまだベーシストの試金石とされる。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 宗教・霊歌コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック
- エレクトロニックディスコ
- ロック・メタルカントリーロック
- 古典新ロマン主義
- ヒップホップ・R&Bヒップホップ
- ラテン・カリブサルサ
- ロック・メタルサイケデリックロック
- エレクトロニックプロセス音楽
