新ロマン主義
1970年代以降、19世紀ロマン派の語法を現代に蘇らせる米欧の作曲潮流。
どんな音か
新ロマン主義は、20世紀後半以降に、ロマン派的な旋律、濃い和声、感情表現を現代の語法で取り戻す流れ。無調や前衛のあとに、歌える線や劇的な身ぶりが再び使われる。ただし単なる19世紀の再現ではなく、現代の記憶を通したロマン性である。
生まれた背景
1970年代以降、戦後前衛の厳しさに対する反応として、アメリカ合衆国や欧州で調性感や感情表現へ戻る作曲家が現れた。George Rochbergは過去様式を引用し、John Coriglianoは映画的な色彩も含む大きな表現を用いた。
聴きどころ
旋律が戻ってきても、和声や構成に現代の影があるところを聴く。甘いだけでなく、過去を失った後にもう一度歌おうとする切実さがある。大きなクライマックスの作り方も聴きどころだ。
発展
ロックバーグ「弦楽四重奏曲第3番」(1972、ベートーヴェンの直接引用)、デル・トレディチ「Final Alice」(1976)、コリリアーノ「交響曲第1番」(1989、AIDS犠牲者へのレクイエム)が代表作。エレン・ターフ・ズウィリッチなど多くの作曲家が同様の方向を共有した。
出来事
- 1972: ロックバーグ「弦楽四重奏曲第3番」
- 1976: デル・トレディチ「Final Alice」
- 1989: コリリアーノ「交響曲第1番」
- 1995: コリリアーノ「ヴィオリン協奏曲(赤いヴァイオリン)」
派生・影響
現代米国管弦楽作品、映画音楽、現代の調性的協奏曲書法に直接影響している。
音楽的特徴
楽器管弦楽、室内楽、声楽
リズム調性、ロマン派的形式、引用
代表アーティスト
- ジョージ・ロックバーグ
- ジョン・コリリアーノ
- ジョン・アダムス
代表曲
- Final Alice (1976)
- Harmonium — ジョン・アダムス (1981)
- 交響曲第1番 — ジョン・コリリアーノ (1989)
弦楽四重奏曲第3番 — ジョージ・ロックバーグ (1972)
ヴァイオリン協奏曲「赤いヴァイオリン」 — ジョン・コリリアーノ (1997)
日本との関係
日本では現代音楽の中でも比較的聴きやすい領域として紹介されることがある。映画音楽的な耳や、後期ロマン派を好む聴衆にも接点がある。直接の大流行はないが、演奏会では受け入れられやすい。
初めて聴くなら
入口は「交響曲第1番 — ジョン・コリリアーノ (1989)」。弦楽四重奏で過去への回帰を聴くなら「弦楽四重奏曲第3番 — ジョージ・ロックバーグ (1972)」。合唱的な広がりは「Harmonium — ジョン・アダムス (1981)」がよい。
豆知識
新ロマン主義は懐古趣味だけではない。前衛を経験した後で、感情や旋律をもう一度使うことの意味を問い直す音楽でもある。Rochbergの弦楽四重奏のように、過去様式の引用が突然現れると、それは単なる回帰ではなく、失われた言語を意識的に取り戻す身ぶりとして響く。 調性感が戻っても、過去へ素朴に帰れるわけではないという痛みがあり、甘い旋律の背後に20世紀後半の距離感が残る。
