カントリーロック
1960年代末に成立した、CountryとRockを融合した音楽。
どんな音か
生まれた背景
当時、ロックとカントリーは客層も政治的立場も対立しており、両者をまたぐこと自体が挑発に近かった。その壁を破った最も象徴的な転換点が、1968年のバーズ『Sweetheart of the Rodeo』である。ロックバンドがスティールギターを携え、保守的なカントリーの本場ナッシュビル(およびロサンゼルス)で本格的に録音した一枚だ。先行する試みがなかったわけではない——同年にはグラム・パーソンズが在籍したインターナショナル・サブマリン・バンドの『Safe at Home』もある。ただ、商業的な果実を掴んだのは、むしろ後発のイーグルスたちだった。グラム・パーソンズはバーズを離れ、その直後(1968年末〜69年)にフライング・ブリトー・ブラザーズを結成する。彼はこの構想を「コズミック・アメリカ合衆国ン・ミュージック」と名付け、ジャンルの進むべき方向性を示した。数年後にはイーグルスが完璧なコーラスで全米のラジオを制し、ロサンゼルスのローレル・キャニオン一帯がシーンの中心になる。声そのものが武器のリンダ・ロンシュタット、シンガーソングライターのジャクソン・ブラウン、リトル・フィート——いずれもこの界隈から世に出ていった。
聴きどころ
聴きどころはヴォーカル・ハーモニーの密度だ。イーグルスの3声、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(CSN&Y)の3〜4声——それぞれの声がどう絡むかに耳を傾けると、同じ「3声」でもバンドごとに響きがまるで違うことに気づく。スティールギター(横置きで金属棒を弦に当てて滑らせる楽器)の「泣き」と、歪ませず硬質に弾かれる(クリーンでカチッとした)テレキャスターとの対比も見逃せない。歌詞には、ハイウェイ、渓谷(キャニオン)、そして西海岸特有の気だるさと内省的なまなざしがにじむ。
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Gram Parsons
- The Byrds
- Eagles
代表曲
- Mr. Tambourine Man — The Byrds (1965)
- Sin City — Gram Parsons (1969)
- Take It Easy — Eagles (1972)
- Tequila Sunrise — Eagles (1973)
- Hotel California — Eagles (1976)
日本との関係
1970年代末から1980年代初頭、はっぴいえんど解散後の細野晴臣・大瀧詠一・松任谷由実らが、ティン・パン・アレー周辺で米国西海岸サウンドを直接の参照点にした。山下達郎『FOR YOU』(1982)、大瀧詠一『A LONG VACATION』(1981)はカントリー・ロックの編成感覚と直結している。
初めて聴くなら
豆知識
グラム・パーソンズは1973年に26歳で薬物過剰摂取で死去した。生前、彼が愛したジョシュア・ツリーの砂漠で火葬してほしいと語っていた(この一帯は当時は国定記念物、現在は国立公園)。遺体はルイジアナへ移送されようとしていたが、友人のフィル・カウフマンはそれをロサンゼルス国際空港から盗み出した。そしてジョシュア・ツリーの砂漠で、自ら火葬を試みた。遺体には法的な財産価値がないため死体盗難は問えず、カウフマンは棺を損壊した罪で数百ドル程度の罰金を科されるにとどまった。この事件は2003年の映画『Grand Theft Parsons』になっている。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ヒップホップ・R&Bファンク
- ジャズフュージョン
- 宗教・霊歌コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック
- エレクトロニックディスコ
- 古典新ロマン主義
- ラテン・カリブサルサ
- ロック・メタルサイケデリックロック
- エレクトロニックプロセス音楽
