インダストリアル
1970年代後半UKで成立した、Throbbing Gristleを起点とする、ノイズ・テープコラージュ・反音楽性を志向する音楽運動。
どんな音か
工場機械音、ノイズ、フィードバック、金属を叩く音、不協和音をシンセサイザーと組み合わせて作る音楽。BPMは70〜140と幅広い。リズムは機械的、反復的で、4つ打ちと不規則な変拍子の両方がある。ボーカルは囁きから絶叫まで、歪み加工を経ることが多い。歌詞は管理社会、暴力、性、宗教批判、機械化、抑圧。録音は意図的に不快、騒音的に作られる。1990年代以降、エレクトロ・インダストリアル、インダストリアル・メタル、リズミック・ノイズなどに細分化。
生まれた背景
1976年、イギリスシェフィールド/マンチェスターのThrobbing Gristle、Cabaret Voltaire、SPK、Z'EVらが「インダストリアル・ミュージック」を名乗ったのが起点。Throbbing Gristleの自社レーベル「Industrial Records」が名前の由来。1980年代にアメリカ合衆国のSwans、Skinny Puppy、Front 242、Front Line Assembly、ドイツのEinstürzende Neubauten、KMFDM、Laibachが拡張。1990年代にNine Inch Nails、Marilyn Manson、Ministryがロックの主流チャートに到達。Trent Reznor(Nine Inch Nails)はその後、映画音楽でアカデミー賞を受賞するに至る。
聴きどころ
「音楽」と「ノイズ」の境界を意図的に揺るがす作曲思想。シンセサイザーの音色とサンプルされた工場音が同じレイヤーに置かれる感覚。リズムが機械的に正確であるほど、人間の不在感が強調される。ライブでは大型スクリーンと工業デザインの舞台装置と組み合わされることが多い。
発展
1980年代を通じてEBM、Industrial Rock、Power Electronics、Dark Ambientへ枝分かれ。現代Noise/Experimentalの基本的言語を整備した。
出来事
- 1976: Throbbing Gristle結成 / 1977: 『The Second Annual Report』 / 1980: Cabaret Voltaire『The Voice of America』
派生・影響
EBM、Industrial Rock、Industrial Metal、Power Electronics、Noise、Dark Ambient。
音楽的特徴
楽器テープループ、シンセ、ノイズ、自作楽器、声
リズムテンポ可変、機械的リズム、ノイズテクスチャ
代表アーティスト
- Cabaret Voltaire
- Throbbing Gristle
- Coil
代表曲
- Hamburger Lady — Throbbing Gristle (1978)
- Nag Nag Nag — Cabaret Voltaire (1979)
- Discipline — Throbbing Gristle (1981)
- Sensoria — Cabaret Voltaire (1984)
- Tainted Love — Coil (1985)
日本との関係
1980年代の非常階段、メルツバウ、Hijokaidan、Boredoms、Solmaniaが「ジャパノイズ」として世界のインダストリアル/ノイズ・シーンに大きな影響を与えた。Merzbow(メルツバウ/秋田昌美)は世界で最も多作な実験音楽家の一人で、Sonic Youth、Boris、Sun O)))らと共演がある。Boredomsの『Vision Creation Newsun』(1999)は世界の実験ロック・シーンで決定的な作品とされる。
初めて聴くなら
起点を1枚なら、Throbbing Gristle『20 Jazz Funk Greats』(1979)。1990年代を1曲なら、Nine Inch Nails『Closer』(1994)。日本のジャパノイズなら、Merzbow『Pulse Demon』(1996)、Boredoms『Vision Creation Newsun』(1999)。
豆知識
Throbbing GristleのGenesis P-Orridgeは、後にPsychic TVを結成し、より宗教・神秘主義的な方向へ進んだ。「Industrial」というジャンル名そのものが、彼らの「Industrial Records, for Industrial People」というキャッチコピーから生まれた、極めて稀なケース。
