エレクトロニック

新複雑性

New Complexity

イギリス / 西ヨーロッパ · 1975年〜

1970〜80年代英国で興った、極限まで精密化された記譜と演奏難度を持つ現代音楽の潮流。

どんな音か

新複雑性は、楽譜が黒く見えるほど細密なリズム、音程、奏法を要求する現代音楽。音は点滅し、線は絡まり、演奏者はほとんど限界に近い情報量を処理する。Brian Ferneyhoughの作品では、音楽が滑らかに流れるより、思考や身体が過負荷になる瞬間そのものが響きになる。

生まれた背景

1970〜80年代のイギリスを中心に、戦後前衛の後でさらに精密な記譜と複雑な構造を追求する作曲家が現れた。FerneyhoughやMichael Finnissyは、演奏者の解釈や身体的な抵抗まで含めて作品を考えた。単に難しくするのではなく、複雑な記譜が演奏行為の緊張を生む。

聴きどころ

最初から構造を理解しようとせず、音の密度と断片の飛び方を聴くとよい。短い音が極端な強弱で現れ、楽器の音域を激しく移動する。録音を聴くと、演奏者が楽譜と格闘している身体感が音ににじむ。

発展

ファーニホウ「Time and Motion Study II」(1976)、「Carceri d'Invenzione」サイクル(1981〜86)、フィニスィー「English Country-Tunes」(1977)、ディロン「La Coupure」が代表作。学術機関での若手作曲家養成が重要な伝播経路となった。

出来事

  • 1976: ファーニホウ「Time and Motion Study II」
  • 1977: フィニスィー「English Country-Tunes」
  • 1986: ファーニホウ「Carceri d'Invenzione」サイクル完成
  • 1988: ファーニホウ、フライブルク音楽大学着任

派生・影響

21世紀の現代音楽(リーザ・ストレツィンガー、シャーリー・チェン、リチャード・バレットの後期作品)、新複雑性の影響を受けたジャズ即興、コンピュータ・スコア書法に影響を残す。

音楽的特徴

楽器独奏、室内楽、声楽

リズムポリリズム、微分音、超絶技巧

代表アーティスト

  • ブライアン・ファーニホウイギリス · 1970年〜
  • マイケル・フィニスィーイギリス · 1970年〜

代表曲

日本との関係

日本では現代音楽の専門領域で演奏・研究される。一般的な人気は限られるが、作曲や演奏技術の限界に関心を持つ人には重要な潮流である。日本の現代音楽演奏家にも、この種の高難度作品に取り組む人はいる。

初めて聴くなら

入口は「Time and Motion Study II — ブライアン・ファーニホウ (1976)」。複雑な記譜と演奏身体の関係が見える。ピアノの密度を聴くなら「English カントリー-Tunes — マイケル・フィニスィー (1977)」。Ferneyhoughの凝縮感は「Lemma-Icon-Epigram」もよい。

豆知識

新複雑性の楽譜は、完全に正確に再現するためだけでなく、演奏者に極度の選択と緊張を生む装置でもある。失敗に近い揺れまで音楽の一部として聴こえる。 聴き手には難解でも、演奏者の身体がどこまで楽譜を実現できるかという緊張を聴くと、音の密度に意味が見えてくる。

影響・派生で結ばれたジャンル

新複雑性を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

新複雑性 の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

イギリス · 1975年前後 (±25年)

ジャンル一覧へ戻る