インダストリアル・メタル
1990年代に Industrial Rock と Heavy Metal が交差して成立したサブジャンル。
どんな音か
インダストリアル・メタルの音は「機械が壊れかかっている」ような質感を持つ。歪んだヘビーなギターリフ(ヘヴィメタル由来)と、打ち込みかつ機械的に正確なドラム(インダストリアル由来)が組み合わさり、人間の演奏の「ゆらぎ」を排除したロックが出来上がる。ボーカルはシャウトか低く押しつぶすような声が多く、ピッチを補正した加工声も使う。Rammsteinの「Du Hast」(1997)はギターのリフが全体を引っ張り、ドイツ語の硬い子音が言葉の打撃感を増幅させる。Godfleshの「Streetcleaner」(1989年アルバム収録)はドラムマシンと歪みギターだけで構成された原型的な音で、音楽の上部構造を削ぎ落とした重さがある。
生まれた背景
インダストリアル・メタルが形成されたのは1989〜93年頃で、Throbbing GristleやEinstürzende Neubautenから続くインダストリアルの実験的伝統と、メタルの重音化が交差した。イギリスのGodfleshがドラムマシン+ダウンチューニングギターの組み合わせを先駆的に実装し、アメリカ合衆国のMinistryがスラッシュメタル的な攻撃性とサンプリングを組み合わせた。1990年代中盤にRammsteinが商業的成功を収め、ジャンルが「認知可能なカテゴリ」として定着した。Nine Inch NailsはインダストリアルとポップスやRockを接続させた点でMinistryやGodfleshと異なる立ち位置にいる。
聴きどころ
Rammsteinの「Du Hast」(1997)は入門として構造がシンプルで追いやすい。イントロのギターリフと、電子ドラムの「人間っぽくない」タイミングの正確さを聴き比べてみると、インダストリアル要素の正体が分かる。Godfleshの「Streetcleaner」(1989)はMinistryやRammsteinより暗く重く、「音楽的な展開」を最小限に削ったドローン的な重さが特徴——2曲を聴き比べるとジャンル内の振れ幅が見えてくる。
発展
1990年代後半メインストリーム化、後にDjentやNu Metalとの境界を曖昧にした。
出来事
- 1989: Godflesh『Streetcleaner』 / 1995: Rammstein『Herzeleid』 / 1996: Marilyn Manson『Antichrist Superstar』
派生・影響
Industrial Rock、Nu Metal、Djent、Aggrotech。
音楽的特徴
楽器ヘヴィ・ギター、シンセ、ドラム、サンプラー
リズム中速、機械的リフ、シンセ・テクスチャ
代表アーティスト
- Ministry
- Godflesh
- Rammstein
代表曲
- Streetcleaner — Godflesh (1989)
- N.W.O. — Ministry (1992)
- Du Hast — Rammstein (1997)
- Engel — Rammstein (1997)
- Sonne — Rammstein (2001)
Burn With Me — Ministry (1996)
日本との関係
日本ではDir en greyやMUCCのような「ビジュアル系」の一部がインダストリアル・メタルの影響を受けており、特に2000年代のDir en greyはRammstein的な攻撃的ギターと電子処理を組み合わせた方向性を選んだ時期がある。Rammsteinは日本でも固定ファン層を持ち、コンサートも開催されてきた。
初めて聴くなら
Rammsteinの「Du Hast」(1997)か「Sonne」(2001)が入口として最も入りやすい。ドイツ語の意味が分からなくても声の質感とリフの繰り返しで十分に体感できる。Ministryの「N.W.O.」(1992)はより荒削りで実験的な初期インダストリアル・メタルの空気を持っている。
