フューチャー・ファンク
Vaporwaveから派生した、80年代日本のCity PopやDiscoをチョップ&サンプルして踊れるテンポに整えたサブジャンル。
どんな音か
1980年代の日本のシティポップ(竹内まりや、山下達郎、菊池桃子ら)の数小節を切り取り、高速化して電子的に再構築したジャンルだ。テンポは1分間に115〜125拍ほど。シンセサイザーの低音や和音、電子ピアノ(フェンダー・ローズ)に、四つ打ち(1拍ごとにバスドラムが鳴るディスコ・ハウス風のリズム)を重ねる。土台には、よく動くスラップベース(親指などで弦をはじく奏法)を持つ曲が選ばれやすい。歌は新たに録音しない。シティポップの歌声を切り取り、音程を上げたり残響(エコー)をかけたりして主役に据える。さらに、バスドラムが鳴るたびにサンプルの音量が一瞬へこんで戻る「サイドチェイン」という処理を加える。この一手間で、音がビートに合わせて呼吸するように聞こえ、懐かしいはずの歌声が急にいまの音になり、思わず体が動く。1曲は3〜5分が目安だ。
生まれた背景
2013年頃、ヴェイパーウェイヴの派生として、アメリカ合衆国・カナダ・ヨーロッパの作り手が音楽投稿サイトのサウンドクラウド(SoundCloud)上でほぼ同じ時期にそれぞれ作り始めた。代表的な火付け役の一つが、セイント・ペプシ(Saint Pepsi、のちにSkylar Spenceと改名)のアルバム『Hit Vibes』(2013)。同じ年にはマクロス82-99(Macross 82-99)の『Sailorwave』なども現れ、ヤング・ベイ(Yung Bae)や、のちに日本でも知られるナイト・テンポ(Night Tempo)らが、各自で同じ音にたどり着いた。決定打となったのが、竹内まりやが1984年のアルバム『VARIETY』に収めた『プラスティック・ラブ』だ。この曲が2017〜18年にユーチューブで世界的に大きく聴かれ、日本のシティポップそのものが再発見されると、フューチャー・ファンクもその追い風を受けて一気に広まった。
聴きどころ
発展
Yung Bae、Night Tempo、Macross 82-99らが2014年以降中心となり、AnimeフッテージMVの標準化が進んだ。2017年以降のCity Popリバイバル(『真夜中のドア』バイラル等)と相互強化し、日本のアーティスト本人とのコラボも増加した。
出来事
- 2013: Saint Pepsi『Hit Vibes』 / 2015: Macross 82-99『Sailorwave』 / 2018: Night Tempoが竹内まりや「Plastic Love」公式リミックス / 2020: 『真夜中のドア / Stay With Me』バイラル化
派生・影響
Vaportrap、Disco House、Nu-disco、City Pop再評価ムーブメントと連動。
音楽的特徴
楽器サンプラー、DAW、フィルター、シティポップ素材
リズム110-130 BPM、4つ打ち、フィルターハウスのループ
代表アーティスト
- Saint Pepsi
- Macross 82-99
- Night Tempo
- Yung Bae
代表曲
Hit Vibes — Saint Pepsi (2013)
Bae 5 — Yung Bae (2018)
Plastic Love (Night Tempo Showa Idol Mix) — Night Tempo (2018)
Skylar Spence — Saint Pepsi (2013)
Sailorwave — Macross 82-99 (2015)
日本との関係
フューチャー・ファンクそのものが日本のシティポップを直接の素材としているため、日本との関係は最も密接。Night Tempo(韓国・東京拠点)は2010年代後半から東京で活動、シティポップの再発見と二次創作を架橋している。日本のシティポップ・アーティストの再発見・再評価がフューチャー・ファンク経由で進んでいる。
初めて聴くなら
まず1曲なら、セイント・ペプシのアルバム『Hit Vibes』(2013)収録の『Skylar Spence』。元ネタの艶と、バスドラムに合わせて呼吸するサイドチェインが一番わかりやすい(元ネタは山下達郎「Love Talkin'」)。なお、この曲名はのちに本人のアーティスト名になった。次はマクロス82-99『Sailorwave』(2013)やヤング・ベイ『Bae City Rollaz』、ナイト・テンポ『Showa Idol's Groove』(2019)あたりも入りやすい。
豆知識
「フューチャー・ファンク」という名前は、2013〜14年にサウンドクラウド上で複数のプロデューサーがほぼ同時に名乗り始めた呼称だ。誰かが一人で名づけたわけではなく、同じ音にたどり着いた作り手たちが申し合わせたように使い出したのである。その背景には、ヴェイパーウェイヴが「過去への憂愁」を扱うのに対し、もっと明るく踊れる方向へ進化させたいという感覚があった。
