宗教・霊歌

ブラック・ゴスペル

Black Gospel

シカゴ・デトロイト / アメリカ合衆国 / 北米 · 1930年〜

別名: African American Gospel / Traditional Gospel

20世紀前半にトーマス・A・ドーシーらが創始した、アフリカ系アメリカ教会の現代的礼拝音楽。

どんな音か

ブラック・ゴスペルは、アフリカ系アメリカ合衆国人教会の礼拝から生まれた、声の力が中心の音楽。ピアノやオルガンが和音を厚く支え、手拍子とタンバリンが拍を立て、ソリストの呼びかけに合唱が応える。声はきれいに整えるだけでなく、叫び、しゃくり、泣き声に近い揺れを含む。喜びと苦しみが同じフレーズの中で立ち上がる。

生まれた背景

20世紀前半のアメリカ合衆国で、ブルースジャズの語法を教会音楽へ持ち込んだThomas A. Dorseyらによって現代的な形が整った。奴隷制以後の黒人教会、都市移住、ラジオ、レコード産業が背景にあり、礼拝の場から大衆音楽へも影響が広がった。Mahalia JacksonやClara Wardの歌唱は、R&Bやソウルの歌い方にも深くつながっている。

聴きどころ

ソリストと合唱の応答を聴くと、曲の熱がどこで上がるか分かる。短い言葉を何度も繰り返し、声の強さ、ハーモニー、手拍子で少しずつ温度を上げる。ピアノの装飾、オルガンの持続音、最後のサビで合唱が厚くなる瞬間にも注目したい。

発展

1940-60年代に黄金期を迎え、サム・クックらゴスペル出身者がソウル音楽の主流化を担った。1969年エドウィン・ホーキンス『Oh Happy Day』のクロスオーバー・ヒット以降、現代福音音楽(Contemporary Gospel)が分岐し、カーク・フランクリン世代が90年代以降の主流となった。

出来事

  • 1932: トーマス・A・ドーシー『Take My Hand, Precious Lord』作曲
  • 1947: マハリア・ジャクソン『Move On Up a Little Higher』ミリオンセラー
  • 1969: エドウィン・ホーキンス『Oh Happy Day』全米2位
  • 1995: カーク・フランクリン『Stomp』、ゴスペルのヒップホップ化

派生・影響

Soul、R&B、現代CCM、Hip Hop Gospel、Praise & Worshipのほぼすべての出発点。

音楽的特徴

楽器声、聖歌隊、ピアノ、ハモンドオルガン、ベース、ドラム

リズムブルーノート、シンコペーション、コール&レスポンス、ヴァンプ反復

代表アーティスト

  • Thomas A. Dorseyアメリカ合衆国 · 1920年〜1993
  • Clara Wardアメリカ合衆国 · 1940年〜1973
  • Edwin Hawkinsアメリカ合衆国 · 1968年〜2018

代表曲

日本との関係

日本では教会、ゴスペル・クワイア、ワークショップ、映画やミュージカルを通じて広く知られている。クリスマス期のイベントや市民合唱として歌われることも多いが、本来はアフリカ系アメリカ合衆国人の信仰と歴史に根ざす音楽である。日本のR&B歌手にも、ゴスペル的な声の張り方を学ぶ人は多い。

初めて聴くなら

祈りの深さを知るなら「Take My Hand, Precious Lord — Thomas A. Dorsey (1937)」。合唱の祝祭感なら「Oh Happy Day — Edwin Hawkins (1969)」。声の説得力を味わうなら「How I Got Over — Clara Ward (1951)」やMahalia Jacksonの歌唱に触れたい。

豆知識

Thomas A. Dorseyは、ブルースの経験を持つ作曲家だったため、初期には教会で世俗的すぎると見られることもあった。いまではその混ざり合いこそがブラック・ゴスペルの核として聴かれている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ブラック・ゴスペルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1930年前後 (±25年)

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