映画音楽(オーケストラ)
映画作品に書き下ろされる、ハリウッド古典期以降の管弦楽中心の劇伴音楽。
どんな音か
オーケストラによる映画音楽は、映像の感情、場所、時間を数秒で立ち上げるための音楽。弦は不安や高揚を長い線で描き、金管は英雄性や危機を強く照らし、打楽器は場面転換の速度を決める。John Williamsの主題は旋律が記憶に残り、Hans Zimmerは持続する低音と音響の圧で画面を押し広げる。Mica LeviやJonny Greenwoodのように、オーケストラを不穏な質感として使う作家もいる。
生まれた背景
1930年代のハリウッドで、後期ロマン派の管弦楽法を映画に応用する形が定着した。無声映画の伴奏からトーキーへ移るなかで、音楽は場面をつなぎ、登場人物の感情を先回りして伝える役目を持った。戦後はジャズ、電子音、ミニマル音楽も入り、映画音楽はひとつの様式ではなく、映像制作と録音技術に合わせて変化する実用的な作曲領域になった。
聴きどころ
映像を離れて聴くときは、主題がどの楽器で出るかに注目するとよい。金管で鳴ると象徴的に、弦で鳴ると内面の声に、ピアノや電子音で鳴ると孤独に聴こえることが多い。場面の下で同じ和音が長く続く部分では、音楽が目立たないまま緊張を支えている。
発展
1970年代以降John Williams『スター・ウォーズ』(1977)等で巨大化。2000年代以降はHans Zimmer/Remote Control Productionsの「Hybrid Score」(オケ+電子音)が主流化した。
出来事
- 1933: 『キング・コング』 / 1977: 『Star Wars』 / 2010: Hans Zimmer『Inception』
派生・影響
Hybrid Score、Trailer Music、Dark Ambient Cinema。
音楽的特徴
楽器オーケストラ、合唱、シンセ、エレクトロニクス
リズムテンポ可変、シネマティック構造、ライトモティーフ
代表アーティスト
- 伊福部昭
- Ennio Morricone
- John Williams
- 久石譲
- Hans Zimmer
- 川井憲次
- 菅野よう子
- Jonny Greenwood
- 澤野弘之
- Mica Levi
代表曲
- Star Wars Main Theme — John Williams (1977)
Ghost in the Shell — Making of Cyborg — 川井憲次 (1995)- There Will Be Blood (Score) — Jonny Greenwood (2007)
- Time — Hans Zimmer (2010)
千と千尋の神隠し メインテーマ — 久石譲 (2001)
Under the Skin (Score) — Mica Levi (2014)
日本との関係
初めて聴くなら
主題旋律の力を知るなら「Star Wars Main Theme — John Williams (1977)」。音響の圧と反復で泣かせるタイプなら「Time — Hans Zimmer (2010)」。日本の入口としては「千と千尋の神隠し メインテーマ — 久石譲 (2001)」と「Ghost in the Shell — Making of Cyborg — 川井憲次 (1995)」を比べると、同じ映像音楽でも発想の違いがはっきり出る。
豆知識
映画音楽の主題は、ライトモティーフと呼ばれる短い音型で人物や場所を示すことがある。これはワーグナーの楽劇に連なる発想だが、映画では数秒で観客の記憶を呼び戻すために使われる。良い映画音楽は、目立つ曲と目立たない曲の両方でできている。
