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ジャズ

ビバップ

Bebop

ニューヨーク / アメリカ合衆国 / 北米 · 1940年〜

1940年代にニューヨークで成立した、高速で複雑なコード進行を特徴とするジャズ。

どんな音か

1940年代後半に生まれた、ジャズの近代化を決定づけたスタイル。BPMは160〜300の超高速。サックス、トランペット、ピアノ、コントラバス、ドラムの小編成(クインテット)が基本だ。テーマ(曲のメロディ)を全員で一気に提示し、その後はメンバーが順番に長尺のソロを取る。和音が目まぐるしく移り変わり、即興演奏では、その一つひとつの和音を構成する音やそこに足される装飾的な音(テンション)を、速い8分音符の流れでなぞっていく。和音と和音の切れ目をなめらかにつなぐ半音の動きが、フレーズの軸になる。初期の録音は技術の限界で音がこもりがちだが、その粗さが、かえって当時のクラブの密度を生々しく伝えてくれる。

生まれた背景

きっかけは深夜のジャムセッションだった。スウィング全盛の定型に物足りなさを感じた若手たちが、客が帰った後のニューヨーク・ハーレムのクラブ「Minton's Playhouse」「Monroe's Uptown ハウス」に集まり、腕を競い合った。1940〜45年のことである。中心にいたのは、サックスのチャーリー・パーカーとトランペットのディジー・ガレスピー。即興演奏の新しい語法をつくりあげたのがパーカー、それを理論で支えたのがガレスピーだった。周りには、和音の使い方で異端だったセロニアス・モンク(ピアノ)、リズム革命を担ったケニー・クラーク(ドラム)ら個性派が集まり、ほぼ同時期にバド・パウエル(ピアノ)やマックス・ローチ(ドラム)も関わっていった。人種隔離の時代に生まれた音楽である。後年には「白人には容易に真似できない、より複雑な音楽をめざした」という趣旨の証言も伝えられるが、当事者の語りには食い違いも多く、どこまで意図的だったかは定かでない。録音の面では、1942〜44年の音楽家組合による録音禁止が初期の歩みの多くを記録から消した。1945年にパーカーとガレスピーがレコード会社のGuildに録音した「Salt Peanuts」「Hot ハウス」、同年パーカーがSavoyレコードに自身のリーダー作として録音した「Ko-Ko」が、広く聴かれた初期の代表的録音となった。やがて1947〜50年、パーカーは絶頂を迎える。クール・ジャズは1940年代末から並行して展開し、1955年のパーカー死去(享年34)の後はハードバップ(アート・ブレイキー、ホレス・シルヴァー)が広がり、1950年代末にはモード・ジャズ(『Kind of Blue』、1959)へとつながっていった。

聴きどころ

テーマがどれだけ短く密度が高いか。即興ソロが、次々と切り替わる和音を一つ一つ縫うように走っていく感覚。パーカーやガレスピーは単にスケール(音階)を駆け上がり駆け下りるのではなく、コードの構成音をなぞる点に注目したい。ドラムにも耳を傾けてほしい。ケニー・クラークやマックス・ローチ以降、拍を刻む役割はバスドラとスネアからシンバルへ移った。ベースは一拍ずつ規則正しく歩き(ウォーキング・ベース)、このベースとシンバルが拍を支える一方、バスドラとスネアは鋭いアクセントに回る(奏者はこの不意の一撃を「爆弾を落とす」と呼んだ)。この役割分担が、以降のモダンジャズのドラムの標準になった。

音楽的特徴

楽器サックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラム

リズム高速テンポ、複雑な和声、即興主体

リズムを聴く

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

ビバップ · 240 BPM

代表アーティスト

  • Dizzy Gillespieアメリカ合衆国 · 1935年〜1992
  • Charlie Parkerアメリカ合衆国 · 1937年〜1955
  • Thelonious Monkアメリカ合衆国 · 1940年〜1982

代表曲

日本との関係

1950〜60年代の日本ジャズは、ビバップの直接の影響下で発展した。穐吉敏子、宮沢昭、白木秀雄、原信夫、渡辺貞夫、菊地雅章らがニューヨークでビバップを学んで帰国。村上春樹のエッセイ『ポートレイト・イン・ジャズ』(1997)はビバップ世代のミュージシャンを丁寧に紹介している。

初めて聴くなら

まずこの一曲、Charlie Parker『Ko-Ko』(1945)。3分のなかにビバップの全要素が詰まっている。次の一歩は4枚から。アルバムでまとめて聴くなら、Charlie Parker『The Complete Savoy and Dial Master Takes』。同じ高速の即興がピアノでどう聞こえるかを知りたいなら、Bud Powell『The Amazing Bud Powell Vol. 1』(1949〜51)。トランペットが主役の演奏は、Dizzy Gillespie『Groovin' High』。そしてビバップの語法が次の世代へどう受け継がれたかは、Sonny Rollins『Saxophone Colossus』(1956)で聴ける。

豆知識

ビバップ」の名前は、ディジー・ガレスピーが新しいフレーズを口で歌う時に「bee-bop」「ree-bop」と擬音化したのが定着したものだ。チャーリー・パーカーは1955年、34歳で死去した。だが検死にあたった医師は、遺体の状態から年齢を50〜60歳ほどと見誤ったという。それほどまでに、酒と薬物で身体は消耗していた。直接の死因は肺炎と出血性の胃潰瘍で、進行した肝硬変と弱った心臓が背景にあったとされる。亡くなった場所は、パトロンだったパノニカ男爵夫人が滞在していたニューヨークのスタンホープ・ホテルの一室だった。彼の死後まもなく、マンハッタンの壁に「Bird Lives(バードは生きている)」というグラフィティが現れた——そんな伝説が語り継がれている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ビバップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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アメリカ合衆国 · 1940年前後 (±25年)