ロック・メタル

ブラックゲイズ

Blackgaze

フランス / 西ヨーロッパ · 2005年〜

Black Metal とShoegazeを融合した、2000年代後半に成立したサブジャンル。

どんな音か

怒りと透明感が同居した音。ブラックメタルの高速ドラム、歪んだギター、激怒ボーカルがあるのに、その上にシューゲイズ特有のキラキラしたエフェクト・ギター、遠くから聞こえるボーカル、浮遊感のある和声が被さっている。結果、1曲の中で「怒りと美しさ」が絶えず競い合っている。ドラムはブラストビートなのに、その上のギター音は夢を見ているような質感。声は激怒しているのに、エコーやディレイで遠ざけられている。この矛盾が、聴き手の心理に揺さぶりを与える。

生まれた背景

Alcestはフランスのプロジェクトで、当初はアトモスフェリック・ブラックメタルで知られていたが、2005年〜2007年にかけてシューゲイズの手法(多層的なギターエフェクト、浮遊感のある構成)をブラックメタルに組み合わせる実験を開始した。同じ頃、アメリカ合衆国のDeafiheaven(2010年代)が、同様の融合を試みた。この2者の存在によって、「ブラックメタルシューゲイズの融合」は単なる音楽的遊びではなく、新しい感情表現の形式として認識されるようになった。

聴きどころ

ドラムの高速性とギターの浮遊感のギャップ。ボーカルの激怒した音色と、その同じ音が遠くからエコーで戻ってくる効果。多層的に重なったギターの音色が、時間とともにどう溶け合うか。曲の構造が複雑に見えて、実はシンプルなギターフレーズが何度も繰り返されている構造を追うこと。各アルバムの中での「激怒と美しさの比率」の変化。

発展

Deafheaven『Sunbather』(2013)が批評的成功を収め、Black Metal界隈で論争を起こした。

出来事

  • 2007: Alcest『Souvenirs d'un autre monde』 / 2013: Deafheaven『Sunbather』

派生・影響

Black Metal、Shoegaze、Post-rock。

音楽的特徴

楽器歪みギター、ベース、ドラム、声、シンセ

リズム高速ブラストビート、ウォッシュサウンド、ダイナミクス

代表アーティスト

  • Alcestフランス · 2000年〜
  • Deafheavenアメリカ合衆国 · 2010年〜

代表曲

日本との関係

日本のビジュアル系バンドやメタルシーン一部が、ブラックゲイズの「光と暗の共存」という美学に影響を受けている。特に2010年代後半、アニメやゲームのOPテーマで「激怒ボーカルと浮遊的なシンセ」という組み合わせが増えたのは、ブラックゲイズ的な思考法の影響とも考えられる。しかしジャンルそのものの受容は限定的で、メタル好きとシューゲイズ好きの交点にいるニッチなリスナーに支持される程度。

初めて聴くなら

夜、自分の複雑な感情に向き合いたい時:Deafiheaven「Sunbather」(2013)を全体で聴く。アルバム全体で15分強で、徐々に光と暗が統合される構造を感じられる。曲単位で選ぶなら、同じDeafheaven「Dream ハウス」(2013)で、ブラックゲイズの核が凝縮。Alcestは2007年の「Souvenirs d'un autre monde」が原点で、ブラックメタルシューゲイズが最初にぶつかる瞬間を感じられる。

豆知識

Alcestのプロジェクト・リーダー、Stéphanneはフランス出身で、ブラックメタルの激しさとフランスシューゲイズ文化(My Bloody Valentine等の影響)を無意識に融合させた。Deafheaven(日本語名「聴覚喪失」)のメンバーは、バンド名の通り難聴者を含み、この物理的な聴覚経験が、音を「層状に重ねる」という作曲法に影響を与えたと述べている。ブラックゲイズは2010年代のポストロックシューゲイズ・リバイバルの流れと並行し、「90年代的な美学を現代的に再解釈する」というインターネット時代の音楽制作思想の一例となった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1980年代1990年代2000年代ブラックゲイズブラックゲイズシューゲイズシューゲイズブラックメタルブラックメタル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ブラックゲイズを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

フランス · 2005年前後 (±25年)

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