アトモスフェリック・ブラックメタル
Black Metal を瞑想的・空間的・ロマン主義的方向に拡張したサブジャンル。
どんな音か
黒いベースに光を見つけるような感覚です。高速で歪んだギターとドラムの怒りがあるのに、全体として静寂や遠さを感じさせる。シンセやトーンが背景に鳥の声や風のような自然音を混ぜ、1曲が15分以上続く中で徐々に風景が浮かんでくる。黒く強烈なボーカルは前に出ず、むしろ背景に溶け込む。録音のディテイルが意図的に低く抑えられ、雲や霧を通して聴いているような質感がある。
生まれた背景
聴きどころ
高速ドラムの一見バラバラな動きがどう統合されるか。シンセやノイズが時間とともにどう積み重なるか。ボーカルが前に出ず背景に浮かぶ瞬間を探ること。1曲10分の中で、風景が何度も切り替わる細かいテンポ変化や音色変化を追うこと。ギターの同じフレーズが何度も繰り返されながら、その都度周囲の音層が変わっていく効果。
発展
2000年代米国「Cascadian Black Metal」(Wolves in the Throne Room)、ウクライナ Drudkh などが地域的シーンを形成。Blackgaze、DSBMへ波及した。
出来事
- 1996: Burzum『Filosofem』 / 2007: Wolves in the Throne Room『Two Hunters』
派生・影響
Blackgaze、DSBM、Post-Metal、Folk Metal。
音楽的特徴
楽器歪みギター、ベース、ドラム、シャウト、シンセ、フィールドレコーディング
リズム高速ブラストビート、長尺、トレモロギター
代表アーティスト
- Xasthur
- Alcest
- Wolves in the Throne Room
代表曲
- Dunkelheit — Burzum (1996)
- Cleansing — Wolves in the Throne Room (2007)
- I Will Lay Down My Bones Among the Rocks and Roots — Wolves in the Throne Room (2007)
- Percées de Lumière — Alcest (2010)
Sun in Her Tomb — Wolves in the Throne Room (2009)
Dans Les Champs — Alcest (2014)
Subseasonal — Xasthur (2003)
日本との関係
初めて聴くなら
夜間のドライブや瞑想的な聴き方をするなら、Wolves in the Throne Roomの「I Will Lay Down My Bones Among the Rocks and Roots」。約16分で、ゆっくり風景が変わってゆく構造が分かりやすい。短めから入るなら、Alcestの「Percées de Lumière」(2010)で、ブラックメタルとシンセ空間のバランスが素直。Burzumの「Dunkelheit」(1996)は原点で、当時これがどう聞こえたかを知るには重要。
豆知識
フランスとアメリカ合衆国のアーティストがノルウェーのジャンルを再発明した点が特異。Alcestはビジュアル系アーティストたちにも影響を与え、日本の一部バンドがこのサウンドを参照している。アトモスフェリック・ブラックメタルのアルバムはレコーディング時に30〜40分の長尺曲を2〜3分ずつに分割して製作されることが多く、1曲完成後に他の曲を作り、最後に全体として「1つの風景」になるよう編集し直される。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルシンフォニック・ブラックメタル
- エレクトロニックトロピカル・ハウス
