エレクトロニック

テープ音楽

Tape Music

西ヨーロッパ · 1948〜1985年

磁気テープを記録/編集媒体とする20世紀中盤の電子音響音楽の総称。

どんな音か

テープ音楽は、磁気テープに録音した音を切る、貼る、逆回転する、速度を変えることで作る電子音響音楽。楽器の演奏だけでなく、ドアのきしみ、水音、機械音、電子音が素材になる。編集の継ぎ目、速度を落とした低い響き、逆再生の吸い込まれる音が、楽譜では書きにくい時間感覚を生む。

生まれた背景

1948年前後のフランスのミュジック・コンクレート、ドイツ電子音楽スタジオ、アメリカ合衆国日本の放送局スタジオで発展した。録音された音を素材として扱う発想は、作曲家にとって大きな転換だった。テープ編集は手作業で、はさみと接着テープを使って時間を物理的に組み替えた。

聴きどころ

音源が何かを当てるより、変形の仕方を聴く。水音がリズムになったり、短い音が反復で機械のように聴こえたり、速度変更で音色そのものが変わる。現在のDAW編集に慣れた耳で聴くと、手作業の荒さや偶然の継ぎ目も魅力になる。

発展

シェフェール、シュトックハウゼン以外にも、米国のヴァレーズ「電子の詩」(1958、ル・コルビュジエのフィリップ館用)、ベル研究所のマシュー・サブトニック、ミルトン・バビット、ウラジーミル・ウサチェフスキー、オットー・リューニングらが代表作を残した。日本では武満徹「水の曲」(1960)も重要。

出来事

  • 1948: マグネトフォンによるテープ作曲が始まる
  • 1958: ヴァレーズ「電子の詩」、ブリュッセル万博
  • 1960: 武満徹「水の曲」
  • 1970年代: デジタル化により役割が変化

派生・影響

ライヴ・エレクトロニクス、デジタル音響合成、サンプリング音楽、現代の電子音響音楽全般の基礎技術となった。

音楽的特徴

楽器磁気テープ、テープ・レコーダー

リズムテープ編集、速度変化、ループ

代表アーティスト

  • エドガー・ヴァレーズフランス/米国 · 1920年〜1965
  • ピエール・シェフェールフランス · 1948年〜1995
  • ピエール・アンリフランス · 1950年〜2017
  • ヤニス・クセナキスギリシャ/フランス · 1950年〜2001
  • 武満徹(現代音楽)日本 · 1950年〜1996

代表曲

日本との関係

日本では武満徹の「水の曲」など、放送局や現代音楽の文脈で早くから試みられた。NHK電子音楽スタジオの活動も重要で、映画、ラジオドラマ、実験音楽の境目で新しい音が探られた。後の電子音楽やサウンドデザインの基礎にもつながっている。

初めて聴くなら

巨大な電子音響の入口は「電子の詩 (Poème électronique) — エドガー・ヴァレーズ (1958)」。日本の初期例として「水の曲 — 武満徹(現代音楽) (1960)」。素材の変形を聴くなら「Variations for a Door and a Sigh — ピエール・アンリ (1963)」が面白い。

豆知識

テープ音楽の編集では、音を時間の長さを持つ物体として扱う。画面上で波形を切る現在の感覚の前に、作曲家は実際にテープを切り、貼り合わせ、巻き戻しながら音を作っていた。逆回転や速度変更は今ならクリックでできる処理だが、当時は物理的な操作の跡がそのまま作品の手触りになった。

影響・派生で結ばれたジャンル

テープ音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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