テープ音楽
磁気テープを記録/編集媒体とする20世紀中盤の電子音響音楽の総称。
どんな音か
テープ音楽は、磁気テープに録音した音を切る、貼る、逆回転する、速度を変えることで作る電子音響音楽。楽器の演奏だけでなく、ドアのきしみ、水音、機械音、電子音が素材になる。編集の継ぎ目、速度を落とした低い響き、逆再生の吸い込まれる音が、楽譜では書きにくい時間感覚を生む。
生まれた背景
聴きどころ
音源が何かを当てるより、変形の仕方を聴く。水音がリズムになったり、短い音が反復で機械のように聴こえたり、速度変更で音色そのものが変わる。現在のDAW編集に慣れた耳で聴くと、手作業の荒さや偶然の継ぎ目も魅力になる。
発展
シェフェール、シュトックハウゼン以外にも、米国のヴァレーズ「電子の詩」(1958、ル・コルビュジエのフィリップ館用)、ベル研究所のマシュー・サブトニック、ミルトン・バビット、ウラジーミル・ウサチェフスキー、オットー・リューニングらが代表作を残した。日本では武満徹「水の曲」(1960)も重要。
出来事
- 1948: マグネトフォンによるテープ作曲が始まる
- 1958: ヴァレーズ「電子の詩」、ブリュッセル万博
- 1960: 武満徹「水の曲」
- 1970年代: デジタル化により役割が変化
派生・影響
ライヴ・エレクトロニクス、デジタル音響合成、サンプリング音楽、現代の電子音響音楽全般の基礎技術となった。
音楽的特徴
楽器磁気テープ、テープ・レコーダー
リズムテープ編集、速度変化、ループ
代表アーティスト
- エドガー・ヴァレーズ
- ピエール・シェフェール
- ピエール・アンリ
- ヤニス・クセナキス
- 武満徹(現代音楽)
代表曲
- Diamorphoses — ヤニス・クセナキス (1957)
- Concret PH — ヤニス・クセナキス (1958)
- 電子の詩 (Poème électronique) — エドガー・ヴァレーズ (1958)
- 水の曲 — 武満徹(現代音楽) (1960)
Variations for a Door and a Sigh — ピエール・アンリ (1963)
日本との関係
初めて聴くなら
巨大な電子音響の入口は「電子の詩 (Poème électronique) — エドガー・ヴァレーズ (1958)」。日本の初期例として「水の曲 — 武満徹(現代音楽) (1960)」。素材の変形を聴くなら「Variations for a Door and a Sigh — ピエール・アンリ (1963)」が面白い。
豆知識
テープ音楽の編集では、音を時間の長さを持つ物体として扱う。画面上で波形を切る現在の感覚の前に、作曲家は実際にテープを切り、貼り合わせ、巻き戻しながら音を作っていた。逆回転や速度変更は今ならクリックでできる処理だが、当時は物理的な操作の跡がそのまま作品の手触りになった。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックトータル・セリアリズム
- エレクトロニックアレアトリック音楽
- エレクトロニック確率音楽
- 古典ライブラリ・ミュージック
- エレクトロニックフリー・インプロヴィゼーション
- エレクトロニックアクースマティック音楽
- ロック・メタルハードロック
- ロック・メタルクラウトロック
