エレクトロニック

ライヴ・エレクトロニクス

Live Electronics

西ヨーロッパ · 1960年〜

演奏会場でリアルタイムに電子的処理を行う音楽形式。

どんな音か

ライヴ・エレクトロニクスは、録音済みの電子音を流すだけでなく、演奏会場で音を拾い、その場で加工する音楽。楽器の音がマイクに入り、フィルター、リング変調、ディレイ、空間配置によって別の響きに変わる。Stockhausenの「ミクロフォニーI」では、タムタムを叩く音が拡大され、金属の内部を覗くような音響になる。

生まれた背景

1960年代以降の西ヨーロッパを中心に、電子音楽スタジオでの制作と演奏会の身体性を結び直す試みとして発展した。テープ音楽が固定された音を再生するのに対し、ライヴ・エレクトロニクスは演奏者、技術者、会場が一回ごとに音を作る。BoulezやNonoの作品では、空間に音を配置する発想も重要になった。

聴きどころ

元の楽器音と加工後の音がどこで分かれるかを聴く。ピアノや打楽器が鳴ったあと、電子処理された残響が別方向から返ってくることがある。音源が見えているのに、聴こえる場所がずれる体験が面白い。録音では分かりにくいので、可能ならライブ映像や実演で触れたい。

発展

シュトックハウゼン「マントラ」(1970、リング変調器付きピアノ二重奏)、L.ノーノ「プロメテオ」(1984)、ピエール・ブーレーズ「レポン」(1981、IRCAMの4Xシステム)など、楽器とエレクトロニクスの精密な対話を実現した。日本では一柳慧、柴田南雄、湯浅譲二らが発展に寄与した。

出来事

  • 1960: ジョン・ケージ「カートリッジ・ミュージック」
  • 1964: シュトックハウゼン「ミクロフォニーI」
  • 1977: パリ、IRCAM設立
  • 1984: L.ノーノ「プロメテオ」初演

派生・影響

現代のミックスト音楽、ラップトップ・ライヴ、即興電子音楽、サウンドアート全般の基礎を成した。

音楽的特徴

楽器生楽器、マイク、エフェクター、コンピュータ

リズムリアルタイム処理、楽器とエレクトロニクスの対話

代表アーティスト

  • ジョン・ケージアメリカ合衆国 · 1935年〜1992
  • ピエール・ブーレーズフランス · 1945年〜2016
  • カールハインツ・シュトックハウゼンドイツ · 1950年〜2007
  • ルイージ・ノーノイタリア · 1950年〜1990
  • アルヴィン・ルシエアメリカ合衆国 · 1965年〜2021

代表曲

日本との関係

日本では現代音楽の演奏会、大学の電子音楽研究、サウンドアートの場で扱われてきた。武満徹以降の電子音響作品や、ICCなどメディアアートの文脈とも接点がある。一般的なライブPAとは違い、電子処理そのものが作曲の一部になる点が特徴だ。

初めて聴くなら

音の拡大を体験するなら「ミクロフォニーI — カールハインツ・シュトックハウゼン (1964)」。ピアノと電子処理の関係を聴くなら「マントラ — カールハインツ・シュトックハウゼン (1970)」。空間的な作品に進むなら「レポン — ピエール・ブーレーズ (1981)」がよい。

豆知識

ライヴ・エレクトロニクスでは、ミキサーや音響技術者が演奏者に近い役割を持つことがある。誰が音を出しているのか、楽器なのか機械なのか、その境目を揺らすところに面白さがある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1940年代1950年代1960年代ライヴ・エレクトロニクスライヴ・エレクトロニクステープ音楽テープ音楽電子音楽電子音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ライヴ・エレクトロニクスを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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