アレアトリック音楽
作曲・演奏に偶然性の要素を導入する戦後の作曲技法の総称。
どんな音か
アレアトリック音楽は、偶然性を作曲や演奏に取り入れる音楽。音の順番を演奏者が選ぶ、図形譜を読み解く、一定の範囲だけを指定するなど方法は多い。John Cageの偶然性とは違う形で、BoulezやStockhausenは厳密な構造の中に選択肢を置いた。演奏のたびに結果が変わる緊張がある。
生まれた背景
1950年代以降の戦後ヨーロッパとアメリカ合衆国で、総音列主義の厳密さへの反応としても発展した。すべてを作曲家が決めるのではなく、演奏者、ページの配置、時間、偶然の操作に一部を委ねる。Lutosławskiのように、各奏者の自由な反復を重ねて大きな響きを作る作曲家もいる。
聴きどころ
同じ作品でも録音によって違う部分に注目したい。音がばらばらに聞こえる箇所では、演奏者が一定の枠内で自由に動いている可能性がある。偶然という言葉から無秩序を想像しがちだが、実際には自由にする範囲と固定する範囲の設計が聴きどころになる。
発展
ケージ「易の音楽」(1951、易経による)、シュトックハウゼン「ピアノ曲第11番」(1956、ページ順を演奏者選択)、ブーレーズ「ピアノ・ソナタ第3番」(1957、可動形式)、ルトスワフスキ「ヴェネツィアのゲーム」(1961、限定アレアトリ)が代表作。
出来事
- 1951: ケージ「易の音楽」
- 1956: シュトックハウゼン「ピアノ曲第11番」
- 1958: ケージ、ダルムシュタット講習会で講演
- 1961: ルトスワフスキ「ヴェネツィアのゲーム」
派生・影響
不確定性音楽、グラフィック・スコア、フルクサス、即興音楽、現代の図形楽譜・参加型音楽まで広く影響している。
音楽的特徴
楽器多様(楽器・声・電子音)
リズム偶然性、可動形式、限定アレアトリ
代表アーティスト
- ジョン・ケージ
- ピエール・ブーレーズ
- ヴィトルト・ルトスワフスキ
- カールハインツ・シュトックハウゼン
代表曲
- Klavierstück XI — カールハインツ・シュトックハウゼン (1956)
- Third Piano Sonata — ピエール・ブーレーズ (1957)
- ピアノ曲第11番 — カールハインツ・シュトックハウゼン (1956)
- ピアノ・ソナタ第3番 — ピエール・ブーレーズ (1957)
- ヴェネツィアのゲーム — ヴィトルト・ルトスワフスキ (1961)
日本との関係
日本では戦後現代音楽の受容の中で紹介され、武満徹や一柳慧などの作曲家が偶然性や図形譜と向き合った。演奏会では難解に見られがちだが、演奏者の判断が作品の一部になる点は、即興やサウンドアートとも接続しやすい。
初めて聴くなら
開かれた形式を知るなら「ピアノ曲第11番 — カールハインツ・シュトックハウゼン (1956)」。構造と選択の関係を聴くなら「ピアノ・ソナタ第3番 — ピエール・ブーレーズ (1957)」。管弦楽の偶然性なら「ヴェネツィアのゲーム — ヴィトルト・ルトスワフスキ (1961)」がよい。
豆知識
Aleatoricの語源はラテン語のalea、さいころに関係する。とはいえ、さいころ任せの適当な音楽という意味ではない。偶然をどの場所に置くかを設計する、かなり知的な作曲技法である。ケージの偶然性とブーレーズの管理された偶然性では思想が違い、同じ偶然という言葉でも聴こえる音楽は大きく変わる。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックミュジーク・コンクレート
- エレクトロニックテープ音楽
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- 古典ライブラリ・ミュージック
- エレクトロニックライヴ・エレクトロニクス
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- ロック・メタルハードロック
