ミュジーク・コンクレート
1948年パリでピエール・シェフェールが提唱した、録音された日常音や自然音を素材に作曲する音楽。
どんな音か
日常音(汽笛、ドアの音、靴のきしみ、水の音)を録音し、それを素材に『作曲』する音楽実践。録音機の伸び縮みにより音の速度が変わり、複数の音が重ねられ、『曲』が成立する。シンセサイザーや通常の楽器はない。『音の彫刻』という比喩が使われる。
生まれた背景
1948年パリ、ピエール・シェフェール が『Radio Français』で提唱。録音技術の発展と並行。レコーディング・スタジオを『楽器』として使用することの発明。戦後ヨーロッパのアヴァンガルド美術運動と同期。
聴きどころ
『曲』として何が起こっているのか理解に時間がかかる。その代わり、日常音への『聴き方』が変わる。同じ汽笛が、音響的に複雑な存在として立ち現れる。『作曲』が『選別と配列』に過ぎないことに気づく。
発展
シェフェール「鉄道のエチュード」(1948)が最初の作品、シェフェール+アンリ「一人の男のための交響曲」(1950)、アンリ「死への変奏」(1963)が代表作。1958年に「音楽研究グループ(GRM)」が設立され、ベルナール・パルメジアーニ、フランソワ・ベイル、ドゥニ・スモーリー(後にアクースマティック楽派)へ発展した。
出来事
- 1948: シェフェール「鉄道のエチュード」
- 1950: シェフェール+アンリ「一人の男のための交響曲」
- 1958: 音楽研究グループ(GRM)設立
- 1966: シェフェール「音楽体系論」出版
派生・影響
電子音楽、ミックスト音楽、エレクトロアコースティック、サンプリング音楽、ヒップホップ、IDMまでに至るあらゆる「録音素材を作曲する」音楽の出発点となった。
音楽的特徴
楽器テープ、スタジオ機材、日常音録音
リズムテープ操作、断片の構成、モンタージュ
代表アーティスト
- エドガー・ヴァレーズ
- ピエール・シェフェール
- ピエール・アンリ
- フランソワ・ベイル
代表曲
- Études aux Chemins de Fer — ピエール・シェフェール (1948)
- 一人の男のための交響曲 — ピエール・シェフェール (1950)
- 死への変奏 — ピエール・アンリ (1963)
- プレザンス — フランソワ・ベイル (1971)
鉄道のエチュード — ピエール・シェフェール (1948)
日本との関係
初めて聴くなら
ピエール・シェフェール『Études aux Chemins de Fer』(1948)で基本。最初は『何を聴いているのか』分からないことが正常。繰り返し聴くことで、構造が見えてくる。
豆知識
ミュジーク・コンクレート は『音波そのものへの哲学的アプローチ』。つまり、単なる音楽技術ではなく『音とは何か』への問いかけ。戦後ヨーロッパの知識人にとって、これは文学や絵画と同等の重要性を持っていた。
