アクースマティック音楽
視覚的演奏者を伴わず、スピーカーのみで聴かれることを前提に作られた電子音響音楽。
どんな音か
アクースマティック音楽は、演奏者を見せず、スピーカーから出る音だけを作品として聴く電子音響音楽。音源が何か分からないまま、音の形、距離、動きが空間に配置される。François Bayleの作品では、具体音と電子音が混ざり、見えない劇場のように展開する。
生まれた背景
1960年代のフランスで、ミュジック・コンクレートの流れから発展した。アクースマティックという言葉は、音源を隠して音だけに集中する聴き方に由来する。スタジオで作られた音を、コンサートでは多数のスピーカーへ投影することも多い。
聴きどころ
何の音かをすぐ決めず、近いか遠いか、硬いか柔らかいか、動いているか止まっているかを聴く。音が目の前から後ろへ回るように感じたり、巨大な物体が縮むように聞こえたりする空間感が中心になる。
発展
ベイル「ジータ」シリーズ、フランチェス・ドオン、ジョナサン・ハーヴェイら英米作曲家にも広がった。ドゥニ・スモーリー「Wind Chimes」(1987)「Vortex Temporum」など、自然音と電子音を統合した抒情的アクースマティック音楽が確立した。
出来事
- 1966: シェフェール「音楽体系論」、アクースマティック概念の理論化
- 1974: GRM、アクースモニウム開発
- 1987: ドゥニ・スモーリー「Wind Chimes」
- 1996: ベイル「ジータ」シリーズ完成
派生・影響
現代電子音響音楽、アンビエント、サウンドアート、立体音響映画音楽など、空間性を重視する音楽全般に影響を与えている。
音楽的特徴
楽器テープ、マルチチャンネル・スピーカー
リズム音響投影、立体的空間性
代表アーティスト
- ピエール・シェフェール
- フランソワ・ベイル
代表曲
- Symphonie pour un homme seul — ピエール・シェフェール (1950)
- Erosphère — フランソワ・ベイル (1979)
- Wind Chimes (1987)
- ジータ — フランソワ・ベイル (1996)
Mouvements — フランソワ・ベイル (1970)
日本との関係
日本では電子音響音楽、現代音楽、サウンドアートの文脈で紹介されている。一般的なコンサートより専門的だが、スピーカーだけで音の風景を作る発想は映画音響やゲーム音響にも通じる。
初めて聴くなら
歴史的な入口は「Symphonie pour un homme seul — ピエール・シェフェール (1950)」。ベイルの世界に入るなら「Erosphère — フランソワ・ベイル (1979)」や「ジータ — フランソワ・ベイル (1996)」がよい。
豆知識
Acousmaticは、音源を見ずに聴くという考え方から来ている。誰が演奏しているかを見る楽しみをいったん外し、音そのものの姿に集中する音楽である。コンサートではアクースモニウムと呼ばれる多数のスピーカー群を使い、作曲済みの音を演奏者が空間に投影することもある。 視覚情報がないぶん、聴き手は音の原因を想像し続けることになり、耳だけで抽象映画を見ているような体験になる。
