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ラテン・カリブ

レゲトン

Reggaeton

プエルトリコ / カリブ海 · 1995年〜

1990年代にプエルトリコで成立した、Dembowリズムとスペイン語のラップ・歌のラテン音楽。

どんな音か

楽曲全体を支配するのは、ジャマイカ生まれの打楽器パターン「デンボウ(dembow)」だ。キックが表拍を踏み、スネアが1拍目の直後と3拍目に入って、軽くつんのめるような「ボン・カ・ボン・カ」という独特のノリ(拍をわざと少しずらすシンコペーション)を作る。BPMは90〜100ほど。土台は重低音の808キック(ドラムマシン由来の電子的なバスドラム)とシンセベースで、その上に短いシンセのフレーズが乗り、男性のラップと歌唱に女性ボーカルが絡む。歌詞は大半がスペイン語で、恋愛やパーティー、街での暮らし、性的な描写など身近で直接的なテーマが多い。「dale」「papi」「oye」といった合いの手やコール&レスポンスも多い。音作りでは重低音と打楽器が前に出て、声を機械的に補正・加工するオートチューンがかかることも多い。

生まれた背景

ジャマイカ生まれのリズムに、パナマでスペイン語の歌が乗り、それがプエルトリコで「レゲトン」として完成した。出自が三つの国にまたがる音楽だ。まず1980年代、パナマでスペイン語のレゲエダンスホール(reggae en español)が発展し、ラテンアメリカ合衆国各地に広がった。1990年代前半にこれがプエルトリコのサン・フアンへ伝わり、路上の車庫パーティ(marquesina)やアンダーグラウンドのカセット・ミックステープを通じてシーンが育つ。そうした路上のDJたち——代表格はDJ Playero——がデンボウ中心の様式を1990年代半ば(1995〜96年ごろ)までに定着させ、「reggaeton」という呼び名はDJ Nelsonが生んだとされる。1990年代半ばの検閲圧力(1995年の摘発を含む)と2002年の上院公聴会を経て、シーンはアンダーグラウンドからレーベル契約・商業化へと移った。2000年代前半、Daddy Yankeeを筆頭とする一群がメインストリームへ躍り出て、2004年の『Gasolina』が世界進出の口火を切った。2010年代後半には、コロンビア勢(J Balvin、Maluma)とBad Bunnyらプエルトリコの第2波が担い手の国を広げ、ラテン・ポップを世界の主流へ押し上げた。Bad Bunnyの『Un Verano Sin Ti』(2022)は、全編スペイン語のアルバムとして米Billboard 200の年間1位に立ち、Grammy主要部門(年間最優秀アルバム)にも初めてノミネートされた。

聴きどころ

まずはデンボウの「ボン・カ・ボン・カ」というリズムを聴き取る。次にベースとキックの噛み合い方、コール&レスポンス、女性ボーカルとの掛け合いへ耳を移す。曲の冒頭に入るプロデューサーの声タグ(Tainyなど)が、レーベルの刻印のように機能するのも面白い。最近の曲ではトラップアフロビーツハウスとの混合も多く、純粋なデンボウではない曲もある。

音楽的特徴

リズムDembowリズム、4/4

リズムを聴く

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

デンボウ · 95 BPM

代表アーティスト

  • Daddy Yankeeプエルトリコ · 1991年〜
  • Ivy Queenプエルトリコ · 1995年〜
  • Luis Fonsiプエルトリコ · 1998年〜
  • Don Omarプエルトリコ · 2002年〜
  • J Balvinコロンビア · 2009年〜
  • Ozunaプエルトリコ · 2012年〜
  • Bad Bunnyプエルトリコ · 2013年〜
  • Karol Gコロンビア · 2013年〜
  • Anuel AAプエルトリコ · 2014年〜

代表曲

日本との関係

2000年代後半以降、Daddy Yankee、Don Omarの来日もあり、日本のラテン・クラブで定着。最近はBAD HOPやAwich、JP THE WAVYなど、日本人ラッパーがレゲトンのリズムを直接取り入れた曲をリリースしている。Latin Music Tokyo、サルサ Caribe(ライブハウス)など固定の場もある。

初めて聴くなら

入り口になる1曲を選ぶなら、Daddy Yankee『Gasolina』(2004)——レゲトンを世界に知らしめた一曲だ。最近のレゲトンを掴むなら、余分をそぎ落とした、乾いて簡素な現在の音を示すBad Bunny『Tití Me Preguntó』(2022)や、軽やかなポップ寄りのKarol G『Provenza』(2022)。踊りたいなら、多言語のサビ(フック)で世界中のクラブを席巻したJ Balvin『Mi Gente』(2017)。アルバムなら Bad Bunny『Un Verano Sin Ti』(2022)が現在のサウンドを一望できる。

豆知識

源をたどると、ジャマイカのプロデューサー Steely & Clevie が手がけた一本のリディム(ダンスホールで使い回される伴奏トラック)『Poco Man Jam』(1989〜90)に行き着く。これをシャバ・ランクスの『Dem Bow』(1990)がリズムとして世界に広め、その再演としてパナマのNando Boom『Ellos Benia』向けに作り直されたインストがプエルトリコへ渡り、現地のプロデューサーに繰り返しサンプルされてレゲトンの土台になった。たった一本の伴奏が一つのジャンルの心臓となり、30年にわたって世界のヒット曲を鳴らし続けている。

影響・派生で結ばれたジャンル

レゲトンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

レゲトン の系譜全体図(多段)を見る