ラテン・ウルバノ
2010年代後半にBad Bunny、J Balvin、Karol Gらの世代が確立した、レゲトン、ラテン・トラップ、デムボウを横断するスペイン語圏アーバン・ポップの総称。
どんな音か
ラテン・ウルバノは、ひとつのジャンルというより「チャート上の括り」に近い。レゲトン、ラテン・トラップ、ドミニカ共和国ン・デムボウから、R&Bやアフロビーツとの折衷までをひとまとめにした呼び名だ。曲の土台になるのが、ジャンルの名にもなったつんのめるようなリズム「デムボウ」と、ヒップホップでおなじみの重い電子的な低音(ローランドのリズムマシンTR-808によるズシッと響く重低音、通称808)。そこへ、シンセサイザーや、声を機械的に補正する「オートチューン」をかけた歌、トラップ特有の細かく刻むハイハット(連続して速く刻む音)を重ねていく。テンポ(1分間の拍数=BPM)は、ゆっくりめのレゲトン(85〜100BPM)から速めのデムボウ(115〜130BPM)まで幅がある。歌詞はスペイン語(時に英語混じり)で、テーマは恋愛とパーティー、ストリートの誇りと自己肯定。ジャンルの垣根を意図的にまたぐのが特徴で、TainyやSky Rompiendoといった一流プロデューサーは、1枚のアルバムの中でレゲトン、トラップ、R&Bを自在に行き来する。
生まれた背景
2010年代後半、レゲトンが世界へ広まる中で、トラップやR&B、EDMと混ざり合って生まれたカテゴリーだ。中心人物はプエルトリコ出身のBad Bunnyと、いずれもコロンビア出身のJ Balvin、Karol Gだ。J Balvinの「Ay Vamos」(2014)やNicky Jamの復活がレゲトンを世界的ポップへと押し上げ、Luis Fonsi feat. Daddy Yankeeの「Despacito」(2017)はYouTube再生回数の記録を塗り替えた。その立役者Daddy Yankeeはレゲトン草創期から現役で並ぶ。SoundCloud発の自作曲で頭角を現したBad Bunnyの台頭は、ラテン・トラップを一躍チャートの主役にした。甘いメロディのOzuna、硬派なトラップ寄りのAnuel AA、R&B感覚のRauw Alejandroら次世代が後に続く。Spotifyの編集プレイリスト「¡Viva Latino!」が、こうした音楽を世界へ届ける定番の窓口となった。Bad Bunnyの『El Último Tour del Mundo』(2020)は、全編スペイン語のアルバムとして史上初めてBillboard 200の首位に立った。続く『Un Verano Sin Ti』(2022)は同チャートの年間1位に輝いた——スペイン語アルバムとしては、これも集計開始以来初の快挙だ。英語が圧倒的に支配するアメリカ合衆国のメインチャートで非英語のアルバムが頂点に立つこと自体、ほとんど前例のない出来事だった。
聴きどころ
発展
現在ではグラミー独立部門が設けられ、ラテン・ポップの主流カテゴリとなった。
音楽的特徴
楽器シンセ、ドラムマシン、サンプラー
リズムデムボウ系/トラップ系、85-100BPM
代表アーティスト
- J Balvin
- Bad Bunny
- Karol G
代表曲
- Ay Vamos — J Balvin (2014)
- Mi Gente — J Balvin (2017)
- Tusa — Karol G (2019)
Yonaguni — Bad Bunny (2021)
Me Porto Bonito — Bad Bunny (2022)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
彼自身もSpotifyで世界で最も再生されたアーティストに2020〜2022年の3年連続で選ばれた——これは史上唯一の記録だ。『Un Verano Sin Ti』(2022)はSpotify史上最多ストリーミングのアルバムでもある。アメリカ合衆国のグラミー賞では、こうした音楽の隆盛を受けて2022年の式典から最優秀ムジカ・ウルバーナ・アルバム部門(música urbana=ウルバノを指すスペイン語)が新設された。だが、そのすべてが始まる前のBad Bunny(本名Benito Antonio Martínez Ocasio)は、故郷プエルトリコのスーパーで袋詰めの店員をしながら、SoundCloudに自作曲を上げる青年だった。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ラテン・カリブペレオ
