ラテン・カリブ

ネオペレオ

Neoperreo

チリ / 南アメリカ · 2017年〜

2017年前後にチリのTomasa del RealとMs Niinaらが提唱した、フェミニズム/クィア感覚を強調するDIYレゲトンのリバイバル。

どんな音か

基礎はレゲトン特有の「デムボウ」リズム——キックが1拍目と「3拍目のちょっと後(3アンド)」に来る跛行するパターン——で、その上に歪んだシンセ、安価な電子音、意図的に粗いミックスが重なる。商業レゲトンの磨かれた音とは対照的に、SoundCloudに直接アップされた「部屋録り」的な粒の粗さが多い。BPMは95〜115程度でレゲトンと変わらないが、歌い方はラップとメロディの中間で、強さより冷ややかな確信の声調が多い。Ms. Ninaの「Tu Sicaria」(2018)ではシンセの音が故意に「安っぽく」チューンされており、それが態度表明になっている。

生まれた背景

2017年前後のチリ・サンティアゴで、Tomasa del RealとMs. Ninaが独立したプロダクションで楽曲を発表し始めた。両者は商業レゲトンが男性視点の性描写を中心にしていることへの対抗として、女性・クィアの視点から同じデムボウリズムを使う音楽を作り「ネオペレオネオペレオ)」という呼び名を自分たちで打ち出した。スペインのBad Gyalがカタルーニャからこの動きに呼応し、ラテンヨーロッパと南米を横断するコミュニティが形成された。

聴きどころ

Tomasa del Realの「Tukky」(2017)では、デムボウのキックが一定のまま声のリズムがそれに乗るか外れるかをぎりぎりで揺れている——この緊張が商業レゲトンの「ノリやすさ」より先鋭的な感覚を生む。Bad Gyalの「Mercadona」(2017)ではスペイン語とカタルーニャ語が混在し、歌詞の速度がかなり速い——音の意味より声のテクスチャとして聴いてみると聴こえ方が変わる。

音楽的特徴

楽器シンセ、サンプラー、ドラムマシン

リズムデムボウ系、ローファイ感、ピッチ操作ボーカル

代表アーティスト

  • Ms Ninaアルゼンチン · 2014年〜
  • Tomasa del Realチリ · 2014年〜
  • Bad Gyalスペイン · 2016年〜

代表曲

日本との関係

日本ではレゲトン自体がここ数年で急速に浸透したが、ネオペレオという細分化されたシーンはまだ専門メディアとDJコミュニティの範囲に留まる。ラテン音楽専門のクラブイベント(東京・大阪)でかかることはあり、フェミニズムや反規範的な表現への関心と重なる文脈で紹介されることもある。

初めて聴くなら

Ms. Ninaの「Soy Una Lady」(2017)はネオペレオの態度と音の粗さが最もシンプルに出ている1曲で、3分以内に収まる。次にBad Gyalの「Mercadona」(2017)を聴くとスペイン語圏のクィアポップとの接点が見える。夜、ヘッドフォンより小型スピーカーで鳴らしたほうが「粗い録音の意図」が伝わる。

豆知識

「perreo」はスペイン語で「犬のように踊る」を意味し、密着したグラインドダンスを指す俗語だ。Tomasa del Realは「ネオ」をつけることで既存のペレオへの批判的な位置づけを明確にした——商業レゲトンの「観客としての女性」像を、プロデューサーとして解体するという姿勢がジャンル名そのものに込められている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1990年代2010年代ネオペレオネオペレオレゲトンレゲトン凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ネオペレオを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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