ヒップホップ・R&B

プラッグ

Plugg

アトランタ / アメリカ / 北米 · 2014年〜

2014年頃にアトランタのMexikodro、Stoopid Xool、Cassius Jayらが確立した、フューチャー・ベース寄りのきらびやかなシンセを使うトラップ系ビート。

どんな音か

トラップのハイハット(16分音符の細かい連打)とスローなキックの組み合わせは踏襲しつつ、上に乗るシンセが「硬い」電子音でなく柔らかく透明感のある音色になっている。音域は高め(ハイキー)で、アルペジオのシンセが7th・9thの柔らかい和声を刻む。リバーブは深めで音の輪郭が溶けており、「ふわふわした霞の中にいる」ような聴感だ。ラップはのんびりした声調で、内容より声のテクスチャを音楽の一部として扱うスタイルが多い。Playboi Cartiの「Magnolia」(2017)は、このビートスタイルが主流ヒップホップに届いた瞬間を象徴する曲だ。

生まれた背景

アトランタのプロデューサー、Mexikodro(メキシコドロ)とCassius Jayが2014〜15年頃にSoundCloudにビートを投稿し始めたことが起点だ。トラップのビートと当時台頭していたフューチャー・ベース(Flume、Porter Robinsonら)のきらびやかなシンセサウンドを意図的にクロスさせた結果、どちらでもない独自の音域が生まれた。「プラッグ」という名称はスラングで「供給者(ドラッグのディーラー)」を指す俗語に由来し、こうした音楽を「plugg type beat」とSoundCloudで検索できるようにタグ付けする慣習が生まれた。Playboi Cartiが「Magnolia」(2017年)でこのスタイルを使い、ストリーミングのヒットチャートに乗ったことで認知が一気に広まった。

聴きどころ

Mexikodroの「Mexikodro Tag」(2015)を聴くと、シンセが7thコードを刻む音型とハイハットの密度の関係がわかりやすい——ハイハットが細かくなるタイミングでシンセの音がどう変化するかに耳を向けてほしい。Playboi Cartiの「Magnolia」では、ラップの声がビートの一部として「浮いて」いる感覚を確かめてほしい——歌詞を追うより声の音程とトーンをビートのシンセと同列の楽器として聴く。

音楽的特徴

楽器シンセ、サンプラー、ドラムマシン

リズムハーフタイムなトラップ、ドリーミーなパッド、明るいリード

代表アーティスト

  • Playboi Cartiアメリカ合衆国 · 2011年〜
  • Cassius Jayアメリカ合衆国 · 2014年〜
  • Mexikodroアメリカ合衆国 · 2014年〜

代表曲

  • MagnoliaPlayboi Carti (2017)
  • Mexikodro TagMexikodro (2015)
  • Plugg Type BeatCassius Jay (2015)
  • Mexikodro PluggMexikodro (2016)
  • wokeuplikethis*Playboi Carti (2017)

日本との関係

プラッグはLoFiヒップホップと音の質感が重なる部分があり、「集中できるBGM」の文脈でYouTubeのミックス動画として日本でも一定の再生数を集めている。日本語ラップシーンとの直接の交流はまだ少ないが、国内プロデューサーの中にプラッグのビートスタイルを参照した作品を出している人がいる。

初めて聴くなら

Cassius Jayの「プラッグ Type Beat」(2015)でビートの骨格を確認してから、Playboi Cartiの「Magnolia」(2017)と「wokeuplikethis*」(2017)でラップとビートの融合を体験する順番が理解しやすい。深夜に作業しながら聴く環境が音の質感に最も合っている。

豆知識

「plugg」ビートは多くがSoundCloudでフリーダウンロード(非商業利用)として公開されており、世界中のラッパーが同じビートを使って楽曲を作る「ビートリーパー文化」と結びついている。Mexikodroのビートは2010年代後半に無数のアングラ楽曲に使われ、「知らないうちに聴いていた」という状況がある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図2010年代2020年代プラッグプラッグプラッグンビープラッグンビーレイジ・ラップレイジ・ラップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
プラッグを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ · 2014年前後 (±25年)

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