ケニアン・ヒップホップ
Kapuka とは別軸で、Nairobi の米国式ヒップホップ、スワヒリ/シェング語の「コンシャス」ラップを担う世代の総体。
どんな音か
ケニアン・ヒップホップは、カプカ のダンスホール寄りポップ路線から距離を取り、アメリカ合衆国の技巧派ラップ(Nas、Jay-Z、後の Kendrick Lamar)を範に取ったスワヒリ語+シェング+英語の技巧的ラップ・シーンを指す。テンポは 80-95BPM のブーンバップ系か、2010年代後半以降はトラップ系の 130-150BPM(半分ノリで 65-75BPM)。歌詞はナイロビの階級、汚職、恋愛、部族問題を扱い、カプカ よりも意識的に『メッセージを持つラップ』を標榜する傾向がある。Sauti Sol(2005結成)はこの中でも独自のアフロ・ポップ路線を作った例外だが、ラップ性を持つケニア主流ポップの中心にいる。
生まれた背景
起点は2000年代半ばの Kalamashaka(Kilifi 地区のグループ、Ukoo Flani Mau Mau コレクティブの前身)、そして単発では K-South、Camp Mulla だった。2005年結成の Sauti Sol はナイロビの Upper Hill School 出身の Bien、Chimano、Willis、Polycarp の4人組で、当初はアフリカ音楽の伝統合唱を現代化する試みから始まったが、2014年『Sura Yako』で汎アフリカ・ヒットを出し、2018年にアメリカ合衆国のオバマ元大統領夫妻の Netflix 制作会社と関わるまでになった。2015年、Nyashinski(1982-、Kleptomaniax 出身、2000年代前半にキャリア中断)がソロ活動を再開した『Now You Know』がジャンルの現代化を告げ、Khaligraph Jones(本名 Brian Ouko Robert、1990-)がケニアン・トラップの旗手として登場した。
聴きどころ
発展
2010年代後半以降、Octopizzo(本名 Henry Ohanga、1985-、Kibera スラム出身)、Rabbit(King Kaka)、Wangechi らが世代を形成、Sauti Sol は2014年『Sura Yako』でアフロ・ポップの汎アフリカ・ヒットを出し、2018年に米国のオバマ元大統領夫妻の Netflix 制作会社と関わるまでになった。2020年代はレコード会社よりも YouTube チャンネル(Recording Academy Africa、Trace Africa)の可視性がジャンルを決定する構造に移行している。
出来事
- 2005: Sauti Sol 結成
- 2014: Sauti Sol『Sura Yako』
- 2015: Nyashinski『Now You Know』(復帰)
- 2018: Khaligraph Jones、BET Awards ノミネート
派生・影響
ヒップホップ(regional_variant)、Kapuka(sibling)、アフロ・ポップ(fused_with)。
音楽的特徴
楽器打ち込みドラム、サンプリング、シンセ、時にライブ・ドラム/ベース、ボーカル
リズム80-95BPM のブーンバップ、130-150BPM のトラップ、スワヒリ+シェング+英語のフロウ
代表アーティスト
- Nyashinski
- Sauti Sol
- Khaligraph Jones
- Octopizzo
代表曲・古典
Sura Yako — Sauti Sol (2014)
Now You Know — Nyashinski (2015)
Malaika — Nyashinski (2016)
代表曲・現在
Ivo Ivo — Octopizzo (2017)
Mazishi — Khaligraph Jones (2018)
Melanin — Sauti Sol (2018)
Suzanna — Sauti Sol (2020)
Yes Bana — Khaligraph Jones (2020)
日本との関係
日本でのケニアン・ヒップホップの認知はほぼゼロで、フェスや大型メディアで名の知られる存在はいない。ただし在日ケニア人コミュニティ(東京・大久保、横浜、川崎)のパーティで Sauti Sol、Nyashinski、Khaligraph Jones は定番ラインナップに入る。日本のヒップホップ・シーンでケニアン・ヒップホップを直接リファレンスした例はほぼないが、Coke Studio Africa 経由で映像を見た日本人リスナーの間で Sauti Sol への関心は少しずつ育っている。
初めて聴くなら
最初は Sauti Sol『Sura Yako』(2014)、汎アフリカ・ヒットとしてのケニア・ポップの完成形。続いて Nyashinski『Malaika』(2016)、朴訥な低音ボーカルの魅力。Khaligraph Jones『Yes Bana』(2020)はトラップ系の代表曲。夜のドライブ、あるいは深夜のヘッドホン。
