伝統・民族

ゲンゲトーン

Gengetone

ケニア / サブサハラ・アフリカ · 2018年〜

ナイロビ発のシェング語(スワヒリ+英語+スラング)ストリートラップ。粗野でDIY、Buruklyn Boyzら。

どんな音か

ナイロビ発、テンポ95〜110BPM前後のストリート・ラップ。ジャマイカのデンボウ/ダンスホール由来のリディムを骨格にしつつ、シンセベースは短くスタッカートに切り、スネアを裏で強く叩く。歌詞はシェング語(スワヒリ+英語+スラングの混成語)で早口に畳みかけ、複数のMCがマイクを奪い合うようにヴァースを連ねる。プロダクションは粗めで、低域はブーミー、ハイは少し荒れていて、スマホのスピーカーで鳴らすことを前提にした生々しい音像。

生まれた背景

2010年代後半、ナイロビ東部のイーストランズ地区(Buruburu、Eastlandsなど)の若者たちが、先行ジャンルのGenge(Jua CaliやNonini)を継承しつつYouTubeとSoundCloudを主戦場に独自進化させた。失業率の高い若者世代の生活実感(恋愛、酒、警察との小競り合い、貧困からの脱出願望)を率直に描く言葉の鋭さが共感を呼び、2018〜2020年に一気にシーン化。テレビよりも先にネットでヒットした、ケニア初のデジタル・ネイティブな大衆音楽と言える。

聴きどころ

まず注目すべきはマイクリレーの呼吸。3〜4人のMCがフックを集団で歌い、ヴァースで一人ずつ前に出てくる構造が多い。シェングの言葉遊び(英語・スワヒリ・スラングを一行内で切り替える)と、母音を引き伸ばして韻を踏むフロウは、意味が分からなくてもリズムとして気持ちいい。ベースは「ボン、ボボン」と跳ねるデンボウのパターン。サビ後に挟まる短いシンセフレーズやアドリブの叫び(「Eyy!」「Wololo!」)も、シーンの定型として聴き取りやすい。

代表アーティスト

  • Sailorsケニア · 2018年〜
  • Boondocks Gangケニア · 2019年〜
  • Buruklyn Boyzケニア · 2019年〜

代表曲

日本との関係

日本での認知はほぼゼロに近く、現地英語メディアやAfrican ヒップホップ系のYouTuberを追っている層が個別に発見している段階。ただし、デンボウ系のビートは日本レゲトンダンスホールDJの間で共有資産になっており、Buruklyn Boyzの『Nairobi』のような曲は東京のアフリカ系パーティで時折プレイされる。アニメや広告で使われた事例はまだないが、グローバル・サウス産ラップを掘る層には次の発見対象として注目されている。

初めて聴くなら

入口として最適なのはBuruklyn Boyzの『Nairobi』。タイトル通りナイロビの夜の空気がそのままパッケージされていて、シェング語のフロウとデンボウ・ビートの相性が一発で分かる。続いてSailorsの『Wamlambez』を聴くとシーン初期の集団的なノリ、Boondocks Gangの『Rieng』では泥臭くストリート寄りの面が見える。土曜の深夜、部屋を暗くしてサブウーファー寄りで鳴らすのが似合う音楽。

豆知識

ゲンゲトーン」という名前はGengeに音楽的接尾辞「tone」をつけた造語で、2019年頃にYouTubeチャンネルやブロガーが使い始めた呼称が定着したもの。シェング語の語彙の半分以上は数年単位で入れ替わる流動的な俗語で、ジェンゲトーンの歌詞は年が経つと現地の若者でも一部「古い」と感じる短命さを持つ。Sailorsの『Wamlambez』はケニア国会の議場でも言及される社会現象になり、過激な歌詞が放送禁止処分を受けた経緯もある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1970年代1980年代2000年代2010年代ゲンゲトーンゲンゲトーンヒップホップヒップホップダンスホールダンスホールデムボウデムボウ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ゲンゲトーンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ゲンゲトーン の系譜全体図(多段)を見る

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