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宗教・霊歌

ケニア・ゴスペル

Kenyan Gospel

ナイロビ / ケニア / 東アフリカ · 1995年〜

別名: Nairobi gospel / Swahili gospel

2000年代以降、ナイロビの巨大化した福音派/ペンテコステ派教会が生んだ、スワヒリ語+英語のポップ・ゴスペル。

どんな音か

ケニア・ゴスペルは、2000年代以降ナイロビで急拡大した福音派/ペンテコステ派教会音楽を、ポップ、R&B、時にダンスホールとハイブリッドさせたスワヒリ語+英語のポピュラー音楽だ。テンポは幅広く、バラードなら60-80BPM、アップテンポなら95-115BPM。編成は打ち込みビート+シンセパッド+アコースティック/エレキギター、そしてスタジアム級のリード・ボーカルに合唱コーラスが乗る型が典型。歌詞は Yahweh、恵み、証、Kimwondo(奇跡)といったスワヒリ語+英語の宗教語彙で書かれ、フックが繰り返しの多い集団合唱設計になっている。ラブソング寄りのバラードから、ダンスホール・リディム上の Praise chorus まで、範囲は広い。

生まれた背景

起点は2003年前後、Esther Wahome の『Kuna Dawa』(『薬がある』、キリストによる癒しの意)の全国ヒットと、Reuben Kigame(1970-)によるスワヒリ語ゴスペル・ソングの体系化だった。2010年代前半に Rufftone(本名 Roy Smith Mwatia)、Size 8(本名 Linet Munyali)、Willy Paul(本名 Wilson Abubakar Radido、1993-)、Bahati(本名 Kevin Kioko、1993-)、Guardian Angel(本名 Peter Omwaka、1990-)が世代の顔となり、2015-20年の間にゴスペルは実質的にケニアポップ市場最大のセグメントの一つになった。ナイロビの Christ is the Answer Ministries、Deliverance Church、ハウス on the Rock などの巨大教会は数千人規模の日曜礼拝を毎週行い、そこで演奏される音楽がそのまま Citizen TV、Family Media、Hope FM のプライム・タイム番組になっている。

聴きどころ

まず Bahati『Barua Ya Siri』(2016)を聴くと、R&B のバラード構造の上に宗教語彙を乗せる型が明快に見える。歌唱はメリスマ(こぶし)を多用する米国黒人ゴスペルの影響が強く、スワヒリ語の母音の連続がその歌唱様式によく馴染む。Willy Paul『Digiri』(2015)ではダンスホール・リディムに近い跳ねが宗教曲に持ち込まれており、この越境が同時にジャンル内の宗教的正統性をめぐる論争(『世俗ポップに近すぎるのではないか』)の焦点にもなった。

発展

2010年代後半以降、Willy Paul と Bahati は宗教音楽と世俗ポップの境界を跨ぐことで議論を呼び、Bahati は2022年の国会議員選挙にも出馬した(落選)。世代の下からは Nviiri the Storyteller、Bien(Sauti Sol)のゴスペル寄り曲、Mercy Masika、Emmy Kosgei らが続き、ケニア・ゴスペルは日曜午前の Citizen TV、Family Media、Hope FM のプライム・タイムを占め続けている。

出来事

  • 2003: Esther Wahome『Kuna Dawa』
  • 2013: Bahati、Groove Awards 新人賞
  • 2015: Willy Paul『Digiri』
  • 2022: Bahati 国会議員選挙出馬

派生・影響

ゴスペル(regional_variant)、ハイライフ由来のアフリカ教会音楽伝統からの間接的影響(influenced)。

音楽的特徴

楽器打ち込みドラム、シンセ、キーボード、エレキ/アコースティック・ギター、リード+集団ボーカル

リズムバラードの3/4や6/8、アップテンポの4/4、コール・アンド・レスポンス、フックの繰り返し

代表アーティスト

  • Willy Paulケニア · 2011年〜
  • Guardian Angelケニア · 2012年〜
  • Bahatiケニア · 2013年〜

代表曲・古典

代表曲・現在

日本との関係

日本国内では東京・大久保、川崎、横浜、上野の在日ケニア人・ウガンダ人ペンテコステ派教会の日曜礼拝で聴くことができる。これらの教会は東京の在日アフリカ人コミュニティの中心の一つで、Bahati、Guardian Angel、Willy Paul の楽曲は日常的にラインナップに入っている。日本J-POP や J-ゴスペル シーンでケニア・ゴスペルを直接引用した例はほぼないが、Tokyo Mass Choir のワークショップでスワヒリ語ゴスペルが扱われた記録がある。

初めて聴くなら

最初は Bahati『Barua Ya Siri』(2016)、ラブソング寄りゴスペルの入りやすさが分かる。続いて Guardian Angel『God is Good』(2018)、R&B 系の甘い声質の代表。Willy Paul『Digiri』(2015)は初期ヒットとして今もケニアゴスペル・カノンに含まれる。日曜午前、コーヒーを淹れながらが本領。

豆知識

Bahati は2022年ケニア国会議員選挙 Mathare 選挙区に出馬したが落選、その選挙運動費用の一部をゴスペル・アルバムの売り上げで賄ったと発表して物議を醸した。Willy Paul は2018年以降、宗教曲と世俗ラブソングを並行してリリースし『ゴスペル歌手なのかポップ歌手なのか』の論争を10年近く続けている。ケニアゴスペル音楽産業は、日曜礼拝でのライブ・パフォーマンス収入(教会からの謝礼)、CD/DVD 売上、YouTube 収益、そして海外ディアスポラ・ツアーを組み合わせた独自の経済圏で、世俗ポップとは異なる収益構造を持つ。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1900年代1980年代1990年代ケニア・ゴスペルケニア・ゴスペルゴスペルゴスペルゴスペル・ハイライフゴスペル・ハイライフ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ケニア・ゴスペルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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ケニア · 1995年前後 (±25年)