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伝統・民族

カプカ

Kapuka

ナイロビ / ケニア / 東アフリカ · 2002年〜

別名: Genge / Kenyan hip-hop 2000s

2000年代、ナイロビで生まれたダンスホール+ヒップホップのハイブリッドで、後のゲンゲトーンの直接の親。

どんな音か

カプカ(カプカ)は、2000年代前半のナイロビで、ジャマイカのダンスホールのリディムとアメリカ合衆国ヒップホップのラップ様式を、スワヒリ語+シェング(スワヒリ+英語+スラング混成語)+英語で歌うローカル・ポップとして生まれた。テンポは90-105BPM、ドラムはダンスホール由来の『ブン・タッ・カ』パターンを守り、シンセは薄く広がる湿ったパッドが多い。『カプカ』という命名自体は Nonini(本名 Hubert Nakitare、1982-)がバウンス感を模した擬音『カプ・カ』から作ったとされる。並行して『カプカ』(Jua Cali が命名)という呼称も流通し、両者はほぼ同義に使われる。歌詞は初期は恋愛、酒、パーティ、後期は汚職、社会階級を扱う。

生まれた背景

起点は Ogopa DJs(1998設立、Lucas Bikedo、Simon Kihara らのプロダクション・チーム)と Calif Records(Clemo こと Clement Rapudo 主宰)の二大レーベルが、2002-05年の間にナイロビの若手を大量に発表したことだった。E-Sir(本名 Isaac Mureu、1981-2003、ジャンル最初期の顔、2003年3月に自動車事故で夭折、22歳)、Nonini、Jua Cali、Nameless、Pilipili、Redsan、Deux Vultures らが Ogopa/Calif の看板を担った。2005年、Jua Cali の『Nchi Ya Kitu Kidogo』(『賄賂の国』の意)がジャンルを政治批評の音楽として広く認知させ、これが カプカ の一つの完成形となった。

聴きどころ

まず Jua Cali『Nchi Ya Kitu Kidogo』(2005)を聴くと、ダンスホールのワンドロップ・キックとシンセ・ベースの単純な繰り返し、その上にシェング語のラップが乗る構造が明快に見える。Nonini『We Kamu』(2007)は同じ骨格の上でよりダンサブルにシフトしたバージョンで、フックのシンガロング設計がゲンゲトーンの原型そのものだ。ドラム・パターンはハイハットを裏で16分刻みにし、ダンスホール特有の『空間の広さ』を持つ。ここが後のゲンゲトーンの『詰め込み型』ミックスとの識別点になる。

発展

2010年代前半までにダンスホール寄りの Kapuka はメジャー・レーベルとラジオの主流を占めたが、2015年前後にトラップ/デンボウの新世代が YouTube 主戦場で台頭、その中から Ethic Entertainment を中心とする Gengetone が2018-19年に独立したジャンルとして分岐した。Kapuka 世代の Nonini、Jua Cali はいまも現役で、若手ラッパーとのフィーチャリングで自分の系譜を継続的に更新している。

出来事

  • 1998: Ogopa DJs 設立
  • 2003: E-Sir 事故死
  • 2005: Jua Cali『Nchi Ya Kitu Kidogo』
  • 2007: Nonini『We Kamu』
  • 2018: Gengetone 分岐

派生・影響

Gengetone(親ジャンル)、Ghanaian Hiplife(influenced)、Kenyan Hip-Hop(sibling)。

音楽的特徴

楽器打ち込みドラム、シンセベース、シンセパッド、時にサンプリング、ボーカル

リズム90-105BPM、ダンスホール・リディム、シェング語の早口ラップ、フックの合唱

代表アーティスト

  • Jua Caliケニア · 2002年〜
  • Noniniケニア · 2002年〜

代表曲・古典

日本との関係

日本でのカプカの認知はほぼゼロで、2000年代当時は東京のアフリカ音楽イベントでも Nonini、Jua Cali の名は稀にしか登場しなかった。ゲンゲトーンが Buruklyn Boyz 経由で2021年以降に東京のアフリカ系パーティで流通し始めた際、DJ の一部が『これの親ジャンル』としてカプカのオールドスクール曲を挟むようになったのが、間接的な導入経路だ。

初めて聴くなら

最初は Jua Cali『Nchi Ya Kitu Kidogo』(2005)、政治批評ラップとしてのカプカの頂点。続いて Nonini『We Kamu』(2007)、パーティ・チューンとしての側面。E-Sir の1曲(『Boomba Train』2003)も、この世代の起点として聴く価値がある。土曜の夜、部屋のスピーカーで鳴らすとバウンス感が伝わる。

豆知識

E-Sir(1981-2003)はキャリアの絶頂期にナクル郊外で自動車事故で亡くなり、ケニアで最も惜しまれる音楽的死亡事故の一つとして記憶されている。彼の追悼日は毎年3月に Ogopa DJs 主催のトリビュート・ライブが続いている。『カプカ』と『カプカ』の呼称の使い分けは今も明確なコンセンサスがなく、Nonini は『カプカ』派、Jua Cali は『カプカ』派を主張しているが、実質的には同じジャンルを指す。ゲンゲトーンの Nonini は自身のインタビューで『ゲンゲトーン は自分の孫、カプカケニアン・ヒップホップ の親』と述べている。

影響・派生で結ばれたジャンル

カプカを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

カプカ の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ケニア · 2002年前後 (±25年)