古典

ワーグナーの楽劇

Wagnerian Music Drama

バイロイト / ドイツ / 中央ヨーロッパ · 1850〜1883年

別名: Gesamtkunstwerk / 総合芸術作品

ワーグナーが1850年代以降に唱えた、音楽・文学・演劇・舞台美術を統合する総合芸術観に基づくオペラ形式。

どんな音か

ワーグナーの楽劇は、リヒャルト・ワーグナーが音楽、詩、演劇、舞台美術を統合する総合芸術として構想したオペラ形式。番号付きのアリアを並べる従来のオペラから離れ、途切れにくい音楽の流れ、ライトモティーフ、巨大な管弦楽、神話的な物語を組み合わせる。音楽が劇の心理と運命を語る点が核である。

生まれた背景

19世紀半ばのドイツ・ロマン主義、民族神話への関心、劇場改革の思想を背景に生まれた。ワーグナーは自ら台本を書き、バイロイト祝祭劇場まで建設して、理想の上演環境を追求した。「トリスタンとイゾルデ」「ニーベルングの指環」「パルジファル」は、その思想を大規模に実現した作品である。

聴きどころ

独立した名曲を抜き出すより、動機が物語の中で変形していく過程を聴く。ある人物、感情、物に結びついたライトモティーフが、場面ごとに和声や音色を変えて戻ってくる。長大なので、最初は前奏曲や有名場面から入り、後で台本と一緒に追うと理解しやすい。金管と低弦の重みも重要である。

発展

「トリスタンとイゾルデ」(1865)の半音階和声が西洋調性の限界を露呈し、4部作「ニーベルングの指環」(1876全曲初演)、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(1868)、「パルジファル」(1882)が最終形を示した。ワグネリズムは19世紀末ヨーロッパ思想・芸術全般を席巻した。

出来事

  • 1850: ワーグナー「未来の芸術作品」出版
  • 1865: 「トリスタンとイゾルデ」初演
  • 1876: バイロイト祝祭劇場開場、「指環」全曲初演
  • 1882: 「パルジファル」初演

派生・影響

後期ロマン派(マーラー、R.シュトラウス、ブルックナー)、初期表現主義(シェーンベルク「グレの歌」「ペレアスとメリザンド」)、後の調性解体への直接的橋渡しとなった。映画音楽のライトモティーフ書法もワーグナー由来。

音楽的特徴

楽器独唱、合唱、巨大管弦楽

リズムライトモティーフ、無限旋律、半音階和声

代表アーティスト

  • リヒャルト・ワーグナードイツ · 1840年〜1883

代表曲

日本との関係

日本では明治以降の西洋音楽受容の中でワーグナーが紹介され、オペラ上演、文学、思想、映画音楽論にも影響を与えた。フル上演は大がかりだが、前奏曲や管弦楽抜粋は演奏会で聴かれる。日本のアニメやゲーム音楽を語る際にも、ライトモティーフ的な作法との比較が出ることがある。

初めて聴くなら

入口は「トリスタンとイゾルデ — リヒャルト・ワーグナー (1865)」の前奏曲。解決を引き延ばす和声が楽劇の心理的な深さを示す。物語の大きさを知るなら「ニーベルングの指環『ワルキューレ』」、祝祭性なら「ニュルンベルクのマイスタージンガー」がよい。

豆知識

バイロイト祝祭劇場は、ワーグナー作品のために作られた特別な劇場である。客席を暗くし、オーケストラを見えにくい位置に置く設計は、観客を舞台世界へ集中させるためだった。現在の映画館的な没入体験にも通じる発想である。

影響・派生で結ばれたジャンル

ワーグナーの楽劇を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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