宗教・霊歌

讃美歌

Hymnody

イギリス・アメリカ / 西ヨーロッパ · 1700年〜

別名: Hymn singing

プロテスタント諸派を中心に発達した、有節形式の英語・各国語讃美歌の総合伝統。

どんな音か

有節形式の歌詞を持つ讃美歌。メロディは親しみやすく、同じフレーズが複数回反復されることで、歌い手・聴き手の記憶に定着しやすい。リズムは規則的な4拍子が基本で、装飾音は最小限。複数のボーカリストが、ユニゾンもしくはハーモニーで歌われることが多い。オルガンやピアノの伴奏が標準で、その和声は古典的である。歌詞は英語もしくは各国の言語で、神への祈り、感謝、願いが中心。

生まれた背景

プロテスタント宗教改革(16世紀)の結果、各地の言語による讃美歌が作られ、シンプルで民衆が歌いやすい形式が優先された。18〜19世紀の讃美歌の黄金期を経て、複数の宗派ごとに独自の讃美歌集が作成された。イギリスアメリカ合衆国では特に讃美歌の伝統が根深く、『Amazing Grace』や『Holy, Holy, Holy』などは、宗教的背景の薄い人々にも知られるようになった。

聴きどころ

メロディの単純さと、それがもたらす記憶性。オルガンやピアノの伴奏のニュアンス。複数のボーカリストのハーモニー。歌詞の内容と音楽表現の一致。宗教的な厳粛さと、親しみやすさのバランス。

発展

19-20世紀には『Hymns Ancient and Modern』『The English Hymnal』など決定版讃美歌集が編纂された。ファニー・クロスビーら米国の盲目作詞家が福音歌(Gospel hymn)を発展させ、ムーディ&サンキーの伝道運動と結びついて新世界讃美歌が花開いた。20世紀後半は新作讃美歌(Hymn Explosion)とエキュメニカル化が進んだ。

出来事

  • 1707: アイザック・ウォッツ『Hymns and Spiritual Songs』刊行
  • 1779: ジョン・ニュートン『Amazing Grace』作詞
  • 1861: 『Hymns Ancient and Modern』初版
  • 1875: ムーディ&サンキー、福音讃美歌運動を本格化

派生・影響

Black Gospel・Country Gospel・CCM・Praise & Worshipなど現代キリスト教大衆音楽全般の祖型。讃美歌『Amazing Grace』はフォーク・ソウル・ロック等で広く歌われる。

音楽的特徴

楽器会衆斉唱、オルガン、ピアノ、合唱

リズム有節形式、共通韻律、四声和声、覚えやすい旋律

代表アーティスト

  • Choir of King's College, Cambridgeイギリス · 1441年〜
  • The Tabernacle Choir at Temple Squareアメリカ合衆国 · 1847年〜

代表曲

日本との関係

讃美歌はキリスト教信仰者を中心に日本でも知られており、特に『Amazing Grace』『O Come, All Ye Faithful』『Silent Night』などは、クリスマス時期にホテルやショッピングモールの背景音として流される。しかし、歌詞の宗教的意味を理解する日本人は限定的で、『西洋の伝統音楽』としての消費が主流。プロテスタント系の教会では、讃美歌唱が礼拝の中核である。

初めて聴くなら

Choir of King's College, Cambridge『Amazing Grace』。透明感のあるボーカル、整然とした伴奏。讃美歌の代表作を最高水準で聴く。より格調高く、宗教的な重みを求めるなら、The Tabernacle Choir at Temple Square『Holy, Holy, Holy』。アメリカ合衆国のモルモン系大合唱団による、厳粛さの体現。

豆知識

『Amazing Grace』は 1779 年に作詞されたもので、作詞者のジョン・ニュートンは元々は奴隷商人だった。改心後に神学者となり、この讃美歌が自らの精神的救済の体験を表現している。その後数百年を経ても、この歌詞と旋律が宗教的背景を超えて愛され続けているのは、普遍的な人間の願いが込められているからだと考えられる。

影響・派生で結ばれたジャンル

讃美歌を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

讃美歌 の系譜全体図(多段)を見る

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