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伝統・民族

ノルテーニョ

Norteño

メキシコ/米国 / 南米 · 1880年〜

別名: Tex-Mex

メキシコ北部・米国南西部のメキシコ系コミュニティで19世紀末から生まれた、ボタン式アコーディオンとバホ・セスト(弦ベース)が核となる民族音楽。国境地域の人間たちの愛、別れ、苦労、移民の経験を歌う。

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ひとことで言うとメキシコ北部・米国南西部のメキシコ系コミュニティで19世紀末から生まれた、ボタン式アコーディオンとバホ・セスト(弦ベース)が核となる民族音楽。国境地域の人間たちの愛、別れ、苦労、移民の経験を歌う。

まずはこの曲からLos Tigres del NorteLa Jaula de Oro ▶ YouTube

代表的な人Ramón Ayala

どんな音か

ノルテーニョは、メキシコ北部諸州(ヌエボ・レオン、コアウイラ、タマウリパス、チワワ、ソノラ)と米国南西部(テキサス、カリフォルニア)のメキシコ系コミュニティで19世紀末に成立した、ボタン式アコーディオンとバホ・セスト(12弦の伴奏ギター)を核とする国境音楽だ。編成の標準形は、ボタン式アコーディオン(3列ボタン+ボタン低音側)、バホ・セスト、エレクトリック・ベース、ドラムの4-5人組。歌詞は「コリード(corrido)」と呼ばれる語り歌形式で、実在の人物や出来事を三人称で語る叙事的トーンが特徴になる。テーマは移民、労働、恋愛、抗争、時に麻薬密売まで幅広い。テンポは110-140BPM、拍子はポルカ2/4(最頻)、ワルツ3/4、コリードの物語形式、時にクンビアの2/4スウィングを混ぜる。

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

ポルカ · 130 BPM

聴きどころ

まずボタン式アコーディオンの独特の跳ねた音色に耳を慣らしてほしい。鍵盤アコーディオンと違い、ボタン式は「押し弾き」と「引き弾き」で違う音が出るので、演奏者の指が忙しく往復し、そのぶんフレーズが跳ねる。Ramón Ayalaの『Un Puño de Tierra』を聴くと、アコーディオンとバホ・セストが3度でユニゾンする瞬間が明快に聴き取れる。歌唱面では、Los Tigres del Norteのホルヘ・エルナンデスの声——鼻にかかった、感情を抑えた語り口——が「コリードの叙述者」の標準として定着した。歌詞は物語なので、途中で聴衆に情報を伝える箇所で明確に息を継ぐ癖があり、そこが物語の節目になっている。

初めて聴くなら

最初はLos Tigres del Norteの『Contrabando y Traición』(1974)、ノルテーニョの語り歌形式が完璧に機能する記念碑的な一曲だ。次に『La Puerta Negra』(1988)、移民の郷愁の決定版。Ramón Ayalaの『Un Puño de Tierra』はアコーディオンの職人芸を聴くための代表作。テキサス側のロマンティック路線を聴くならIntocable『Rincón Abandonado』(1997)。深夜のドライブか、金曜の夜に一杯やりながらが向いている——ノルテーニョは元々「一日の労働の終わりの音」だ。

代表アーティスト

  • Ramón Ayalaメキシコ · 1963年〜
  • Los Tigres del Norteメキシコ/米国 · 1968年〜
  • Selena Quintanillaアメリカ合衆国 · 1981年〜1995
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  • Chalino Sánchezメキシコ · 1984年〜1992
  • Los Tucanes de Tijuanaメキシコ · 1987年〜
  • Intocableアメリカ合衆国 · 1993年〜

代表曲

生まれた背景

決定的な起源は19世紀後半のテキサスと北メキシコで、当時この地域に大量に流入したドイツ・チェコ・ポーランド系移民がボタン式アコーディオンとポルカのリズムを持ち込み、それが現地のメキシコ人労働者の歌曲伝統と融合したことにある。1848年米墨戦争の敗戦でテキサス、ニューメキシコ、カリフォルニアが米国領となり、その地に取り残されたメキシコ系住民(のちのチカーノ)にとって、ノルテーニョは「言語も土地も奪われた中で残された自分たちの音」となった。

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1936年、ナルシソ・マルティネス(1911-92、テキサス・タマウリパス生)がボタン式アコーディオンのソロ録音でジャンルの奏法上の基準を確立し、彼は現在「ノルテーニョの父」と呼ばれている。1968年、サン・ノゼ(カリフォルニア)で結成されたLos Tigres del Norteが、ノルテーニョを国境音楽から汎メキシコ・汎米移民の音楽へと決定的に拡張した。彼らの1974年のシングル『Contrabando y Traición』——テキサスからカリフォルニアへマリファナを運ぶ女性密売人の物語——が史上初の商業的ナルコ・コリードとなり、以降ノルテーニョは移民の生活を歌う語り部としてのジャンル的自意識を強めた。1988年『La Puerta Negra』は移民の郷愁と困窮を、1997年『Jefe de Jefes』はカルテル抗争を主題化した。並行して1963年結成のRamón Ayala『Los Bravos del Norte』がアコーディオンの奏法の頂点を、1993年結成のIntocable(テキサス側)がロマンティックなバラード路線を、1987年結成のLos Tucanes de Tijuanaがナルコ・コリード側を、それぞれ極めた。

音楽的特徴の詳細

楽器ボタン式アコーディオン、バホ・セスト、ベース、ドラム、声

リズムポルカ2/4、ワルツ3/4、コリード物語、クンビア

発展

1940年代ナルシソ・マルティネスがアコーディオン奏法を確立し、1970~80年代ロス・ティグレス・デル・ノルテが世界的ノルテーニョ・スター・グループとなった。米国側でテハーノ・スーパースター、セレナ・キンタニーリャ(1995年暗殺)も派生した。

出来事

  • 1936: ナルシソ・マルティネス初録音
  • 1968: ロス・ティグレス・デル・ノルテ結成
  • 1995: セレナ暗殺
  • 2000: ナルコ・コリード論争

派生・影響

テハーノ、コリード、ナルコ・コリード、バンダ・シナロエンセに影響。

日本との関係

日本におけるノルテーニョの認知は限定的だが、Netflix『ナルコス:メキシコ』(2018-)のサントラでLos Tigres del Norteの楽曲が使われたことで、若年層への浸透が進んだ。2010年代半ばから東京・大阪のメキシコ料理店(特に神奈川県のメキシコ系コミュニティが集中する地域)でノルテーニョの生演奏が行われる場が増えている。埼玉県川口市を中心にしたラテン系コミュニティのイベントでは、ノルテーニョ・バンドが定期的にプレイしている。J-POPでの影響は薄いが、山下達郎、佐野元春らが1970-80年代にテックス=メックス(米国側のノルテーニョ派生)の影響を音楽誌のインタビューで語っている。

豆知識

「Bajo Sexto(バホ・セスト)」は「低い六番目」の意で、名前とは裏腹に12弦(6コース×2弦)の楽器。18世紀にドイツから移住した楽器職人が改造したのが起源とされる。

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Los Tigres del Norteの4人組は結成時全員が兄弟(と一人従兄弟)で、現在も結成から半世紀以上を経て同じ4人組が中心を務める世界最古の現役ノルテーニョ・バンドの一つだ。ジャンル名の「ノルテーニョ」は「北の(norte)」を意味する形容詞で、字義通り「北の音楽」の意。米国側では同じ音楽がしばしば「Conjunto」または「ノルテーニョ(テックス=メックス)」と呼ばれ、正確には「ノルテーニョ」はチカーノ視点、「ノルテーニョ」はメキシコ視点、と使い分けられる場合が多い。

影響・派生で結ばれたジャンル

系譜図を見る
ノルテーニョを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ノルテーニョ の系譜全体図(多段)を見る

感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル

ノルテーニョが好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。

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