ロック・メタル

スロウコア

Slowcore

アメリカ合衆国 / 北米 · 1989年〜

別名: Sadcore

1990年代に成立した、極端に遅いテンポと内省的歌詞を特徴とするインディロック・サブジャンル。

どんな音か

スロウコアのテンポは遅い。BPM60を下回ることも珍しくなく、ドラムは最小限の打音だけを置く。ギターはディストーションをかけることもあるが、音量よりも音の残り方、つまり余韻が重要で、一つのコードが鳴り終わる前に次のコードが入ってくる。ヴォーカルは感情を押し出さない。コディーン(Codeine)は声を歌うというより声を置くような発声で、感情は音量でなく音の粒の重さで表れる。ダスター(Duster)の録音はカセットテープのような遠さがあり、スタジオの壁よりも音が向こうに引っ込んでいる。

生まれた背景

スロウコアという呼称は後付けで、1990年前後にニューヨークのコディーン、カリフォルニアのダスター、ミネアポリスのLowらが各地で同時並行的に発展させた。直接の影響源はジョイ・ディヴィジョン、ペイル・セインツ、初期のピクシーズとされているが、スロウコアはそこからさらに音量と装飾を削ぎ落とした。商業的な成功とは距離があるため、大半のバンドはインディペンデントレーベルにとどまり、リリース数も少ない。シガレッツ・アフター・セックスは2010年代に国際的に注目され、スロウコアの語法を現代の耳に届けた。

聴きどころ

「D — Codeine (1990)」は3〜4分のほぼ全体が同じコードの繰り返しで成立している。その繰り返しの中で、ドラムが入るタイミングを1回聴き、次に聴くときはギターだけを追うと、曲の構造が「引き算」であることがわかる。「Inside Out — Duster (1998)」では録音の「遠さ」に注目する。音が自分に向かってきていない感覚が意図的なものだとわかれば、この音楽の聴き方が変わる。

発展

2000年代Low、Sun Kil Moon等が継承、2020年前後Duster再評価でTikTokを通じて若年層にも拡散した。

出来事

  • 1989: Galaxie 500『On Fire』 / 1990: Codeine『Frigid Stars』 / 1996: Low『The Curtain Hits the Cast』

派生・影響

Shoegaze、Dream Pop、Indie Folk。

音楽的特徴

楽器クリーンギター、ベース、ドラム、声

リズム極遅、ミニマル編成、内省的

代表アーティスト

  • Codeineアメリカ合衆国 · 1989年〜1994
  • Lowアメリカ合衆国 · 1993年〜2022
  • Dusterアメリカ合衆国 · 1996年〜
  • Cigarettes After Sexアメリカ合衆国 · 2008年〜

代表曲

日本との関係

スロウコア日本では90年代から少数のリスナーに支持があり、ディスクユニオンなどの輸入盤店で扱われてきた。シガレッツ・アフター・セックスは2010年代後半から日本でも認知され、「Apocalypse (2017)」はストリーミングで広く聴かれた。ポストロック系の音楽好きとリスナー層が重なる。

初めて聴くなら

「Apocalypse — Cigarettes After Sex (2017)」は音質が良く、スロウコアの質感への入口として最も取っつきやすい。次に「Inside Out — Duster (1998)」で、音の「引き算」がどこまで進むと音楽が成立するかの限界を試してほしい。

豆知識

スロウコア」という呼称について、当事者のバンドの多くは自らをそう呼んでいない。Lowはこのジャンル名を嫌い、「静かなロック」や単に「ポップ」と表現した。コディーンのデビューEP「Frigid Stars」(1990年)は今も批評家の「知られざる傑作リスト」に入り続けている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1980年代スロウコアスロウコアインディーロックインディーロックドリームポップドリームポップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
スロウコアを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1989年前後 (±25年)

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