ロック・メタル

スラッジ・メタル

Sludge Metal

ニューオーリンズ / アメリカ合衆国 / 北米 · 1988年〜

1980年代末ニューオーリンズで成立した、Doom Metal と Hardcore Punk を結合した重厚で攻撃的なメタル。

どんな音か

スラッジ・メタルのギターは重い。ダウンチューニング(標準より半音〜2音下げ)されたギターが、ゆっくりとしたリフを繰り返す。ドゥーム・メタル由来の重さと、ハードコア・パンク由来の短い怒りの爆発が一曲の中に同居する。アイヘイトゴッド(Eyehategod)の録音は音像が潰れていて、ギターとベースの境界が溶けているように聴こえる。声は明瞭に歌わず、叫びと唸りの間を行き来する。ニューロシス(Neurosis)はそこに環境音やサンプリングを重ね、単純な重さに奥行きを加えた。

生まれた背景

スラッジ・メタルはニューオーリンズで1987〜88年頃に形成され始め、アイヘイトゴッドが1990年代初頭に代表的なサウンドを確立した。ニューオーリンズという都市の重さ——湿気、南部の貧困、麻薬問題——が音楽の質感と重なることがしばしば言及される。ブラック・サバスのトニー・アイオミが1960年代末に産業事故で指を切断し、痛みを緩和するために弦を緩め音程を下げたことがドゥーム・メタルの原点の一つとされるが、スラッジはそのさらに先を行く重さを追求した。クロウバー(Crowbar)はよりメロディックな面を持ち、このジャンルの幅を広げた。

聴きどころ

「Sister Fucker — Eyehategod (1993)」では曲が始まった瞬間の音の圧力に注目する。音量を上げる必要はない。音が「重い」のは音量ではなくテンポと音程の低さから来ている。「All I Had (I Gave) — Crowbar (1993)」はスラッジにしては旋律的で、苦さの中に引力がある。「Through Silver in Blood — Neurosis (1996)」は長尺で、音が展開する中でどこで圧力が変化するかを追うと構成の複雑さが見えてくる。

発展

1990年代に米南部全般に拡散、2000年代以降Mastodon・Baronessらが Progressive Sludge へ展開、Post-Metal とも近接した。

出来事

  • 1990: Eyehategod『In the Name of Suffering』 / 1993: Crowbar『Crowbar』

派生・影響

Doom、Stoner、Post-Metal、Hardcore Punk。

音楽的特徴

楽器歪みギター、ベース、ドラム、シャウト声

リズム中遅、ヘヴィリフ、ハードコア・ブレイク

代表アーティスト

  • Neurosisアメリカ合衆国 · 1985年〜
  • Eyehategodアメリカ合衆国 · 1988年〜
  • Crowbarアメリカ合衆国 · 1989年〜

代表曲

  • All I Had (I Gave)Crowbar (1993)
  • Through Silver in BloodNeurosis (1996)
  • Dixie WhiskeyEyehategod (2000)
  • Sister FuckerEyehategod (1993)
  • Sister Fucker (Part 1)Eyehategod (1993)

日本との関係

スラッジ・メタル日本では国内バンドにも影響を与えており、Boris(ボリス)はこのジャンルと近接した音楽をアメリカ合衆国やヨーロッパでも高く評価された。Borisはアイヘイトゴッドやニューロシスと比較されることが多く、日本スラッジ・メタル文脈で重要な存在だ。

初めて聴くなら

「All I Had (I Gave) — Crowbar (1993)」から入るとハードルが低い。旋律の輪郭があるため、「音が重い」という特徴を感じながらも曲として追いやすい。次にアイヘイトゴッドで、旋律の輪郭が溶けた世界へ進む。

豆知識

「スラッジ」という言葉は「泥」「汚泥」を意味し、音楽の粘度と重さをそのまま形容している。ニューオーリンズのシーンは2005年のハリケーン・カトリーナで壊滅的打撃を受け、多くのミュージシャンが市外に退避した。アイヘイトゴッドのマイク・ウィリアムズはカトリーナ後のインタビューで「音楽よりも現実の方が重かった」と語っている。

影響・派生で結ばれたジャンル

スラッジ・メタルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1988年前後 (±25年)

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