ポルトガル・インディー
1990年代のOrnatos Violeta、Silence 4、Pop Dell'Arteの実験的ポップ・ロックが精神的先駆となり、2010年代以降Capitão Faustoを象徴とするリスボン/ポルトのインディー・ロック/ドリーム・ポップ/エレクトロニクスへ結晶した。
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ひとことで言うと1990年代のOrnatos Violeta、Silence 4、Pop Dell'Arteの実験的ポップ・ロックが精神的先駆となり、2010年代以降Capitão Faustoを象徴とするリスボン/ポルトのインディー・ロック/ドリーム・ポップ/エレクトロニクスへ結晶した。
まずはこの曲からPop Dell'Arte — Contra Mundum ▶ YouTube
代表的な人Pop Dell'Arte
どんな音か
ポルトガル・インディーは、2010年前後から独立系レーベル(Amor Fúria、Xita Records、Optimus ディスコs)を中心に育った、リスボン/ポルトの独立系ロック/インディー・ポップの総体だ。中心はリスボンのカピタォン・ファウスト(Capitão Fausto)、ポルトのリンダ・マルティーニ(Linda Martini、より重いポストパンク寄り)、ブラガのセンシブル・サッカーズ(Sensible Soccers、ドリーム・ポップ)、そしてManel Cruz(元Ornatos Violeta)のソロ諸プロジェクトだ。編成は4-5人組が主流で、キーボードとシンセを重要な役割で使う。BPM 90-140、Aメロで内省的に抑え、ブリッジで急に情景を切り替える構造を好み、リスボン/ポルトの都市生活の細部(路面電車の音、ドウロ川の霧、Airbnb化する古い街区)を歌詞に埋め込む。英語ではなくポルトガル語で書く選択が世代的な特徴で、ここが1990年代のSilence 4(英語詞)世代との明確な断絶だ。
聴きどころ
カピタォン・ファウストの音の特徴は、シンセの選び方だ。1970年代のポリムーグ、ジュノー106のプリセットに近い温かい音色を、電子楽器なのに『部屋の中で鳴っている』ような近い距離感で録音する。これが彼らの音の親密さの源で、Tame Impala(オーストラリア)の90年代AOR再解釈と近い位置にある。歌詞のポルトガル語は詩的で、Tomásの少し掠れた歌声はサビでも決して押しつけない。Linda MartiniのCláudia Efeの歌唱は逆で、ポストパンクの疾走ビートの上を切迫感で走る。Sensible Soccersのドリーム・ポップは、シューゲイズ的な壁の音響ではなく、ブラガ郊外の湿った空気を思わせる残響感を持つ。1曲の中でAメロ→ブリッジ→サビで景色が3回切り替わる構造が世代的な癖で、これは映画的なストーリーテリング志向の反映だ。
初めて聴くなら
起点として最初にOrnatos Violeta『Anda Comigo Ver Os Aviões』(1997)——ポルトガル・インディー第一世代の実質的な起点で、Manel Cruzの詩的な作詞が体感できる。次に『Capitães de Areia』(1999、『O Monstro Precisa de Amigos』所収)で90年代ポルトガル・ロックの詩的頂点を、Pop Dell'Arte『Contra Mundum』(1990)でアヴァンギャルド系の原点を、Silence 4『Girl』(1998)で英語詞インディーの成立を辿る。ここから現代側に降りてきてカピタォン・ファウスト『Amanhã Tou Melhor』(2019、『明日は元気になるよ』)——ポルトガル・インディーの現時点での到達点——、『Gazela』(2011)で初期の疾走感、Linda Martini『Casa Ocupada』(2010、『占拠された家』)、Sensible Soccers『Coconut』(2016)でブラガのドリーム・ポップの静けさを味わえる。深夜、ヘッドホンで、歌詞を追う余裕はなくて構わない、音の質感だけで聴くのがこの世代には合う。
代表アーティスト
- Pop Dell'Arte
- Ornatos Violeta
- The Gift
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- Linda Martini
- Sensible Soccers
- Capitão Fausto
代表曲
- Pop Dell'Arte — Contra Mundum (1990)
- Ornatos Violeta — Anda Comigo Ver Os Aviões (1997)
- Silence 4 — Girl (1998)
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- Ornatos Violeta — Capitães de Areia (1999)
生まれた背景
精神的な起点は1980年代のPop Dell'Arte(1984結成、リスボン、João Peste率いる実験的ポップ・ロック集団)で、1985年ミニLP『Free Pop』と1990年『Ready-Made Boomerang』所収の『Contra Mundum』(『世界に抗して』)がジョイ・ディヴィジョン系ポストパンクとダダイスム的言葉遊びを融合させ、20年後のカピタォン・ファウスト世代が繰り返し参照する原点になった。1994年結成のOrnatos Violeta(ポルト、Manel Cruz)がデビュー・アルバム『Cão!』(1997)所収の『Anda Comigo Ver Os Aviões』を経て、1999年『O Monstro Precisa de Amigos』(所収『Capitães de Areia』、ジョルジ・アマード同名小説に触発)でポルトガル・ロックの詩的な最高点を残し、Manel Cruzがポルトガル・インディー世代の精神的な師となる位置を築いた。
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並行して1996年結成のSilence 4(コインブラ、David Fonseca)が1998年『Silence Becomes It』所収の『Girl』で英語詞のグランジ以降のインディー・ロックが90年代ポルトガル語圏でも成立し得ることを示し、以降のCapitão Fausto世代が『英語ではなくポルトガル語で歌う』選択をする際の対抗軸となった。実質的な現代シーンは2008年頃、リスボン工業地区のPraça do チリ周辺のライブハウス(Musicbox、Village Underground)と、ポルトのマイア地区の小さな会場(Passos Manuel、Hard Club)から始まる。カピタォン・ファウスト(2008結成、Tomás、Salvador、Domingos、Manuel、Francisco)が2011年『Gazela』でデビュー、以降『Capitão Fausto Têm os Dias Contados』(2014)、『A Invenção do Dia Claro』(2016)、『Amanhã Tou Melhor』(2019)でポルトガル・インディー最大のバンドとなった。彼らは1970年代AOR(スティーリー・ダン、ドゥービー・ブラザーズ)の和声感覚をポルトガル語詩に接続する独特の作風で、ポルトガル語ロックが『英米のインディーと同じテーブルに座れる』水準に達したことを証明した。リンダ・マルティーニ(ポルト、2003結成、Cláudia Efe、André Henriques、Pedro Geraldes、Hélio Morais)は『Casa Ocupada』(2010)以降、より重いポストパンク寄りの4作でシーンの重要な参照点となっている。
音楽的特徴の詳細
楽器エレクトリック・ギター、ベース、ドラム、シンセ、時にサックス、コーラス、field-recordingの都市音
リズムスタンダードなロック4/4、ドリーム・ポップの遅い4/4、時に7/8の変拍子、シンコペーションを多用
発展
Manel Cruz(元Ornatos Violeta)は2000年代以降、Pluto、Foge Foge Bandido、そして本名名義のソロと形式を変えながらポルトガル語の詩的な作曲を続け、若い世代の作家たちの精神的な師の位置にいる。2010年代後半以降はConjunto Corona、Best Youth、Bispo、そして電子寄りのBranko(Buraka Som Sistema主宰)がインディーとエレクトロの境界を溶かした。パーティー・オルガナイザーとしてはBoiler Room Lisbon、そしてOptimus Alive、Vodafone Paredes de Coura、Nos Alive の3つの夏フェスがインディー・シーンの露出装置として機能している。
出来事
- 1990: Pop Dell'Arte『Ready-Made Boomerang』
- 1997: Ornatos Violeta『Cão!』
- 1998: Silence 4『Silence Becomes It』
- 1999: Ornatos Violeta『O Monstro Precisa de Amigos』
- 2008: Capitão Fausto結成
- 2011: Capitão Fausto『Gazela』、ポルトガル救済危機
- 2014: Capitão Fausto『Têm os Dias Contados』
- 2019: Capitão Fausto『A Invenção do Dia Claro』
- 2020s: Bispo、Best Youthら新世代
派生・影響
英米インディー・ロック(Pavement、Modest Mouse、Grizzly Bear)から直接影響を受けつつ、Portuguese Rock世代(Ornatos Violeta、Clã)の直接の子孫。Nova Canção Portuguesaとは兄弟関係。
その後の代表曲
- Linda Martini — Casa Ocupada (2010)
- Capitão Fausto — Gazela (2011)
- Capitão Fausto — Amanhã Tou Melhor (2019)
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- Linda Martini — Turbo Lento (2014)
- Sensible Soccers — Coconut (2016)
- Capitão Fausto — A Invenção do Dia Claro (2016)
日本との関係
ポルトガル・インディーの日本認知はほぼゼロで、ストリーミング・サービスでも日本のプレイリスト圏外にある。カピタォン・ファウストは2010年代後半にヨーロッパ・ツアーで頭角を現したが、アジア進出はまだない。日本で音楽的に近い位置にあるのはceroやカネコアヤノ、ミツメあたりの日本インディーで、これらのバンドとポルトガル・インディーは『非英語圏の内省的インディー』という同じ位置に置ける。実際、カピタォン・ファウストのメンバーは日本のインディー・シーン(cero、Suchmos)にインタビューで言及したことがある。夏フェスの Vodafone Paredes de Coura(ポルト郊外)は日本の Fuji Rock と規模感が似ており、両者を比較する記事がニャック・ハイゴアイメディアで書かれることがある。
豆知識
カピタォン・ファウストのバンド名はF・W・ムルナウの1926年の映画『ファウスト』の主人公キャプテン・ファウストに由来し、ゲーテのオリジナルより映画的なメランコリーを意識した命名だ。彼らはリスボンのSagres地区に共同スタジオを持ち、そこでポルトガル・インディーの若手作家(Bispo、Best Youth)を録音・プロデュースする活動もしている——次世代のシーンのハブ機能を担っている。
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Linda Martiniのバンド名は、David Lynch『Wild at Heart』(1990)の登場人物Lynda Danaに由来する。ポルトガル・インディーの決定的なプラットフォームはSpotifyの月間視聴回数ではなく、リスボンの Musicbox、ポルトの Hard Club、そして毎年8月の Vodafone Paredes de Coura フェスの3か所で、ここでの受け入れ度が業界的なステータス指標になっている。
影響・派生で結ばれたジャンル
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感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル
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