オンキョー(音響)
1990年代末東京で興った、即興演奏と微小・無音を中軸に置く実験音楽の潮流。
どんな音か
音圧のほぼない『静寂に近い』領域で音を鳴らす。中村としまるのノーインプット・ミキシングボード(外部入力なしに、ミキサーの回路雑音を増幅・変調させる技法)はホワイトノイズのようでいて、極めて微細な周波数が蠢く。杉本拓のギター、大友良英のチェロは通常の『音量』では鳴らされず、弓と弦が擦れる『接触音』に近い。Sachiko M のシンセは音というより『信号の可視化』を聴覚化したような質感。
生まれた背景
1998年前後、東京の実験音楽シーン(渋谷の小さなライブハウス)で、演奏者たちが意図的に『無音』『微音』を中心に据える即興演奏を始めた。これは Merzbow等の『音量による暴力』へのアンチテーゼでもあり、また John Cage の『4分33秒』以後の現代音楽の系譜でもあった。『音響』という言葉(『音響芸術』『音響環境』の『音響』)から、このムーヴメント名が付けられた。
聴きどころ
『最初は『何も聴こえない』と感じるが、注意深く耳を澄ますと、極微細な周波数帯域の『蠢き』が感知できる瞬間を待つこと』。また演奏者の『沈黙』と『音』の配置の美学に注目。
発展
中村としまる「No-Input Mixing Board」、杉本拓のギター極小奏法、Off Siteでの月例コンサート、レーベル「improvised music from japan」「erstwhile records」を中心に発展した。海外でのフェスティヴァル招聘と国際交流が活発化した。
出来事
- 1998: 中村としまる、ノーインプット・ミキシング・ボード奏法
- 2000: Off Site開設、定期公演開始
- 2003: コンピレーション「Cathnor」、国際的拡散
- 2007: ベルリン・リダクショニズムとの国際交流活発化
派生・影響
アクースマティック音楽、サウンドアート、ベルリン・リダクショニズム、現代の静寂志向即興音楽全般に影響を残している。
音楽的特徴
楽器ノーインプット・ミキサー、ギター、ハーモニカ、楽器の極小奏法
リズム微小ダイナミクス、無音、即興
代表アーティスト
- 大友良英
- Sachiko M
- 中村としまる
- 杉本拓
代表曲
Sine Wave Solo — Sachiko M (2000)
ENSEMBLES — 大友良英 (2008)
No-Input Mixing Board — 中村としまる (2000)
Egrets (with Otomo Yoshihide) — 中村としまる (2002)
Italia — 杉本拓 (2003)
Foldings — 中村としまる (2018)
日本との関係
初めて聴くなら
『No-Input Mixing Board — 中村としまる』で、『無音状態での音聴き』の感覚をつかんでから、『Sine Wave Solo — Sachiko M』でシンセの『理論的な純粋性』を体験。
豆知識
『オンキョー』の参加者たちの多くは、同時に美術や映像の領域にも関わっており、『音楽』の枠を超えた『音響美学』として意識されていた。つまり『音だけで成立するジャンル』ではなく、『視覚的/空間的な要素と不可分』という特性を持つ。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ポップ秋葉系/アキバポップ
- ポップ同人音楽
- 古典ビジュアルノベル音楽
- ロック・メタル日本のマスロック
- ポップ東方アレンジ音楽
- ポップ電波ソング
- ポップ渋谷系
- ポップボーカロイド
