エレクトロニック

グリッチ

Glitch

ドイツ / 西ヨーロッパ · 1994年〜

1990年代後半、デジタルエラーやサンプル破壊を音楽素材として用いる電子音楽。

どんな音か

グリッチは、デジタル機器のエラー、クリック、音飛び、破損したサンプルを音楽素材にする電子音楽。プツッ、ザラッ、カチッという小さなノイズがリズムになり、滑らかなシンセの代わりに壊れたデータの断面が聴こえる。OvalはCDの読み取りエラーのような粒を音楽化し、池田亮司は極端に精密な信号音で空間を切る。

生まれた背景

1990年代後半、ドイツやオーストリア、日本電子音楽シーンで、デジタルの失敗を美学として扱う動きが強まった。コンピュータ制作が普及し、ノイズを消すのではなく、むしろ前面に出す発想が生まれた。Clicks & Cutsや音響派、ラップトップ演奏とも近い。

聴きどころ

音の美しさより、傷の形を聴く。短いクリックが拍を作るのか、ただの破片として浮くのか、ノイズがいつ音程を持つのかに注目したい。音量差が大きい作品もあるので、小さな音を追える環境で聴くと細部が見える。

発展

Raster-Noton一派は更にサウンドアート/インスタレーション分野へ拡張、Fenneszはアンビエント側に発展。

出来事

  • 1995: Oval『94diskont』 / 2000: Cascone論文 / 2001: Fennesz『Endless Summer』

派生・影響

Microsound、Lowercase、IDM、Sound Art。

音楽的特徴

楽器DAW、Max/MSP、CDスキッピング、デジタルノイズ

リズムテンポ可変、デジタルエラーをリズム化

代表アーティスト

  • Ovalドイツ · 1991年〜
  • Fenneszオーストリア · 1995年〜
  • 池田亮司日本 · 1995年〜
  • Alva Notoドイツ · 1996年〜
  • Poleドイツ · 1996年〜

代表曲

日本との関係

日本では池田亮司、Sachiko M、中村としまるなどの音響的な実験と近い文脈で聴かれてきた。2000年前後の電子音楽誌、美術館、ラップトップ・ライブの場で関心が高まり、ポップスとは別の精密な聴取文化を作った。

初めて聴くなら

初期の感覚を知るなら「Do While — Oval (1995)」。ノイズとメロディの境目なら「Endless Summer — Fennesz (2001)」。データそのものを聴く感覚に近づくなら「Dataplex — 池田亮司 (2005)」がよい。

豆知識

グリッチは本来、機械や信号の一時的な不具合を指す言葉。音楽では、失敗として捨てられるはずの音を、時代の質感として聴き直す態度が重要になった。CDの傷、バッファの乱れ、データ圧縮のざらつきまで素材になるため、デジタル機器が普及した時代の民芸のようにも聴ける。

影響・派生で結ばれたジャンル

グリッチを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

グリッチ の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ドイツ · 1994年前後 (±25年)

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