エレクトロニック

ダブ・テクノ

Dub Techno

ベルリン / ドイツ / 西ヨーロッパ · 1993年〜

1990年代ベルリン発、Dubのリバーブ/ディレイ感覚をデトロイト・テクノに導入したサブジャンル。

どんな音か

ダブ・テクノの音は「引き算」によって作られている。キックドラムは深く鈍く、4つ打ちで等間隔に沈む。そこに大量のリヴァーブとディレイがかかった断片的な音(シンセの刻み、金属的なパーカッション、倍音の尾を引く音)が、水面の波紋のように広がりながら消える。Basic Channelのトラックでは、個々の音素が前景と後景の間を漂い、「旋律」より「空間の密度」が変化していく感覚が支配的だ。BPMは130前後で速くもなく遅くもなく、トランスよりも内省的で、ミニマル・テクノよりも湿度が高い。Poleの『Stadt』はアナログのレコードのノイズをリズムに取り込み、傷や埃の音が「楽器」として機能している。

生まれた背景

ダブ・テクノは1990年代初頭のベルリンで、Basic Channel( マーク・エルネストゥスとモーリッツ・フォン・オズワルド)が開始したレーベル活動から生まれた。ジャマイカ音楽のダブ(1970年代にキング・タビーやリー・ペリーが確立したリヴァーブ/ディレイ処理によるインストゥルメンタル化)と、デトロイト・テクノの工業的な4つ打ちを意図的に融合させたのが出発点だ。ベルリンが東西統一後の1990年代に経験した「廃墟の中の新しい空間」という文化状況と、その抽象的な音像が重なる部分もある。Poleは壊れたフィルターを楽器として使い、ダブ・テクノの美学をより壊れた方向に拡張した。

聴きどころ

Basic Channelの『Phylyps Trak』(1993年)ではキックドラムの「余韻」に注目する。音が鳴った後にどれだけの残響が残り、それが次の音と重なっていくかを追うと、ダブ処理の仕組みが体感できる。Poleの『Stadt』(1998年)ではレコードのスクラッチノイズ(バチッ、プツッという音)がリズムの一部として機能しており、それが「ミスではなく設計」であることを認識してから聴くと曲の見え方が変わる。

発展

Chain Reaction、Echocord、Deepchordなどのレーベルがシーン化。2010年代にAmbient Technoとも結合した。

出来事

  • 1993: Basic Channel『Phylyps Trak』 / 1995: Maurizio『M-Series』 / 1998: Pole『1』

派生・影響

Ambient Techno、Minimal Techno、Berlin School。

音楽的特徴

楽器TR-909、シンセ、テープエコー、スプリングリバーブ

リズム120-130 BPM、長いディレイ、深いリバーブ

代表アーティスト

  • Basic Channelドイツ · 1993年〜
  • Poleドイツ · 1996年〜

代表曲

日本との関係

東京のクラブシーン(特に2000年代のairやWOMBなど)でダブ・テクノミニマル・テクノは定期的にプレイされていた。日本人プロデューサーのなかにもダブ・テクノ的な美学を取り込んだ人はいるが、Basic Channelほどの評価を受けた存在はいない。ワールドミュージックとしてではなくクラブ・ミュージックのコンテキストで消費されてきた。

初めて聴くなら

Basic Channelの『Phylyps Trak』(1993年)から始める。音量を上げて聴くことが必須で、低音の処理がスピーカーのサイズによって大きく変わる。夜のクラブを想定した音楽だが、ヘッドフォンで部屋を暗くして聴いても空間的な没入感は得られる。Poleの『Stadt』(1998年)へ進むと、同系統の美学がより実験的・個人的なスケールで現れる。

豆知識

Basic Channelはレーベル名と同時にアーティスト名でもあり、マーク・エルネストゥスはBulance(バルランス)、モーリッツ・フォン・オズワルドはVault(ヴォールト)名義でも活動した。彼らのレーベル網(Chain Reaction, Rhythm & Soundなど)はダブ・テクノの定番レーベルとなり、2000年代まで「スタイルシートなしの白黒レーベル・デザイン」が美学的な統一感として機能していた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1970年代1980年代1990年代ダブ・テクノダブ・テクノダブダブテクノテクノ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ダブ・テクノを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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ドイツ · 1993年前後 (±25年)

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