エレクトロニック

ガバー

Gabber

ロッテルダム / オランダ / 西ヨーロッパ · 1992年〜

別名: Hardcore Techno

1990年代初頭オランダ・ロッテルダムで成立した、極端に速く歪んだキックを特徴とするハードコア・テクノ。

どんな音か

想像するより速い。210〜250BPMの世界で、キックは腹に直撃し、歪んだ角ばった音がずっと続く。シンセは高周波のピコピコした騒々しさで、時々人間の声が叫んだりラップしたりするが、それもほぼ打楽器的。曲の構造も短く、3分で完結し、ほぼ同じパターンが繰り返される。ボーカルは感情を伝えるより、もう一つの音色として機能している。クラブで体が揺さぶられることを前提に作られていて、ヘッドフォンで聴くと耳が疲れる程度に圧縮度が高い。

生まれた背景

1992年、オランダ・ロッテルダムのハードコア・テクノ・シーンが急速に加速し、キックをデジタルで飽和状態まで歪ませる実験が始まった。通常のハウスは120BPM程度だが、ハードコア・テクノはこれを180BPMまで上げた。さらにDJ Paul Elstakらが「歪みをもっと加える」「テンポをもっと上げる」と競い合う中で、ガバーが誕生した。1995年前後、Rotterdam Terror Corpsなどのアーティスト集団が、ガバーを明確な一派として認識させ、商業的にも成功させた。

聴きどころ

キックのディテイル。一見同じように聞こえる歪みの中に、圧縮、飽和、フィードバック、シンセ的な周波数特性が混在している。シンセのピッチ変化。ボーカルやサンプルが本来のピッチから何度も上下する。曲全体の「短さ」と「反復」がもたらす催眠的・トランス的な効果。もう1つ聴くと、前の曲との違いが見えてくる。

発展

1996年以降Happy Hardcore派生やHardstyleへの分化が進み、2000年代にはMillennium Hardcore/Frenchcoreへと変容した。

出来事

  • 1992: Rotterdam Records設立 / 1995: Thunderdome全盛期 / 1996: DJ Paul Elstak『Rainbow in the Sky』

派生・影響

Happy Hardcore、Hardstyle、Frenchcore、Speedcore。

音楽的特徴

楽器TR-909、ディストーション、サンプラー

リズム180-220 BPM、歪んだキック、Hooverリード

代表アーティスト

  • DJ Paul Elstakオランダ · 1989年〜
  • Paul Elstakオランダ · 1990年〜
  • Neophyteオランダ · 1992年〜
  • Rotterdam Terror Corpsオランダ · 1993年〜

代表曲

日本との関係

日本ではクラブシーンの一部(特に渋谷・六本木の90年代後半ハードコア・イベント)で紹介されたが、DJ文化そのものが限定的だった。テクノハウスと比べて、ガバーは「激しすぎて踊りづらい」「曲が短い」という理由から、主流にはならなかった。しかし2010年代のボーカロイド産業やハードコア系歌い手の制作手法に、キック音とボーカルの飽和度という点で影響を与えた可能性がある。

初めて聴くなら

クラブ環境やヘッドフォンで踊りながら:Neophyteの「Nin」(1995)。3分で完結し、ガバーの基本構造が最も分かりやすい。やや長めなら「Braincracking」(1996)で、テンポと歪みの組み合わせの変化が追いやすい。Rotterdam Terror Corpsの「We Want More」は当時のガバー・アンセムで、ジャンルの社会的インパクトを感じられる。

豆知識

ガバーは打楽器のパーカッションに例えられることが多く、メロディも歌詞も最小限。クラブ音響システムの大型ウーファーで低音を体に直接伝えることが前提で、小さなスピーカーで聴くと面白さが半減する。オランダ・ロッテルダムはポルト都市で、1980年代から先進的な音響技術インフラがあり、そこがハードコア・ハウスの発展地となった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ガバーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

オランダ · 1992年前後 (±25年)

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