ビッグ・ルーム・ハウス
2010年代前半にメインストリームEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の中核を担った、巨大フェスティバル向きの4つ打ちダンス音楽。
どんな音か
四つ打ちのキックドラムが120〜130BPMで絶え間なく鳴り続ける。ビルドアップと呼ばれる助走区間では、リバーブを深くかけたシンセが音圧を上げながら音程を変え、テンションを極限まで高める。ドロップ(解放点)ではキックとシンセベースが同時に炸裂し、会場の空気が一瞬で変わる。主旋律はほとんどの場合シンセリードが担い、8〜16小節で一回りするシンプルな旋律が何度も繰り返される。歌がある場合も、ボーカルは一つのフックだけで成立する短い単位だ。音の構造は「引く」と「出す」の繰り返しに徹底的に最適化されており、フェスティバルのメインステージで5万人を同じ瞬間に動かすことを設計の起点としている。
生まれた背景
2010年前後のオランダ、アムステルダムを中心とするEDMシーンから生まれた。Hardwellは2012〜2013年頃に「Spaceman」「Apollo」「Mammoth」を立て続けにリリースし、スタイルを確立した。Martin Garrixはその延長線上で2013年に「Animals」をリリース、17歳でのチャート1位という話題とともにビッグ・ルーム・ハウスをグローバルなメインストリームに押し上げた。Tomorrowland(ベルギー)やUltra Music Festival(マイアミ)といった大型フェスが、このサウンドの完成形を見せる舞台として機能した。2015年頃からは「トロピカルハウス」や「フューチャーベース」に聴衆が分散し、純粋なビッグ・ルーム・ハウスの最盛期は2013〜2015年頃に集中している。
聴きどころ
Martin Garrixの「Animals」(2013年)でビルドアップとドロップの構造を一度確認したら、次に「ドロップが来る直前の無音(あるいはほぼ無音)の1〜2拍」に注目してほしい。この「溜め」の長さと深さが、その後の解放の大きさを直接決定する。ドロップ後のキックがどれほどの音圧で届くかは、録音よりも実際の会場で体験すると全く違う次元に入る。音楽的な複雑さを求めて聴くのではなく、身体的な「落差」として受け取ると、このジャンルの設計思想が理解しやすい。
発展
2013年Martin Garrix『Animals』が世界的ヒット、Big Room時代の到来を示した。2016年以降は Future Bass や Tropical House に主流の座を譲った。
出来事
- 2010: Swedish House Mafia『One』 / 2013: Martin Garrix『Animals』 / 2014: Hardwell『Dare You』
派生・影響
Progressive House、Electro House。
音楽的特徴
楽器DAW、リードシンセ、TR-909、サブベース
リズム128 BPM、4つ打ち、巨大ドロップ
代表アーティスト
- Hardwell
- Martin Garrix
代表曲
- Spaceman — Hardwell (2012)
- Animals — Martin Garrix (2013)
- Apollo — Hardwell (2013)
- In the Name of Love — Martin Garrix (2016)
Mammoth — Hardwell (2013)
日本との関係
初めて聴くなら
Martin Garrixの「Animals」(2013年)は最初に聴く一曲として最も典型的。できれば大音量で聴いてほしい——イヤホンではなく、スピーカーか音量を上げたヘッドフォンで低音の物理的な圧力を体感する方が本質に近い。Hardwellの「Spaceman」(2012年)はよりメランコリックなシンセ旋律を持ち、ビッグ・ルーム・ハウスの感情的な側面がよく出ている。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックロウスタイル
- エレクトロニックフューチャー・ハウス
- エレクトロニックハードスタイル
- エレクトロニックアップリフティング・トランス
- エレクトロニックガバー
