カルナーティック古典
南インドの古典音楽。クリティと呼ばれる作曲作品の演奏とラーガに基づく即興を伴う。
どんな音か
生まれた背景
インド古典音楽は13〜14世紀以降、北のヒンドゥスターニーと南のカルナーティックに枝分かれし、16〜17世紀には明確に二つの伝統へ分かれた。北がペルシア・イスラム文化を吸収したのに対し、南は保守的なラーガ体系と神への讃歌を守り続けた。中心地はタミル・ナードゥのタンジャーヴール地方。なかでも18世紀後半〜19世紀前半に活躍した「カルナーティック三大作曲家」(ティヤーガラージャ、ムットゥスワーミ・ディークシタル、シャーマ・シャーストリー)が書いた数千曲のクリティが、今も演奏会の中心レパートリーをなす。20世紀にはM. S. スッブラクシュミ(国連やカーネギーホールでの公演で世界に知られた歌手)がこの音楽を国外へ広め、マンドリン奏者U. スリーニヴァースは西洋楽器を古典の伝統に持ち込んだ。現代ではT. M. クリシュナが演奏の場や社会的慣習を問い直す存在として知られる。毎年12〜1月、タミル暦のマールガリ月にチェンナイで開かれる「マドラス・ミュージック・シーズン」は、ひと月に数百もの公演が集まる世界的な祭典だ。
聴きどころ
曲はまず「アーラーパナ」(冒頭のフリー・リズム即興、5〜30分)で始まり、歌い手がラーガの音域全体を探索する。続いてクリティ本体に入ると、一定のリズム周期(ターラ)が定まり、即興がその上で展開していく。ムリダンガム奏者は「タカディミ」のような口唱歌(リズムを口で唱える言葉)に合わせて太鼓を打ち、歌い手の即興リズムと掛け合う——この応酬が聴きどころだ。終盤には、ドレミに当たる音名を即興で歌うソルフェージュ(カルパナ・スワラ)が始まり、音名を一音ずつたどっていく。
音楽的特徴
楽器声、ヴィーナ、ムリダンガム、ヴァイオリン、フルート
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- シャーマ・シャーストリー
- ティヤーガラージャ
- ムッタイ・ディークシタル
- M. S. Subbulakshmi
- Lalgudi Jayaraman
- T. M. Krishna
代表曲
- Bhaja Govindam — M. S. Subbulakshmi (1980)
- Lalgudi Thillana — Lalgudi Jayaraman (1980)
- Vatapi Ganapatim — M. S. Subbulakshmi (1963)
- Endaro Mahanubhavulu — T. M. Krishna (2010)
- Krishna Nee Begane — M. S. Subbulakshmi (1958)
日本との関係
初めて聴くなら
1曲だけ聴くなら、M. S. Subbulakshmi『Bhaja Govindam』(Odeon, 1970年)。澄んだ声がゆっくりと広がっていくので、即興がどう展開するかを初めてでも追いやすく、カルナーティック歌唱の最高峰の一つだ。アルバムなら、彼女のカーネギーホール公演を収めた『At Carnegie Hall』(1977年録音)が定番。現代の演奏では、若い世代の現代的な歌唱を聴かせるT. M. Krishna のライブ盤『Live in Concert』が無理なく聴ける。映画《ライフ・オブ・パイ》の主題歌で知られる柔らかな声、Bombay Jayashri の『Listening to Life』も最初の一枚に向く。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 古典スーフィヤーナ・カラーム
- 宗教・霊歌キールタン
- 伝統・民族ラージャスターン民謡
