宗教・霊歌

キールタン

Kirtan

インド / 南アジア · 1500年〜

神名(ナーマ)を集団で繰り返し歌うヒンドゥー教の信愛音楽実践。

どんな音か

神の名前(マントラ)を繰り返し歌う、ヒンドゥー教の信愛音楽実践。歌い手が複数集まることが前提で、リード(上級者)の歌唱に初心者も加わる形式が多い。テンポは中庸から速く、リズムに乗ることで、理性的思考が休止し、感覚的・感情的に神に接近することが目的とされる。ハーモニウムやギター、タンバーリンなど、伝統的・モダン的楽器が混在する。各讃歌は短く、反復可能で、母語でなくてもコピー可能な設計になっている。

生まれた背景

15世紀から16世紀のインドで、バクティ(信愛)運動がヒンドゥー教各地で勃興した際、kirtan(集団歌唱)は信仰実践の中核になった。神の名前の反復は、ウパニシャッド哲学や瑜伽伝統にも基礎を持つ。19世紀から20世紀にかけて、西洋への移民により、krishna Das(アメリカ合衆国移民のユダヤ系の改宗者)のような人物が現代的で西洋人にもアクセスしやすいkirtanスタイルを開発した。2000年代には、瑜伽スタジオやスピリチュアル・ムーブメントの拠点でkirtanセッションが流行。

聴きどころ

マントラの反復に身体が乗り始める瞬間。一人の声から始まり、徐々に複数の声が加わり、最終的には全員の声が一つの音響体に融合する経験。Krishna Dasの声は、西洋のシンガーソングライター的な表現性を持ちながらも、マントラの本質的な繰り返しを失わない。歌詞の意味を知らなくても、その反復リズムが脳波に影響を与える可能性に注意を払うと良い。

発展

ガウディーヤ派(チャイタニヤ系統)、シーク教ガルバニ・キールタン、現代マハ・マントラ運動それぞれが独自に発達した。1965年A.C.バクティヴェーダーンタ・スワーミ・プラブパーダがニューヨークでハレ・クリシュナ運動を始め、西洋でカウンターカルチャーと結合して世界化、ジョージ・ハリスンとの結びつき(『My Sweet Lord』)で大衆化した。

出来事

  • 1510頃: チャイタニヤ・マハープラブがサンキールタン運動を始める
  • 1965: ハレ・クリシュナ運動、米国上陸
  • 1971: ジョージ・ハリスン『My Sweet Lord』ヒット
  • 2010年代: 西洋ヨガ・キールタンの世界普及

派生・影響

ハレ・クリシュナ運動由来の世界的キールタン文化、ヨガ・ミュージック、クリシュナ・ダース、ジャイ・ウッタル、デーヴァ・プレマールら西洋人キールタン歌手による『ヨガ・キールタン』ジャンル。

音楽的特徴

楽器ハルモニウム、ムリダンガ、タブラ、カルタル、シンバル、声

リズムコール&レスポンス、加速ループ、神名連祷、ターラ循環

代表アーティスト

  • Krishna Dasアメリカ合衆国 · 1996年〜

代表曲

日本との関係

1990年代後半から2000年代に、ヨガ・瞑想ブームとともに、日本でもkirtanが紹介された。ただし、多くは『リラックス音楽』『ヒーリング』という枠組みで消費され、本来の信仰実践としての側面は理解されていない。

初めて聴くなら

Krishna Dasの『Hare Krishna Maha Mantra』。短く、メロディが分かりやすく、英語での説明もある。続けて『Gopala』で、異なるマントラとリズムを経験する。リビングでリラックス時間に聴くことから始められるが、できれば瞑想や静かな思考の時間に聴くほうが、その効果を感じやすい。

豆知識

キリスト教では『祈りの繰り返し』(ロザリオなど)が珠数や数字で数えられるのに対し、kirtanのマントラ反復は『108回』という数字が聖なるものとされる(ウパニシャッド、チャクラ体系、仏教等でも108は重要)。Krishna Dasは1970年代にインドに赴き、ラム・ダス(LSD研究者で後に瑜伽家になった西洋人)に師事し、西洋的自我を捨ててmahamantraに没入する経験をした。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1200年代1300年代1500年代キールタンキールタンバジャンバジャンカッワーリーカッワーリーグルバーニ・キールタングルバーニ・キールタン凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
キールタンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

インド · 1500年前後 (±25年)

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