ヴァルナム
カルナータカ音楽の教則的・舞踊的曲形式。
どんな音か
ヴァルナムは演奏家がコンサートや舞踊の冒頭に配置する構造的な練習曲であり、かつ完全な音楽作品でもある。「プールヴァーンガ(前半)」と「ウッタラーンガ(後半)」に分かれ、前半は歌詞とスワラ(音名)を交互に歌い、後半はより速くなって技巧的なスワラのパッセージが展開する。速度が段階的に上がるため、演奏家の体が音楽に乗っていく過程を音で聴けるような感覚がある。ムリダンガムのリズムも曲の進行に合わせて密度が高まり、終盤では声と太鼓が競争するような緊張感が生まれる。舞踊(バラタナーティヤム)では開幕演目として位置づけられており、踊り手のウォーミングアップという意味合いも持つ。
生まれた背景
聴きどころ
前半の歌詞とスワラの交替に注目する。スワラの部分は「サ・リ・ガ・マ・パ・ダ・ニ」の7音をさまざまな組み合わせで歌い上げるが、これが旋律として聴こえるか音名の羅列に聴こえるかは習熟度によって変わってくる。速度が上がる後半でヴォーカルの声の粒がどれだけ均一に保たれているかも、演奏家の技量が端的に現れる。『Viriboni Varnam』(M.バーラムラリクリシュナ)はバイラヴィー・ラーガを使った人気曲で、このラーガが持つ哀愁と親密さを感じ取ることができる。
発展
20世紀には音楽教育の標準カリキュラムに組み込まれ、すべての学習者が必修として学ぶ。バーラタナーティヤム舞踊の長尺曲としても重要で、踊り手の技量を示すパダ・ヴァルナムが特に著名。
出来事
- 18世紀: アディヤッパッヤによる体系化。
- 19世紀: タンジャヴール・クァルテットの作品群。
- 1930年: ルクミニ・デーヴィー・アルンダーレが舞踊復興。
- 1981年: 全インド音楽会議のヴァルナム規範化。
- 2010年代: 学校教育への普及。
派生・影響
カルナータカ古典学習の入口、舞踊曲としての発展、現代のフュージョン作品の素材として用いられる。
音楽的特徴
楽器声、ヴィーナ、ヴァイオリン、ムリダンガム、ナットゥヴァナル(舞踊指揮)
リズムターラの厳格な構成、ラーガの完全な提示、舞踊振付の基盤
代表曲
Viriboni Varnam — M.バーラムラリクリシュナ (1990)
日本との関係
初めて聴くなら
M.バーラムラリクリシュナの『Viriboni Varnam』(1990年)から聴き始め、バイラヴィー・ラーガの音階的な色合いに慣れてから後半のスワラの加速を楽しむとよい。まず最初の数分だけ繰り返し聴いてテンポ感を体に入れてから、通しで聴くという順番がわかりやすい。
