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宗教・霊歌

カッワーリー

Qawwali

パキスタン / 南アジア · 1300年〜

南アジアのスーフィー的礼拝歌。長尺で恍惚へ高まる構成が特徴。

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ひとことで言うと南アジアのスーフィー的礼拝歌。長尺で恍惚へ高まる構成が特徴。

まずはこの曲からSabri BrothersBhar Do Jholi Meri ▶ YouTube

代表的な人Sabri Brothers

どんな音か

カッワーリーカッワーリー)は、南アジア(パキスタン・北インド)のスーフィー(イスラム神秘主義)信者が、聖者廟(ダルガー)で集団で歌う宗教歌だ。演奏は、ハーモニウム(ふいご式の手風琴)とタブラ(2個1組の手太鼓)が土台をつくり、通例6-10人前後の男性合唱が手拍子で拍を刻む。その上でリード歌手が即興で旋律を長く伸ばし、節回しに飾りを加えていく。一篇は10-40分の長尺で、後半へ向けてテンポと熱量が増し、歌い手も聴き手も音楽に没入していく。最終的にはトランスに近い忘我の境地——スーフィズムで「ハール」と呼ばれる状態——へと運ばれていくことを目指す。詩はウルドゥー語、パンジャブ語、ペルシア語が混ざり、「恋人」「酒」「酔い」といった世俗の語をそのまま神への陶酔として歌い、人間への愛と神への愛の境界をあえてぼかす。聴きどころは、この「恋人=神」「酒=神への陶酔」という二重性で、それを知って聴くと印象が一変する。

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

カハルワ · 100 BPM

聴きどころ

曲の冒頭3-5分は静かなハーモニウムの導入とリード歌手の探り合いで、まだ拍がはっきりしない。この部分を「Alap」(アーラープ、導入部)と呼ぶ。タブラが入ってから手拍子が加わり、リード歌手と合唱の掛け合いが始まる。ここで注目すべきは Nusrat Fateh Ali Khan の「Sargam」(サルガム、音名で旋律を歌うこと)で、彼はサビの直前に「Sa Re Ga Ma Pa Dha Ni Sa」(インド音階の音名)を高速で歌い、これがカッワーリー史上の彼の商標となった。『Mustt Mustt』(1990)は Massive Attack リミックスで有名だが、原曲の Nusrat のサルガムの部分を聴くと、彼の旋律的な想像力の異常な広さがわかる。Sabri Brothers『Tajdar-e-Haram』(1980)は伝統的なカッワーリー構造の完成形で、40分の原曲は Aslam のポップ再解釈(2015 Coke Studio)とは全く別の音楽体験になる。

初めて聴くなら

短い導入は表題曲 Nusrat Fateh Ali Khan『Mustt Mustt』(Real World、1990)。Massive Attack によるリミックスでイギリスのクラブヒットになった一曲だ。全体像を味わうなら NFAK『Allah Hoo Allah Hoo』の40分完全版。静かな導入部(アーラープ)から熱を帯びた頂点へ向かう構造の典型だ。より儀礼に近い響きを聴きたいなら、伝統スタイルの代表格 Sabri Brothers『Tajdar-e-Haram』(1980)と『Bhar Do Jholi Meri』(1975)がよい。コークスタジオ・パキスタン 経由のポップ再解釈を聴きたいなら Atif Aslam『Tajdar-e-Haram』(2015 Season 8)。深夜、部屋を暗くして、詩の意味は分からなくても、40分の音の流れに身を任せるのが正しい聴き方だ。

代表アーティスト

  • Sabri Brothersパキスタン · 1956年〜2011
  • Nusrat Fateh Ali Khanパキスタン · 1965年〜1997
  • Abida Parveenパキスタン · 1973年〜
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  • ファリード・アヤーズ&アブ・ムハンマド (Fareed Ayaz & Abu Muhammad Qawwal)パキスタン · 1980年〜
  • Fareed Ayaz & Abu Muhammad Qawwalパキスタン · 1985年〜
  • Rahat Fateh Ali Khanパキスタン · 1985年〜
  • アムジャド・サブリーパキスタン · 1990年〜2016

代表曲

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生まれた背景

起点は13世紀デリーのスーフィー詩人アミール・フスロー(1253-1325、Amir Khusrau、Ghiyathpur生まれのペルシア系ムスリム詩人)とされる。彼はチシュティ教団(Chishti Order、パキスタン・北インドで最も影響力のあるスーフィー教団)の霊的師 Nizamuddin Auliya(1238-1325、デリー)に仕え、ペルシア・アラビア・トルコ・インドの音楽伝統を結びつけ、カッワーリーの原型を作ったとされる。

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彼はいまも「カッワーリーの父」と呼ばれる。デリーの Nizamuddin 廟は現在もカッワーリーの霊的な中心地で、毎週木曜夜に公演が続いている。歌詞面での中心的詩人は Bulleh Shah(1680-1757、パンジャブのスーフィー詩人)で、彼のパンジャブ語詩「Bulleya Ki Jaana」「Chal Bulleya」などがカッワーリー詩の中核レパートリーとなっている。1948年、Nusrat Fateh Ali Khan(NFAK、1948-1997)がパキスタン・ファイサラバードで、代々カッワーリー歌手を輩出してきた家系に生まれた。父ファテー・アリー・ハーン、叔父ムバーラク・アリー・ハーンの一座で修行し、1964年に父を亡くしてから一座に加わり、1971年に叔父の死で一座を率いるようになった。同時期にカラチの Sabri Brothers(Ghulam Farid Sabri 1930-94、Maqbool Sabri 1945-2011)が Chishti 系伝統カッワーリーの代表として国内で君臨した。彼らの1975年『Bhar Do Jholi Meri』、1980年『Tajdar-e-Haram』は現代カッワーリー・レパートリーの正典となった。決定的な国際化の瞬間は1985年、Peter Gabriel(元 Genesis)がイギリスで共同設立したWOMADフェスティバルに NFAK が招かれ、その公演がきっかけで Peter Gabriel の Real World Records と契約したことだ。1990年 Real World 発売の『Mustt Mustt』アルバムは、UK ダンス・シーンの Massive Attack にリミックスされ、カッワーリーアンビエント / Trip-Hop シーンと直接繋げた。1997年8月16日、NFAK は48歳のとき肝臓・腎臓不全でロンドンで急逝、遺体はファイサラバードに空輸され数万人が参列した。以後、甥の Rahat Fateh Ali Khan(1974-)が彼の一座を継承し、ボリウッド音楽 映画音楽(『Kabhi Alvida Naa Kehna』2006、『Om Shanti Om』2007)を通じてカッワーリーを新世代に届けた。

その後の代表曲

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日本との関係

Nusrat Fateh Ali Khan と日本の関係は、Peter Gabriel の Real World Records 経由で1990年代前半に始まった。1995年、坂本龍一が Nusrat と共演した楽曲『The Last Temple』(サントラ『Wild Palms』収録の関連曲群)が発売され、これが日本人音楽ファンへの NFAK 認知の起点となった。同年、NFAK は東京・渋谷 On Air West で公演、この録音の一部が海賊盤で流通していた。彼の1995年の映画『Dead Man Walking』サントラ(Eddie Vedder との共演)は日本でも公開され、南アジアのスーフィー音楽と英米オルタナ・ロックの接点を日本のリスナーに紹介した。1997年の急逝は日本の音楽ジャーナリズムでも大きく報じられ、追悼特集が『MUSIC MAGAZINE』などに掲載された。近年は Rahat Fateh Ali Khan の ボリウッド音楽 楽曲経由で若い世代のリスナーに届いており、YouTube の再生数では日本語コメントが目立って増えている。

豆知識

カッワーリー」の語源はアラビア語の「Qaul」(発話・宣言)で、もとは預言者ムハンマドの言葉を声に出して唱えることを指し、のちにスーフィー聖者の詩句の朗誦も指すようになった。Nusrat Fateh Ali Khan は死の直前の1997年に、インドの作曲家 A.

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R. Rahman との『Gurus of Peace』を録音した。彼のパスポートには「歌手(Singer)」ではなく「カッワール(Qawwal)」と記されていた。Peter Gabriel は自伝『Book of Genesis』でNusrat の1985年 WOMAD 公演を「私の人生で聴いた最も強烈な音楽体験」と語っている。Sabri Brothers の Ghulam Farid Sabri は1994年ハートアタックで死去、弟 Maqbool Sabri が一座を継承したが2011年米ハートフォードで急逝した。以後 Sabri 一座は Ghulam Farid の息子 Amjad Sabri(1970-2016)が継承したが、彼も2016年6月にカラチで宗派間暴力(タリバン系グループによる標的殺害)で殺害された(46歳)。

影響・派生で結ばれたジャンル

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カッワーリーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル

カッワーリーが好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。

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