セマ(メヴレヴィー旋舞)
13世紀ジャラール・アッディーン・ルーミーに由来する、メヴレヴィー教団の旋舞儀礼の音楽。
どんな音か
セマの音楽はネイ(葦の縦笛)の独奏から始まる。ネイの音は楽器というより呼吸に近く、葦が吹き込まれる息に従って鳴る。この独奏(タクシム)は即興で、旋律の方向は奏者の内側から決まる。その後ウード、ケマンチェ(擦弦楽器)、クドゥム(小太鼓)が加わり、「アイン」と呼ばれる旋律群が楽章ごとに異なる旋法(マカーム)で展開する。旋舞者はこの音楽に合わせて左足を軸に右回りに回転し続ける。音楽は旋舞者の回転速度に従うのではなく、音楽の流れが旋舞者を引き込む設計になっている。
生まれた背景
聴きどころ
クドゥシ・エルグネルによる「Mevlevi Ayin in Hicaz」では、ネイが最初に鳴り始める瞬間——ほとんど息だけの音から旋律が浮かび上がる過程——に集中してほしい。楽章が変わるたびにリズムパターンが変化し、後半になるほど拍の刻みが細かくなる。ヴォーカルが入る箇所では、アラビア語・ペルシャ語の詩句がどのように旋律化されているかが聴き取れる。
発展
オスマン宮廷との結びつきで古典音楽の最高水準のレパートリーを発展させ、ハマミザーデ・イスマイル・デデら作曲家が標準アーインを残した。1925年トルコ共和国による教団禁止後も非公式に存続、1953年以降観光・文化保存の文脈で公演が再開された。2008年ユネスコ無形文化遺産登録。
出来事
- 1273: ルーミー没、息子スルターン・ヴェレドが教団組織化
- 1925: トルコ共和国、スーフィー教団禁止令
- 1953: コンヤでのセマ公演再開
- 2008: ユネスコ無形文化遺産登録
派生・影響
トルコ古典音楽全体の発展を主導し、ネイ独奏伝統、近現代のニュー・エイジ系世界音楽(ムスタファ・オザール・テュレン、メルジャン・デデら)の素材源ともなった。
音楽的特徴
楽器ネイ、クドゥム、ラバーブ、ウード、男声合唱
リズムアーイン四楽章構成、トルコ・マカーム、複雑ウスル、旋回
代表アーティスト
- Kudsi Erguner
代表曲
Mevlevi Ayin in Hicaz — Kudsi Erguner
日本との関係
初めて聴くなら
クドゥシ・エルグネルの「Mevlevi Ayin in Hicaz」を映像付きで見ながら聴くのが最もわかりやすい。旋舞者の回転と音楽の関係が視覚的に確認でき、音楽単体では見えにくい構造が補完される。
豆知識
旋舞するデルヴィーシュ(修行者)の白い衣の裾が水平に広がるのは遠心力によるもので、正確な回転技術を要する。回転は何十分も続くことがあるが、倒れることなく続けるために訓練は何年にも及ぶ。ルーミーの詩「葦の嘆き」の最初の行「聴け、この葦の声を、どう分離の物語を語るか」は、ネイという楽器そのものを語り手として読むこともできる。
