古典

ガザル

Ghazal

インド / 南アジア · 1850年〜

別名: Indian Ghazal / Pakistani Ghazal

ペルシア・ウルドゥー詩を歌う、北インド・パキスタンの抒情歌曲。

どんな音か

ペルシア・南アジア起源の詩歌で、北インド・パキスタンの古典〜準古典歌曲として発展。BPM 70〜100。ハーモニウム、タブラ、サーランギ(擦弦楽器)が伴奏。歌は男女両方、メリスマ(節回し)を多用し、対句(2行ずつの韻文)を1つずつ歌い上げる。歌詞はウルドゥー語、ヒンディー語、ペルシア語、テーマは恋愛、神への愛、人生の儚さ、酒。1曲のなかで同じ詩のフレーズを少しずつ装飾を変えて繰り返す。歌い手は「ターン」(声の即興フレーズ)で技巧を競う。

生まれた背景

7〜8世紀のアラビア詩から発展した「ガザル」が、ペルシア(ハーフィズ、ルーミーら詩人が代表)を経て14世紀以降に南アジアへ伝わった。当初は宮廷の高雅な詩歌だったが、19世紀末以降の都市部で民衆の歌謡として広まった。20世紀のメフディ・ハッサン(パキスタン)、ジャグジット・シン(インド)、ガザラ・ハニフ、ファリダ・ハヌムらが世代を作った。1980〜90年代にインド映画ボリウッドの「サッド・ソング」枠でガザルの語法が定着した。

聴きどころ

対句(シェル)構造: 各2行が独立した詩として完結する詩形式。歌い手が1対句を歌うのに3〜5分かけることもある。「ラーガ」(旋法)を選ぶことから始まり、即興で詩を歌い変える。タブラの繊細な伴奏、ハーモニウムの和音的サポート、歌い手のメリスマの絡みを聴く。

発展

メヘディ・ハッサン(パキスタン)・グラーム・アリ(パキスタン)・ベーガム・アクタル・タラート・マフムード・ジャグジット・シン・パンカジ・ウダースらが歌手として国際的に活動した。ジャグジット・シンの『シャーム-エ-ガザル』はガザルを大衆音楽の地位に押し上げた。

出来事

  • 14世紀: アミール・フスローによるインド・ガザルの基礎。
  • 1869年: ミルザー・ガーリブ死去、詩集成立。
  • 1957年: メヘディ・ハッサン放送デビュー。
  • 1976年: ジャグジット・シン『The Unforgettables』。
  • 2008年: パドマ・ヴィブシャン受章(ジャグジット・シン)。

派生・影響

ボリウッド映画歌の重要な源泉となり、グザル・ナイト形式の南アジア大衆コンサート文化を生んだ。

音楽的特徴

楽器声、ハルモニウム、タブラ、サーランギー、ターンプラ

リズムケヘルワー(8拍)・ダドラ(6拍)、シェール(二行連句)の繰り返し、詩の意味を強調する装飾

代表アーティスト

  • ベーガム・アクタルインド · 1929年〜1974
  • メヘディ・ハッサンパキスタン · 1957年〜2012
  • グラーム・アリパキスタン · 1960年〜
  • ジャグジット・シンインド · 1965年〜2011

代表曲

  • Ranjish Hi Sahiメヘディ・ハッサン (1976)
  • Hoshwalon Ko Khabar Kyaジャグジット・シン (1999)
  • Mere Humnafasベーガム・アクタル (1972)

日本との関係

1990年代以降、ジャグジット・シンが何度か来日公演を行った。日本での認知は限定的だが、インド系コミュニティ(横浜・東京)、世界音楽ファン、ヨガ・瞑想実践者の間で支持される。

初めて聴くなら

1曲だけ聴くなら、Mehdi Hassan『Ranjish Hi Sahi』(1973)。ウルドゥー・ガザルの最高峰の一つ。Jagjit Singh『Hothon Se Chhulo Tum』(1981)、Begum Akhtar『Woh Jo Hum Mein Tum Mein Qarar Tha』も定番。最近のものなら、Abida Parveen『Bullah Ki Jaana』(スーフィー寄りだが)。

豆知識

ガザルの語源はアラビア語の「ghazala(雌のガゼル、また恋人へのささやき)」とされる。ファリダ・ハヌム(パキスタン)の『Aaj Jaane Ki Zid Na Karo』(1976)は、ガザル史上最も愛された曲の一つで、半世紀後の現在も新しい歌手によってカバーされ続けている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1300年代1850年代ガザルガザルカッワーリーカッワーリートゥムリートゥムリー凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ガザルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

インド · 1850年前後 (±25年)

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