ペルシア・スーフィー音楽
イラン高原のスーフィー教団(ニーマトゥッラーヒー、カーディリー、ナクシュバンディー等)で実践される神秘主義声楽伝統。
どんな音か
ボーカルが中心で、楽器伴奏は控えめか、もしくは全くない場合もある。歌は長く、一つの音を何秒も伸ばす装飾音が豊富。リズムは自由で、祈りの感情的な流れに沿っている。メロディは旋法的で、中東音楽の特徴的な微分音(クォーター・トーン)が多く含まれる。歌詞はペルシア語で、神への愛、精神的陶酔、宇宙的一体感などをテーマにしている。スタジオ録音であっても、儀式的な背景が感じられ、時にコーラスが加わることもある。
生まれた背景
スーフィズム(イスラム神秘主義)はイスラム教成立後、数百年を経て発展した精神的運動で、ペルシア高原はその中心地の一つ。ニーマトゥッラーヒー、カーディリー、ナクシュバンディーなどの教団が形成され、各教団ごとに独自の音楽伝統が発展した。スーフィー音楽は、神との合一を目指す修行の一環として機能し、イスラム正統派からの批判を受けることもあった。しかし、20 世紀を通じてペルシア・スーフィー音楽への国際的関心が高まり、それに伴い音楽の録音・保護が進んだ。
聴きどころ
長く伸ばされた音の中の微分音。声の強弱の変化と、その精神的な意味。楽器伴奏がある場合の、ボーカルとのバランス。歌詞の内容と音楽表現の関係。儀式的背景。トランス的な雰囲気。
発展
オスマン期・サファヴィー期を経て19-20世紀の宮廷音楽家(ミルザ・アブドラ、アボルハサン・サバ、モハマド・レザ・シャジャリアン)に継承された。1979年イラン革命後、世俗音楽が制限される中でスーフィー詩への音楽的回帰が強まり、シャジャリアンらが世界に発信した。
出来事
- 13世紀: ルーミー、ペルシア語神秘主義詩の頂点
- 1979: イラン革命、世俗音楽制限とスーフィー詩重要性増大
- 1990: シャジャリアン『Bidad』、世界的注目
派生・影響
20世紀ペルシア古典音楽全体の精神的核として機能し、現代タール奏者ホセイン・アリザデ、ケイハン・カルホールらの作品にも継承される。
音楽的特徴
楽器声、タール、セタール、ネイ、ダフ、ケマンチェ
リズムアヴァーズ(自由リズム)、ペルシア・ラディーフ、即興、神秘詩
代表アーティスト
- Mohammad Reza Shajarian
- Abida Parveen
代表曲
- Yaar ko hum ne ja-ba-ja dekha — Abida Parveen
Bidad — Mohammad Reza Shajarian (1990)
日本との関係
ペルシア・スーフィー音楽が日本で知られるようになったのは、1980〜1990 年代の東洋神秘主義への関心が高まった時期。Abida Parveen や Mohammad Reza Shajarian の音楽が、ニューエイジ愛好家やスピリチュアル関心層に受け入れられた。しかし、イスラム宗教音楽としての理解はまだ限定的で、『東洋の神秘的音楽』として消費される傾向が強い。
初めて聴くなら
豆知識
Abida Parveen はパキスタン出身だが、ペルシア・スーフィー音楽の伝統を継承している。スーフィズムはアラビア、ペルシア、トルコ、パキスタンなど、イスラム世界全域で変容しながら存続しており、音楽もその変容を反映している。
