伝統・民族

カーフィー

Kafi

パンジャーブ州・シンド州 / パキスタン / 南アジア · 1700年〜

パンジャーブ・シンドのスーフィー民間歌謡。

どんな音か

カーフィーはパンジャーブとシンドのスーフィー(イスラーム神秘主義)の詩人が書いた詩をもとに歌われる。声は長く引き伸ばされ、一語の上に装飾(ガマク、ミンド)がかかる。伴奏はタブラー(北インドの太鼓)とハルモニウムが基本で、演奏自体は瞑想的な儀礼の場(ウルス——聖者の命日祭)で行われることが多い。サイン・ザフールは農村の場でシンプルな声とエコーで歌うスタイルを持ち、アビダ・パルヴィーンは都市的に洗練された演奏で知られる。どちらも「神への渇望」を声の変容で表現する。

生まれた背景

カーフィーはパンジャーブのスーフィー詩人ブッレー・シャー(1680〜1757年頃)やシャー・フセインらの詩が核になっている。スーフィーの詩は神への愛を男女の恋愛に見立てた隠喩を多用し、内容の世俗性がスーフィーでない聴衆にも届きやすかった。パキスタン独立(1947年)後も農村の儀礼文化の中で生き続け、20世紀後半にカセットと放送メディアを通じて都市部にも広まった。

聴きどころ

声がひとつの音節の上でどのくらいの時間をかけて動くかを追う。「ブッラー・キー・ジャーナー」というフレーズが繰り返されるが、そのたびに声の経路が微妙に違う。即興の即時性と、型として蓄積された装飾の慣習が混在しているのが聴きどころだ。

発展

20世紀にはアービダー・パルウィーン・ヌスラト・ファテ・アリー・ハーン・パタネー・ハーン(姉妹デュオ)らがカーフィーを国際的に紹介した。コーク・スタジオ(パキスタン)の登場でカーフィーがロック・ポップとフュージョンされ若年層に広まった。

出来事

  • 1680年: ブッレー・シャー誕生。
  • 1958年: パタネー・ハーン姉妹デュオ録音。
  • 1985年: ヌスラト・ファテ・アリー・ハーンのカーフィー録音。
  • 1995年: アービダー・パルウィーンのコンサート確立。
  • 2008年: コーク・スタジオでカーフィーのフュージョン。

派生・影響

カッワーリーと並ぶ南アジア・スーフィー音楽の双璧をなし、現代パキスタン・ポップ・ロックの精神的源泉となった。

音楽的特徴

楽器ハルモニウム、タブラ、ドーラク、エクタラ、サーランギー、声

リズムケヘルワー・ダドラ・チャール・ターラ、神秘詩の繰り返し、独唱の親密さ

代表アーティスト

  • サイン・ザフールパキスタン · 1989年〜

代表曲

日本との関係

日本ではカッワーリー(スーフィーの宗教音楽全般)の一部として語られることがあり、ヌスラット・ファテー・アリー・ハーンの名は一部の音楽ファンに知られているが、カーフィーという形式が独立して紹介される機会はほとんどない。

初めて聴くなら

アビダ・パルヴィーンの『Bullah Ki Jaana』(1995年)。ブッレー・シャーの詩をもとにしたこの曲は「私はいったい何者か」と繰り返し問いかける内容で、声の上下動と問いかけが溶け合う。夜、照明を落として聴く。

豆知識

「ブッラー・キー・ジャーナー」(ブッラー、俺に何が分かる?)という詩の一節は、20世紀末から21世紀にかけてパキスタン・インドのポップ音楽にサンプリングされ、若者の間で「クールなフレーズ」として再発見された。ロックバンドのRabbがポップ・アレンジしたバージョンが特に広まっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1300年代1600年代1700年代カーフィーカーフィーカッワーリーカッワーリーシンド民謡シンド民謡凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
カーフィーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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