ヘックスディー
2020年前後のネット文化で広がった、既存のポップ曲や電子音を極端に遅く、低く、ぼやけた質感へ変える編集スタイル。
どんな音か
Hexdは、曲を低いピッチへ沈め、リバーブを深くかけ、輪郭を溶かしていく編集感覚の音楽。ドラムは原曲より鈍く、声は人間というより遠くの記憶のように伸びる。きらびやかなポップ曲も、再生速度を落としたテープのように重くなり、シンセの残響が画面の奥へにじむ。Sweet Tripやyameii onlineのような、もともと電子的で浮遊感のある音を入口にすると、単なるスロー再生ではなく、ネット上で共有される「ぼやけた強度」の作り方が見えやすい。
生まれた背景
2020年前後、TikTokやYouTube、SoundCloud周辺で、曲を極端にピッチダウンしてリバーブをかける編集が流行した。ヴェイパーウェイヴの遅延感、slowed and reverb文化、アニメ的なネット・ポップの感触が重なった場所にある。クラブのジャンルというより、短い動画、ループ再生、夜中のヘッドホン視聴から育ったスタイルで、曲名より編集名やムードで共有されることも多い。
聴きどころ
まず声の変化を聴くと分かりやすい。高い声が低く落ちることで、歌詞の意味より母音の尾が前に出る。次にスネアやハイハットの輪郭を追うと、原曲のテンポ感がどれだけ崩されているかが分かる。低音が膨らみすぎている録音では、ベースの音程より、部屋の空気が振動するような圧を聴くとよい。
音楽的特徴
楽器DAW、リバーブ・プラグイン
リズム極端なスロウダウン、深いリバーブ
代表アーティスト
- Sweet Trip
- yameii online
代表曲
- Velocity:Design:Comfort — Sweet Trip (2003)
Reach the Sky — yameii online (2018)
MEGA EVOLVE — yameii online (2019)
DREAM CATCHER — yameii online (2020)
Tekka — yameii online (2020)
日本との関係
初めて聴くなら
最初は「MEGA EVOLVE — yameii online (2019)」や「Tekka — yameii online (2020)」のような、声と電子音が最初から人工的な曲を聴くと入りやすい。アルバム単位で空気をつかむなら「Velocity:Design:Comfort — Sweet Trip (2003)」もよい。原曲のポップさが残る部分と、加工で沈んだ部分の差を聴き比べたい。
豆知識
Hexdは厳密な音楽理論の名前というより、ネット上のタグやムードから固まった呼び名に近い。曲そのものより、再生速度、ピッチ、リバーブ、画像の組み合わせで体験が作られるため、同じ曲でも投稿者によってかなり印象が変わる。
