Country Rock
ロックバンドがカントリーの奏法や節回しを呑み込んで生まれた、西海岸の音。当時いがみ合っていたロックとカントリーを一台に乗せて走り出した挑戦でもあった。ペダルスティールが歌うように泣き、テレキャスターが硬く鳴り、3声のハーモニーが折り重なる。
What it sounds like
カントリーのアコースティックギター・スティールギター・歌い回しに、ロックの力強いドラム(2拍目と4拍目を強く叩くバックビート)とエレキギターを組み合わせたスタイル。テンポは急ぎすぎない100〜140 BPMあたりで落ち着いている。ヴォーカルは2〜3声のハーモニーが基本で、その上に、気負わず語りかける柔らかい男性リードが乗る(代表格がジャクソン・ブラウン)。歌詞は、カントリーが好む「失恋・トラック運転手・故郷」といった題材より、ロック寄りの「旅・自由・西海岸」に寄る。録音では、アコースティックギターの乾いた響きと、歪ませないエレキギターの澄んだ音を両立させる。
How it came about
当時、ロックとカントリーは客層も政治的立場も対立しており、両者をまたぐこと自体が挑発に近かった。その壁を破った最も象徴的な転換点が、1968年のバーズ『Sweetheart of the Rodeo』である。ロックバンドがスティールギターを携え、保守的なカントリーの本場ナッシュビル(およびロサンゼルス)で本格的に録音した一枚だ。先行する試みがなかったわけではない——同年にはグラム・パーソンズが在籍したインターナショナル・サブマリン・バンドの『Safe at Home』もある。ただ、商業的な果実を掴んだのは、むしろ後発のイーグルスたちだった。グラム・パーソンズはバーズを離れ、その直後(1968年末〜69年)にフライング・ブリトー・ブラザーズを結成する。彼はこの構想を「コズミック・アメリカン・ミュージック」と名付け、ジャンルの進むべき方向性を示した。数年後にはイーグルスが完璧なコーラスで全米のラジオを制し、ロサンゼルスのローレル・キャニオン一帯がシーンの中心になる。声そのものが武器のリンダ・ロンシュタット、シンガーソングライターのジャクソン・ブラウン、リトル・フィート——いずれもこの界隈から世に出ていった。
What to listen for
聴きどころはヴォーカル・ハーモニーの密度だ。イーグルスの3声、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(CSN&Y)の3〜4声——それぞれの声がどう絡むかに耳を傾けると、同じ「3声」でもバンドごとに響きがまるで違うことに気づく。スティールギター(横置きで金属棒を弦に当てて滑らせる楽器)の「泣き」と、歪ませず硬質に弾かれる(クリーンでカチッとした)テレキャスターとの対比も見逃せない。歌詞には、ハイウェイ、渓谷(キャニオン)、そして西海岸特有の気だるさと内省的なまなざしがにじむ。
If you only hear one thing
1曲だけなら、Eagles『Take It Easy』(1972)。3分のなかに「カントリー・ロックとは」がほぼ全部入っている。アルバムなら、Jackson Browne『Late for the Sky』(1974)。日本でも、ほぼ同時期に西海岸サウンドを日本語ロックへ消化する試みがあった。はっぴいえんど『風街ろまん』(1971)がその一例だ。
Trivia
グラム・パーソンズは1973年に26歳で薬物過剰摂取で死去した。生前、彼が愛したジョシュア・ツリーの砂漠で火葬してほしいと語っていた(この一帯は当時は国定記念物、現在は国立公園)。遺体はルイジアナへ移送されようとしていたが、友人のフィル・カウフマンはそれをロサンゼルス国際空港から盗み出した。そしてジョシュア・ツリーの砂漠で、自ら火葬を試みた。遺体には法的な財産価値がないため死体盗難は問えず、カウフマンは棺を損壊した罪で数百ドル程度の罰金を科されるにとどまった。この事件は2003年の映画『Grand Theft Parsons』になっている。
Hear the rhythm
The signature rhythm pattern of this genre. Press play to loop it, and follow the score below to see which beat is sounding.
Notable artists
- Gram Parsons
- The Byrds
- Eagles
Notable tracks
- Mr. Tambourine Man — The Byrds (1965)
- Sin City — Gram Parsons (1969)
- Take It Easy — Eagles (1972)
- Tequila Sunrise — Eagles (1973)
- Hotel California — Eagles (1976)
