ケルト・ロック
1970年代Horslipsが確立した、アイリッシュ・トラッドとロックの融合形式。
どんな音か
生まれた背景
1970年結成のダブリンのHorslipsが決定的な起点で、1972年の『Happy to Meet, Sorry to Part』でジグをロック編成に移植する型を完成させ、1973年『The Táin』では古アイルランド神話『クアルンゲの牛捕り(Táin Bó Cúailnge)』を丸ごとコンセプト・アルバム化した。1976年の『The Book of Invasions』もアイルランド神話を主題にした続編で、この二枚が「ロックで神話を語る」という発明そのものだった。同時期にThin Lizzyが『Whiskey in the Jar』を、後にClannadが『Theme from Harry's Game』(1982)を、Enyaが『Watermark』(1988)を投入し、ケルト・ロックとアンビエント・ケルトが分岐した。
聴きどころ
発展
スコットランドからは1973年結成のRunrig(ゲール語ロックの代表格)が加わり、英国側からはスコットランド・アイルランド系のマイク・スコット率いるThe Waterboys(1983-)が『Fisherman's Blues』(1988)でこの流れの最良のポップ・アルバムを残した。1990年代以降はStockton's Wingや、遅れてSolas(米-アイルランド系)、Riverdance(1994年ショウ化)により舞台/観光産業として拡張した。
出来事
- 1970: Horslips結成
- 1973: Horslips『The Táin』
- 1982: Clannad『Theme from Harry's Game』
- 1988: The Waterboys『Fisherman's Blues』
- 1994: Riverdance初演
派生・影響
Enya、Clannad系のアンビエント・ケルト、そしてケルト・パンクへ直接影響。フィンランドのKorpiklaani、ドイツのIn Extremoなど大陸ヨーロッパのフォーク・メタルも遠い子孫。
音楽的特徴
楽器エレキギター、ベース、ドラム、フィドル、ティン・ホイッスル、マンドリン、キーボード、時にイリアン・パイプス
リズムロックの4/4にジグの6/8、リールの快速4/4、スロー・エア由来のパワー・バラッド3拍子を混ぜる
代表アーティスト
- Clannad
- Horslips
- Runrig
- The Waterboys
代表曲・古典
Dearg Doom — Horslips (1973)
The Táin — Horslips (1973)
Trouble (With a Capital T) — Horslips (1977)
Loch Lomond — Runrig (1979)
The Whole of the Moon — The Waterboys (1985)
Fisherman's Blues — The Waterboys (1988)
An Ubhal As Àirde (The Highest Apple) — Runrig (1995)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
Horslipsのバンド名は、アイルランド神話に登場する4本足の馬「馬蹄(horse hoof)」の綴りを故意に間違えた造語で、リーダーのバリー・デヴリンがピクチャー・ディスクの制作会社のスタジオで思いついたものだ。The Waterboysの『Fisherman's ブルース』のセッションは1年以上に及び、100曲以上を録音してから12曲に絞ったという逸話がある。マイク・スコットはこの時期スライゴのファーストランズ・スタジオで生活しており、W.B.イェイツの詩の朗読を毎日行っていたと語っている。Runrigはメンバー全員がスコットランド・ゲール語を第一言語とする世代の最後で、彼らの引退(2018)は事実上「ゲール語ロック時代の終焉」と評された。
