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ロック・メタル

ケルト・ロック

Celtic Rock

アイルランド / スコットランド / ケルト圏 · 1972年〜

別名: Gaelic rock

1970年代Horslipsが確立した、アイリッシュ・トラッドとロックの融合形式。

どんな音か

ケルト・ロックは、アイリッシュ/スコティッシュ・トラッドの旋律とダンス・リズムを、エレキギター/ベース/ドラムの標準ロック編成の上に乗せたスタイルを指す。ケルト・パンクが1982年以降のパンク側からの融合だとすれば、こちらは1970年代のプログレ/ハードロック側からの融合で、フィドルやパイプがギターソロと同格に扱われ、曲は5〜8分と長く、アルバム全体でアイルランド神話やケルト史をコンセプト化する傾向が強い。The Waterboysが1985年頃に打ち出した「Big Music」(壮大で開けた音)の路線もこの系譜に接続し、80年代半ば以降はより開放的でメロディックな方向へと拡張した。

生まれた背景

1970年結成のダブリンのHorslipsが決定的な起点で、1972年の『Happy to Meet, Sorry to Part』でジグをロック編成に移植する型を完成させ、1973年『The Táin』では古アイルランド神話『クアルンゲの牛捕り(Táin Bó Cúailnge)』を丸ごとコンセプト・アルバム化した。1976年の『The Book of Invasions』もアイルランド神話を主題にした続編で、この二枚が「ロックで神話を語る」という発明そのものだった。同時期にThin Lizzyが『Whiskey in the Jar』を、後にClannadが『Theme from Harry's Game』(1982)を、Enyaが『Watermark』(1988)を投入し、ケルト・ロックアンビエント・ケルトが分岐した。

聴きどころ

Horslipsの『Dearg Doom』(1973)は、シャロン・シャノン級の高速リールをディストーション・ギターとハモンド・オルガンで鳴らす原型で、6/8のジグ・ビートを4/4のロック・ドラムがサポートする独特のポリリズムが聴きどころだ。The Waterboysの『Fisherman's ブルース』(1988)は、スティーヴ・ウィッカムのフィドルとマイク・スコットの歪んだアコースティック・ギターが対等に前に出てくる編成で、ケルト・ロックがどこまで開かれた音になれるかを示した。Runrigのスコットランド・ゲール語ボーカルは、意味が分からなくても言葉の子音の響きだけで異国感を生む。

発展

スコットランドからは1973年結成のRunrig(ゲール語ロックの代表格)が加わり、英国側からはスコットランド・アイルランド系のマイク・スコット率いるThe Waterboys(1983-)が『Fisherman's Blues』(1988)でこの流れの最良のポップ・アルバムを残した。1990年代以降はStockton's Wingや、遅れてSolas(米-アイルランド系)、Riverdance(1994年ショウ化)により舞台/観光産業として拡張した。

出来事

  • 1970: Horslips結成
  • 1973: Horslips『The Táin』
  • 1982: Clannad『Theme from Harry's Game』
  • 1988: The Waterboys『Fisherman's Blues』
  • 1994: Riverdance初演

派生・影響

Enya、Clannad系のアンビエント・ケルト、そしてケルト・パンクへ直接影響。フィンランドのKorpiklaani、ドイツのIn Extremoなど大陸ヨーロッパのフォーク・メタルも遠い子孫。

音楽的特徴

楽器エレキギター、ベース、ドラム、フィドル、ティン・ホイッスル、マンドリン、キーボード、時にイリアン・パイプス

リズムロックの4/4にジグの6/8、リールの快速4/4、スロー・エア由来のパワー・バラッド3拍子を混ぜる

代表アーティスト

  • Clannadアイルランド · 1970年〜
  • Horslipsアイルランド · 1970年〜1980
  • Runrigイギリス(スコットランド) · 1973年〜2018
  • The Waterboysイギリス / アイルランド · 1983年〜

代表曲・古典

日本との関係

日本ケルト・ロック認知は、Enyaの世界的成功(『Watermark』1988)から遡る形でClannadが紹介され、そこからHorslipsとThe Waterboysに辿り着くという逆順の流入経路を辿った。1994年のリバダンス初演と、その後の日本ツアーが「ケルト・ロック的な壮大さ」を日本の一般聴衆に届けた最大の窓口だった。The Waterboysは2015年に来日公演を果たしている。国内ではケルト系のロック・バンドは少ないが、あがた森魚がケルト伝統音楽への傾倒を表明したり、宮本笑里がケルト楽曲をアレンジしたりと、周辺的な関心は継続している。

初めて聴くなら

Horslipsの『The Táin』(1973)、収録曲『Dearg Doom』からの1時間で、ケルト・ロックの発明の瞬間が体感できる。The Waterboysなら『Fisherman's ブルース』(1988)、アイルランド西部スライゴの空気を封じ込めた名盤だ。Clannadは『Magical Ring』(1983)、『Theme from Harry's Game』の完全版を含む。Runrigは『Heartland』(1985)。深夜、少し暗くした部屋で、大きめの音量で聴くのがこのジャンルには合う。

豆知識

Horslipsのバンド名は、アイルランド神話に登場する4本足の馬「馬蹄(horse hoof)」の綴りを故意に間違えた造語で、リーダーのバリー・デヴリンがピクチャー・ディスクの制作会社のスタジオで思いついたものだ。The Waterboysの『Fisherman's ブルース』のセッションは1年以上に及び、100曲以上を録音してから12曲に絞ったという逸話がある。マイク・スコットはこの時期スライゴのファーストランズ・スタジオで生活しており、W.B.イェイツの詩の朗読を毎日行っていたと語っている。Runrigはメンバー全員がスコットランド・ゲール語を第一言語とする世代の最後で、彼らの引退(2018)は事実上「ゲール語ロック時代の終焉」と評された。

影響・派生で結ばれたジャンル

ケルト・ロックを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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