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伝統・民族

スコティッシュ・トラッド

Scottish Traditional Music

スコットランド / ケルト圏 · 1600年〜

スコットランドのフィドル・パイプ伝統音楽。

まずはここから

ひとことで言うとスコットランドのフィドル・パイプ伝統音楽。

まずはこの曲からNiel GowNiel Gow's Lament ▶ YouTube

代表的な人Niel Gow

どんな音か

スコティッシュ・トラッドはハイランド・パイプ、フィドル、ボタン・アコーディオン、クラルサック(小型ケルティック・ハープ)、そして無伴奏の声を核にした、スコットランドの舞踏と歌の伝統である。器楽の中心はリール(4/4)、ジグ(6/8)、そしてスコットランド固有のストラスペイ(4/4のスコッチ・スナップ、短-長の逆転リズム)の三つの舞踏形式で、これらを複数まとめて一続きに演奏する「セット」構造が骨格になる。声楽側にはハイランドのゲール語圏で発達した二つの様式がある。まずwaulking song(プリット・ア・ベール、Puirt à beul)、これは女性たちが織り布(ツイード)を叩いて縮絨する労働歌で、テーブルを囲んで布を叩くリズムに合わせて歌う。もう一つはmouth music(口の音楽)で、フィドルやパイプの旋律を歌詞のない音節で歌う「楽器の代わりの声」の様式だ。

聴きどころ

まずハイランド・パイプの音律に耳を慣らしてほしい。ハイランド・パイプの音階は西洋の12音音階とは微妙に異なる固有の音律で、A音が現代標準ピッチ(A=440Hz)より約20セント高く調律される。この「合っているようで少しズレた」感覚がハイランド・パイプ独特の響きの源だ。次にストラスペイのスコッチ・スナップで、8分音符+付点16分音符という短-長の逆転リズムが4/4の中に散りばめられる。日本民謡『会津磐梯山』の跳ねる感覚に近い。ハイランド・パイプ以外の小型パイプ(スモール・パイプ、ボーダー・パイプ)は室内向けの静かな音で、ハイランド・パイプとは別の音楽的伝統を持つ。

初めて聴くなら

入り口はNiel Gowの『Niel Gow's Lament』(1784年作曲、彼が亡き妻のために書いたスロー・エア)で、Alasdair Fraserらの現代フィドラーの演奏で聴くのが良い。次にSilly Wizardの『The Valley of Strathmore』(1981)、速いリールと遅いストラスペイが対になっていて、スコッチ・スナップが出てくる瞬間のリズムの手触りが体感できる。無伴奏歌唱ならJulie Fowlisのゲール語アルバム(2005)、waulking songが現代スタジオ録音で聴ける貴重な資料だ。ハイランド・パイプの独奏はGordon Duncan、そして現代ではKris Drever(ボーカル)/Aidan O'Rourke(フィドル)/Martin Green(アコーディオン)のトリオLauが新しい標準を作っている。

代表アーティスト

  • Niel Gowスコットランド · 1745年〜1807
  • Battlefield Bandスコットランド · 1969年〜2010
  • Silly Wizardスコットランド · 1972年〜1988

代表曲

生まれた背景

スコットランドの音楽伝統は、ゲール語文化圏のハイランドと諸島(ヘブリディーズ諸島、シェトランド、オークニー)、そしてスコットランド語(スコッツ)圏のローランドで性格が違う。ハイランドは氏族社会と結びついた儀式的なピーブロック(ceòl mòr、「大音楽」の意)とダンス音楽(ceòl beag、「小音楽」の意)の二層構造を持ち、諸島側は無伴奏の女性合唱によるwaulking songが独自の伝統として残る。

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ローランド側はフィドル音楽が中心で、18世紀のNiel Gow(1727-1807)、後にJames Scott Skinner(1843-1927)らが作曲/演奏で標準的レパートリーを整備した。19世紀後半のハイランド追い立て(Highland Clearances、地主による小作農の強制移住)で伝統の担い手が半減したが、20世紀にCecil Sharp、Alan Lomaxらの民族音楽学者が体系的な採録を残し、1966年設立のTraditional Music and Song Association(TMSA)が国家的な保存機構となった。

音楽的特徴の詳細

楽器ハイランド・パイプ、フィドル、クラルサッハ(ハープ)、アコーディオン

リズムリール、ストラスペイのスナップ音、スロー・エア

発展

1745年のジャコバイト乱後の禁制を経て19世紀に復興。フィドル奏者Niel Gowらが舞踏曲集を整備した。20世紀後半にはBattlefield BandやSilly Wizardが現代的演奏を確立。

出来事

  • 1746: バグパイプ・タータン禁制(後解除)
  • 1784: Niel Gow曲集刊行
  • 1781: Highland Society of London創設
  • 1980年代: Celtic Rock興隆

派生・影響

Cape Breton fiddle、Old-timeの基盤の一つ。アメリカのBluegrass旋律にも影響。

日本との関係

日本のケルト音楽ブーム(1990年代)はアイリッシュに集中したため、スコティッシュ・トラッドは相対的に薄い認知だが、いくつかの入り口がある。まず映画『ブレイブハート』(1995、監督メル・ギブソン)のサントラでハイランド・パイプが日本の映画館スケールで鳴った。次にラグビー・ワールドカップ2019年日本大会で、スコットランド代表戦の観客席で『Flower of Scotland』が歌われ、スコティッシュ・トラッドの一端が日本の観客に届いた。国内でハイランド・パイプを演奏する数十名のパイパーが集まる日本パイプバンド協会が活動しており、明治の唱歌『蛍の光』の原曲がスコッツ民謡『Auld Lang Syne』であることも、この伝統との深い接点を示している。年末年始に日本人が耳にする『蛍の光』は、実は18世紀のロバート・バーンズの詩に付けた古いスコッツ民謡だ。

豆知識

『蛍の光』の原曲『Auld Lang Syne』は18世紀のスコットランドの詩人ロバート・バーンズ(1759-1796)が古いスコッツ民謡に詩をつけたもので、大晦日の年越しに歌う伝統は英スコットランドが起源だ。この歌が明治時代の日本で唱歌として採用され、以降卒業式・閉店BGMの標準曲として日本人の生活に完全に組み込まれた。

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日本人の多くはこの曲がスコットランド起源であることを意識していないが、いま最も広く日本で歌われているスコッツ民謡は間違いなくこの曲だ。ハイランド・パイプは英国陸軍の連隊音楽としても現役で、日本の自衛隊音楽隊とも交流があり、2015年には陸上自衛隊音楽まつり(武道館)にスコットランド軍のパイプ隊が招聘されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

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スコティッシュ・トラッドを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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