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伝統・民族

スコティッシュ・フォーク・リバイバル

Scottish Folk Revival

スコットランド / ケルト圏 · 1960〜1990年

別名: Scottish folk revival

1960年代以降、Ewan MacCollからSilly Wizard、Battlefield Band、Boys of the Loughへ至るスコットランドの舞台化フォーク世代。

どんな音か

スコティッシュ・フォーク・リバイバルは、家庭のセッションと農村の集いにあったスコットランドのバラッド、ジグ、リール、ストラスペイ(独特の点付きリズムを持つ4/4曲)を、コンサートホールとレコード盤の音楽として再構築した1960-80年代のムーブメントを指す。編成はフィドル、アコーディオン、ハイランド・パイプもしくはボーダー・パイプ(空気を袋に送り込む小型のパイプ)、ボウラン、ギター、そしてボーカルによる集団合唱で、アイリッシュ・フォーク・リバイバルの並行世代でありながらリズムの重心と歌の題材が独自だ。特にストラスペイのスコッチ・スナップ(短-長の逆転リズム、日本民謡でいうところの跳ねる語尾に近い感触)とハイランド・パイプのドローンが、アイリッシュ音楽と決定的に違うスコットランド固有の響きを生む。

生まれた背景

端緒は1953年、米民族音楽学者Alan LomaxがアバディーンでスコッツトラベラーのシンガーJeannie Robertson(1908-1975)をフィールド録音し、伝統歌が絶滅寸前で残存していることを世界に知らせたことだった。同じ頃、Salford出身のEwan MacColl(スコッツ系の父を持つ、本名Jimmie Miller)がイギリスフォーク・リバイバルを牽引し、彼の代表歌『Dirty Old Town』『The First Time Ever I Saw Your Face』がスコットランド系リスナーの再発見を促した。1960年代前半にはRobin HallとJimmie MacgregorがBBCの朝の番組『Tonight』で毎日フォークを歌い、フォーク・リバイバルを茶の間に届けた。1966年のTraditional Music and Song Association設立と連動したエディンバラ・フォーク・フェスティバルが世代の集結地となり、パブSandy Bell'sが事実上の本部となった。

聴きどころ

まずストラスペイのスコッチ・スナップに耳を慣らしてほしい。8分音符+付点16分音符という短-長の逆転リズムで、これが4/4の曲の中に散りばめられると、フレーズの語尾が跳ねるように聴こえる。日本民謡『会津磐梯山』の跳ねる感覚に近い。Silly Wizardの『The Fisherman's Song』は、Andy M. Stewartのバラッド歌唱を、Phil Cunninghamのアコーディオンとブラザーのフィドルが低音から支える標準形で、フォーク・リバイバル世代のスコッツ・バラッドが最も明快に聴ける。The Corriesの『Flower of Scotland』は、ラグビー/サッカー代表戦で観客が歌うので、スタジアム合唱のスケールで書かれている点が特徴的だ。

発展

1972年結成のSilly Wizard(グラスゴー)は、Andy M. Stewart(ボーカル)とPhil Cunningham(アコーディオン)、Johnny Cunningham(フィドル)の兄弟を中心とし、伝統歌とオリジナル曲の交互配置で世代の代表格となった。1969年結成のBattlefield Band(ロスリン)は、キーボード、ハイランド・パイプ、フィドルを常時擁する編成で「電化しないままロック級のダイナミクス」を実現した。1967年結成のBoys of the Lough(エディンバラ)は、シェトランド出身のフィドラーAly Bainを迎えてスコッツ音楽と北アイルランドを繋いだ。1984年結成のCapercaillie(オバン)は、ゲール語ボーカルのKaren Mathesonを擁して1990年代のケルト・ポップ市場に橋を架けた。

出来事

  • 1953年: Alan LomaxがJeannie Robertsonをフィールド録音
  • 1966年: TMSA設立、エディンバラ・フォーク・フェスティバル開始
  • 1972年: Silly Wizard結成
  • 1984年: Capercaillie結成
  • 1988年: The Proclaimers『I'm Gonna Be (500 Miles)』世界的ヒット

派生・影響

アイリッシュ・フォーク・リバイバルの兄弟ジャンル。1990年代以降のケルト・ロック、ケルト・フュージョンの土台。

音楽的特徴

楽器フィドル、ハイランド・パイプ、スモール・パイプ、ボーダー・パイプ、ボタン・アコーディオン、ホイッスル、ボウラン、ギター、ボーカル

リズムリール(4/4)、ジグ(6/8)、ストラスペイ(4/4のスコッチ・スナップ)、スロー・エア(自由リズム)

代表アーティスト

  • The Corriesスコットランド · 1962年〜1990
  • Boys of the Loughスコットランド / アイルランド · 1967年〜
  • Dick Gaughanスコットランド · 1972年〜
  • The Proclaimersスコットランド · 1983年〜
  • Capercaillieスコットランド · 1984年〜

代表曲・古典

日本との関係

日本ではスコティッシュ・フォーク・リバイバルアイリッシュ・フォーク・リバイバルの影に隠れてきたが、いくつかの入り口がある。まず映画『トレインスポッティング』(1996、監督ダニー・ボイル)がスコットランドを舞台にしていたことで、Iggy PopやUnderworldと並んでThe Proclaimersの『500 Miles』が日本の若年層に届いた。次に大河ドラマ『いだてん』(NHK 2019)の劇伴を担当した大友良英が、スコッツ・トラッドの引用を随所に組み込んでいた。国内では日本Comhaltasのスコッツ支部が東京・大阪で小規模なセッションを開催しており、フィドルとハイランド・パイプの演奏家が細々と活動している。ラグビー・ワールドカップ2019年日本大会でスコットランド代表戦の観客席で『Flower of Scotland』が歌われたことも、日本の観客にこの歌の存在を届けた。

初めて聴くなら

入り口はSilly Wizardの『The Fisherman's Song』(1980)、Andy M. Stewartのバラッド歌唱の完成形だ。次にBattlefield Bandの『Home Ground』(1985)、ハイランド・パイプとキーボードが同じ帯域を分け合う独特のミックスが体感できる。The Corriesの『Flower of Scotland』(1967)は、事実上のスコットランド国歌なので、ラグビー・ワールドカップの前後に聴くと文脈が加わる。The Proclaimersの『I'm Gonna Be (500 Miles)』(1988)は、フォーク・リバイバル世代の最もポップな結晶として最初の一曲に向いている。夜のパブで生ライブを聴くのが理想だが、家で聴くなら金曜の夜、スピーカーで少し大きめの音量が正しい作法だ。

豆知識

The ProclaimersのReid兄弟は生まれつきの近視で、あの厚い眼鏡は視覚補正のためだった。彼らはコンタクトレンズを頑なに拒否し、眼鏡と強いスコッツ英語のイントネーションを商標として保持している。『I'm Gonna Be (500 Miles)』は1988年当時は英3位で、その後映画『Benny & Joon』(1993)のエンドロールに使われたことで全米3位、2007年のコメディ番組『Comic Relief』で総発売累計チャートで英1位まで到達した。Battlefield BandのメンバーAlan Reidは、バンドの母体となったエディンバラのハイランド・パイプ教室で1969年に世代を集めた張本人で、以降40年以上メンバーを入れ替えつつバンドを維持した。

影響・派生で結ばれたジャンル

スコティッシュ・フォーク・リバイバルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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