オーストラリアン・ヒップホップ
アデレードのHilltop Hoods、シドニーのThe Kid LAROI、Yolŋu語ラップのBaker Boyまで含む、豪州の英語ヒップホップ。
どんな音か
オーストラリアン・ヒップホップは、オーストラリアで作られる英語(と一部先住民語)ラップの総体だ。中心はアデレード発Hilltop Hoodsの90-100BPMブーンバップ寄りの重厚なビート、シドニー発The Kid LAROIのメロディック・トラップ、そしてYolŋu Matha(先住民語)と英語を行き来するBaker Boyの三系統に大別できる。フロウは「豪州訛りを消さない」ことが2000年代後半以降のシーン全体の暗黙の合意で、Hilltop HoodsのMCペディガーはメルボルン・シェアハウスの日常語をそのまま韻に落とす。プロダクションはUS東海岸ブーンバップ、UKグライム、USサウス・トラップを世代ごとに参照する。
生まれた背景
1994年アデレードで結成されたHilltop Hoods(MC ペディガー、MC スィッシュ、DJ デビーサリーの3人組)が実質的な起点で、2003年『The Calling』、2006年『The Hard Road』でARIA(オーストラリアレコード大賞)を連続受賞、オーストラリアヒップホップを地下から国民的音楽へ引き上げた。同時期のシドニーから1996年結成のBliss n Esoが、2009年『Running on Air』で全豪1位を獲得。Illy(メルボルン、2007デビュー)、360、Baker Boyら次世代が2010年代に続き、2020年前後にThe Kid LAROIが国際的成功を得たことでオーストラリアヒップホップは輸出フェーズに入った。
聴きどころ
発展
2017年、ノーザン・テリトリー州アーネムランド出身のBaker Boy(ダンザル・ベイカー)がYolŋu Mathaと英語を交差させた『Marryuna』でTriple Jに登場、翌年ARIA新人賞を受賞し、先住民語ラップを豪州の主流回路に届けた。2020年、シドニー生まれ弟の The Kid LAROI(チャールトン・ハワード)がJuice WRLDのアシスタントを経て単独契約、2021年『STAY』でジャスティン・ビーバー客演のトラップ・ポップを全米1位に届けた。Kamilaroi(カミラロイ)とWiradjuri(ウィラジュリ)先住民の血を引く点でも代表性がある。
出来事
- 1994: Hilltop Hoods結成
- 2003: Hilltop Hoods『The Calling』
- 2017: Baker Boy『Marryuna』、Triple J初登場
- 2018: Baker Boy、ARIA新人賞
- 2021: The Kid LAROI『STAY』全米1位
派生・影響
米ヒップホップ(East Coast、Southern Trap)の直接の子孫。英グライム、NZヒップホップ(SWIDT、Melodownz)と兄弟関係。
音楽的特徴
楽器ドラム・マシン(TR-808、SP-1200)、サンプラー、シンセ、時にディジュリドゥや先住民打楽器、ラップ・ボーカル
リズム90-100BPMのブーンバップ、60-80BPMのトラップ、Baker BoyはYolŋu Mathaの声調と英語の押韻を交差させる
代表アーティスト
- Hilltop Hoods
- Bliss n Eso
- Illy
- The Kid LAROI
- Barkaa
代表曲・古典
The Nosebleed Section — Hilltop Hoods (2003)
代表曲・現在
Circus in the Sky — Bliss n Eso (2013)
Cosby Sweater — Hilltop Hoods (2014)
1955 — Hilltop Hoods (2016)
Papercuts — Illy (2016)
Marryuna — Baker Boy (2017)
WITHOUT YOU — The Kid LAROI (2020)
King Brown — Barkaa (2021)
STAY — The Kid LAROI (2021)
日本との関係
初めて聴くなら
入り口はHilltop Hoods『Cosby Sweater』(2014)、豪州英語のフロウが最も明快に聴ける。次にThe Kid LAROI『STAY』(2021)、メロディック・トラップとしての完成形。Baker Boy『Marryuna』(2017)は先住民語ラップとしての衝撃を体感するのに最適だ。イヤホンで歌詞を追いながら、フロウの独特のイントネーションに耳を慣らすのが向いている。
豆知識
The Kid LAROI(本名チャールトン・ハワード)は、故Juice WRLDに10代でシドニーで発見され、彼のアシスタントとしてアメリカ合衆国ツアーに帯同していた。2019年のJuice WRLD急逝(21歳、薬物過剰摂取)は彼のキャリアの転機となった。Baker Boy(ダンザル・ベイカー)はノーザン・テリトリー州ミリンビンビ島出身、Yolŋu人のヒップホップ・ダンサーとして活動を始め、ラップは後年になってから始めた。彼のYolŋu Matha歌唱は伝統的な歌唱(マニカイ)の教師である父の教えを反映している。Hilltop HoodsのMCペディガー(本名Suffa)はオーストラリアで唯一、ラップで文学的社会運動団体からの表彰を受けたラッパーだ。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルオーストラリアン・インディー
- ポップサイケポップ
- エレクトロニックフューチャー・ベース
- ロック・メタルオーストラリアン・パブロック
